第254節 突撃と異変、豹変
今回の防衛戦の具体的な内容はこうだ。
まず敵が目指してくるのはクレマの玄関口とも言える門。 そこをまずは集中的に守りを固める。
次に敵の前線部分が見えてきたら、リューフリオからの派遣の狙撃部隊が発砲。 今回訓練ではない実践は初とのことだが、敵が生身の人間ではないので、例え頭に当たろうが血飛沫は出ないと推測される。 まあ出たところで「それはそういう演出だから」と言えば納得してくれた。
そしてこの狙撃に関しては撃ち漏らしの心配は皆無となっている。 むしろ50000体を本当に狙撃できるのか怪しい部分ではある。 なので狙撃部隊は
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」の精神でやってもらってる。 その方が気楽だろうし。
そんな狙撃部隊を掻い潜ったら、次はクレマの精鋭部隊が相手になる。 ここでも減らせれる分だけ減らしてくれと命じてある。 あくまでも命優先でという意味合いだ。 犬死になんかもっての他だ。
そしてそれでも対処しきれなければ盾部隊の出番。 持っている盾なのだが、実は少し特殊で、盾の周りの部分が円形状の刃になっている。 そのため、盾で相手を弾いたあと、そのまま盾の側面で攻撃できる仕組みなのだ。
しかもこれは前を張るバックラータイプの盾を持っている部隊特有で、後方にいるタワーシールドを持っている部隊は盾にスパイクのようなものが入っている。 これも相手の突撃を躊躇わせる武器のひとつである。
そしてそのタワーシールド部隊が最終防衛ラインとなるのだが、それはあくまでも部隊編成での最終だ。 この宮殿を目標とするのなら俺達が相手をする。 たったの14人だと思われるかもしれないが、あの相手はここの部隊の誰よりもやってきた。 易々と距離を詰められることはない。
そんな感じで余程の想定外が無ければ勝てる戦争を繰り広げているわけだ。
「なんか高みの見物って性に合わないわね。」
紅梨がぼやくのも無理はない。 輝己と同じように前線で相手を掻き回すタイプはさぞもどかしいだろう。
「そうだね紅梨ちゃん。 戦争って言うからこう、ドンパチやるものだと思ってたけど、静かすぎて拍子抜けよね。」
鮎も同じ意見のようで、退屈そうにしている。 君らねぇ・・・
「僕らは戦う意思は無いんだよ? わざわざ相手を刺激するようなことをしなくてもいいじゃないか。 それに騒がしいのが戦争じゃないと思うし。」
先程の2人とは対称的に冷静に物事を見ているリョウ。 というかリョウだって元々クェスタラ育ちならあんなのよりももっと危険な目にあってると思うんだが。
「今は終わるのを待つ。 それが私たちの出来ること。」
イバラがバッサリと答える。 攻め込まれない訳ではないので、臨戦態勢だけは取っといた方がいいけどな。
「どうだ? 啓人。 順調に数を減らしてくれてるか?」
「大丈夫。 今のところは作戦通りに・・・あ!」
「どうした!?」
「飛空、クレマの精鋭部隊から一部の部隊が敵の陣営に突撃を仕掛けた! しかもそれに感化されて次々に突撃を始めてる!」
なん・・・だと・・・!? まさかあっちにも痺れを切らしたやつらがいるってのか!? こっちはなるべく犠牲を最小限にするために考えた作戦だったのに、それじゃあなにも意味ないじゃないか!
