表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第20章 ここは冒険諸島クェスタラ
229/348

第222節 状況変化と探り依頼、大将

 ランクやクランも上がって前のランクよりも様々な依頼を受けれるようになった。 その分求められるものも多くなったが、俺達のクランにはちゃんと対応できる。 しっかりと依頼を確認し、その依頼に合うように人材を提供、依頼を完了していっている。


 どこかの人材派遣のような事を淡々と話してはいるが、実際にクランが上がったことでクランとして依頼をされることも少なくなくなった。 その理由について受付嬢の人に話を聞いてみると、


「団体による冒険者依頼というのは少なくはないのですが、その分の信頼実績がなければいけません。 あなたたちのクラン「ウィークワーク」は信頼急上昇中のクランと言うことで、本当に複数のところから依頼がきているのですよ。」


 そう言って依頼票を渡してくれた。


 また、設置され始めた「テレポーター」の活躍も凄いことになっている。 今までは行くのですら難しかった別地域のギルドまでひとっ飛び出来ると言うことで、その地域でしか働く事が出来なかった依頼も行くことが出来るようになったし、逆に別の地域から来た冒険者も初めての場所に驚きや楽しさを味わっているようだ。


「それで今日はどの依頼を行くや?」


 輝己が依頼票を確認しつつ、今回の依頼の内容を確認する。


「えっとなになに? 「野生のウルフブルの駆除」、「花売りのヘルプ」、「介護施設の人員募集と設備の配置変更の為の人員」・・・」


 なんというかここまでくると半分位は俺達みたいな所じゃなくても依頼を受けてくれそうな物ばかりだ。 とはいえこういうのを疎かにするのも些か悪い気がする。


「今回ウルフブルには輝己は不参加で、代わりに介護施設の人員として行ってくれないか?」

「承知やで。 いくら群れで来られてもそんなに強ぅないしな。 それにわいじゃ素材を潰しかねんわ。」


 ウルフブルの引き取り素材としては、上位に来るのはなんと言っても牙なのだが、輝己のパンチャーでは顔を狙ったら牙が売り物にならない可能性の方が大きい。 それは本人も分かっているようなので素直に引き下がってくれた。


「なら後はある程度別れても問題ないだろ。」

「飛空さん。」


 夭沙が俺に向かってある依頼票を見せてくる。


「私はこれを飛空さんと受けたいと思っているのですが。」


 その言葉にみんなが夭沙の方を見るが、依頼票の内容を確認して至極納得したような表情をしていた。


 みんなが納得する依頼内容か・・・どれどれ?


「依頼内容:主人の動向を探ってほしい。

 ランク条件:ランク5以上 嘘を見抜くようなスキルを持つ冒険者歓迎。」


 なんとも条件が限定的な依頼だな。 まあやるけれども。



「この二週間程、夫の行動がおかしくなってきていまして。」


 依頼主は専業主婦を営んでいる女性だった。 見た目はかなり若いが実年齢的には俺達の親くらいだろうか。


「ちなみにどのようにおかしくなったのか具体的に教えてくれませんか?」


 夭沙が話を切り出す。 まずは話を聞かないことには進まないと判断しての事だろう。


「そうですね・・・ 帰りが遅いことがまずは第一と思います。」

「それは仕事と関係してる可能性があるのですが・・・ ちなみにその夫さんの職業は?」

「主人は鍛冶屋をやっています。 冒険者用に剣や弓を作っています。 もちろん直すのだってお手の物です。」

「なら仕事の量が多いとか、仕事を残したくないとかそのような理由になりませんか?」


 自分の中で思っているのはそこだ。 残業なんていくらでもあるだろうし、後片付けだって並大抵の時間では出来ない。 だがそう答えた後に「慧眼」で奥さんを見ても、どうやらまだなにかあるような感じがした。


「夫は帰りが遅くなるときには必ず理由を含めて連絡は入れていました。 二週間前までだってそのようなメールのやり取りだってしました。」


 そう言って奥さんは端末を見せて、やり取りがあった証拠を見せてくれる。 「慧眼」のスキルを持っている俺にそこまで見せるとなると、相当な信頼があるのだろう。 スキル込みで確認したが、どうやら本物のようだ。


「では他には何が変わったのですか?」

「後は・・・あ、そうそう。 シャツから香水に似たような甘い匂いがしました。 普段なら匂い消し位しか使わないのに、可笑しいと思ったのです・・・ はっ! まさか夫は、私という身がありながら別の女と・・・!?」

「奥様、可能性は高いやもしれません。 今はまだ働いていらっしゃいますよね? その鍛冶屋の場所を。」


 俺は変に事が大きくならないように、先に牽制をかける。 地図と名前を貰い、すぐに向かおうとしたのだが


「冒険者の方々、もしも、本当にもしも、夫が浮気をしていたら、問答無用で私のところに連れてきてください。」


 そう懇願する奥さんを背に、俺達は仕事場へ直行するのだった。



「やはり真面目な大将さんのようですね。」


 依頼主の奥さんに教えてもらった鍛冶屋を覗くと、そこは他とは少し大きいくらいの場所で鉄を打つ音と熱風だけで汗をかきそうなくらいの熱気で溢れかえっていた。 その中で若いのだと俺達くらいの人から、職人にも見えるようながっしりとした体のご老人まで様々だった。


 そのなかにいる、タンクトップにねじれハチマキという、いかにもという人が依頼主の主人にあたる人になる。 年季が入っているのか、同じような人には気さくに、若い衆にはちゃんとアドバイスをするという、まさに棟梁の名に相応しい人材だと思っている。


「ああいう人ほど苦労を抱え込みやすいのかもな。」

「でもそれはお家に戻れば奥様もいますし・・・」

「男には身内の女性には知られたくないことだってあるんだよ。 一概には言えないけれど、そういうものだと思う。」

「・・・飛空さんにもなにか私たちに隠し事があるってことですか?」


 なんでそうなるのかな? そりゃ隠し事の一つや二つはあるけど、知って貰いたいことでもないし・・・


 鍛冶屋の前にいるのに若干空気が冷めた感じになったのを覚えると、ターゲットがこちらに向かって歩いてくる。 どうやら終了時間のようだ。


「時間は・・・5時か。 家自体はそんなに遠くはなかったし、奥さんの話だと朝は7時半には出ていくから始まるのが8時だとして、大体就