『突撃を行ってる部隊! 今すぐ持ち場に戻って下さい! 決して勝てない相手でないのは分かりますが、死に急ぐ事はないです!』
そうメガホンで制止をかけるが、突撃部隊は足を止めることなく、むしろ足を早めた。
「・・・っ! くそ! まだ敵の状況を完全に把握したわけじゃないんだぞ! どんな攻撃を仕掛けてくるか分かってないんだ! いきなり即死攻撃してきたら対処しきれないってのに!」
相手は電脳体、そんな簡単に即死攻撃なんてものをしてこないのは分かっているつもりだが、もしものことを考え、向こうの攻撃を確認するまでは体勢を崩す予定はなかった。 だからこそここでこちらの予想外の攻撃をされた場合、咄嗟に対応できるか怪しくなってくる。 「体を張って実感してきました。」みたいな事をさせないための部隊編成でもあったのに。
「飛空さん! 精鋭部隊の皆さんがどんどん進行を開始していきます! 「天下を取るのは俺だ!」という人が多くて当初の目的を忘れている人が多くなっています!」
「天下・・・あの貴族の息子か・・・!」
確かに戦力としては申し分ないのは分かっていたが、まさか目先の欲に目が眩むとは到底思ってなどいなかった。
「エレア! なんとか食い止めることは出来ないか!? 俺は他国からの使いだから聞く耳貸さないのかも知れないけれど、国の王女の君なら・・・」
「し、しかし飛空! あの者たちはわらわを自分達の利益のために政略結婚をしようとした者たちなのだ。 話は聞くとは思うが、見返りを求められるのは少々違うと思うぞ?」
部隊が部隊なら部隊長もかよ! 俺は頭を掻き、まずは状況を改めて確認をする。
「啓人! 見える限りでいい! 敵はどのくらいにまで減った!?」
「狙撃部隊が着々と減らせているけれど、それでもまだ1/5、40000体は残ってる。 突撃していった部隊が暴れても、その半分20000体は防衛ラインに来るかな。 一応言っておくけど、これは突撃部隊の犠牲ありきでの話だからね。」
確かか分からないが、こちらから情報が漏れてなければ、その算段で間違いはないだろう。 だがそれはあくまでも犠牲ありきでの話。 それに犠牲者が出るということはそれだけこちら側が手薄になると言うこと。 俺達が相手にしても、この砦まで近づく奴は現れるだろう。
「飛空・・・さん・・・」
「飛空君・・・」
「飛空ぁ・・・」
瑛奈、文香、エレアから不安そうな声がかけられる。 何かないのか! 犠牲者を出さない上で勝利をする方法は! そもそも防衛するだけの話だったのになんでこんなことになるんだ! 考えろ! 考え直せ俺! なにか・・・なにかないのか・・・
『変わりな。 お前のやり方じゃどっちも出来やしねぇ。』
「・・・え?」
そんな言葉が頭の奥底から聞こえたと思った矢先、俺は意識を手放した。
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今回の作戦の舞台になってしまった我が国の命運を左右する戦い。 だがそれはあくまでも上が立てた脈略のない作戦だと思っているのだろう。 折角立てた飛空の作戦がこのような形で崩れることに、わらわの心配が重なってしまった。
「飛空、これからどうするのじゃ? ・・・飛空?」
返事が返ってこぬ事を不思議に思い、飛空の方を見上げると、そこには頭をだらりとさげた飛空の姿があった。
「ど、どうしたのじゃ!? 飛空!? 飛空!」
いくらどうしようもない貴族の息子が率いる部隊が突撃したとはいえ、それも考慮した上での作戦を展開していた。 しかし少々の問題ぐらいでここまで落ち込むことは今までの飛空では有り得なかった。 立ちながら寝ているとも違う。 なにやら不安を呷るような出で立ちをしておった。
飛空とて自分が予想だにしないことなどいくらでもある。 だがそんな想定外の事態でも難なくこなす。 むしろそのような状況に逆に利用すらも行う。
それでも飛空のわらわに笑いかける姿。 わらわの無理にも振り回されながらもしっかりと理解してくれて、その上でわらわを楽しませようとするその姿はわらわにとって兄以上の存在である。
そんな飛空がそのような状態ではわらわだって不安になる。 普段何気ないからこそ、不安が沸々と出てくるのだ。
その呼び掛けに呼応したのか、だらりとしていた姿からいつもの出で立ちに戻・・・ったと思ったが、それにしては雰囲気がいつもの飛空ではなかった。 まるで誰かに操られているような・・・
そう考えていると飛空は手に持っていたメガホンを構え、そして
『狙撃部隊、精鋭部隊、防衛部隊全軍に継ぐ。』
そういって一拍の深呼吸をした後、
『お前ら・・・自分の守りたいものの為に戦え! お前らの血潮はこんなところで朽ち果てるような未熟なものじゃねえ! 守れるものを守ってから戦死しやがれ!』
「ひ、飛空!」
今までだって1度としてその様な外道に堕ちたような台詞を吐くような人材ではなかった。 だが宣言されたその言葉に驚き、飛空の方を見たとき・・・
飛空はわらわたちが見たことのない、まさしく「悪」と言った歪んだ表情を見せていた。
後半はエレア視点です
カギカッコの部分は一応メガホンの部分として表現していますが、1つだけ関係ない部分もあります。
ややこしいと思ったら変更します。




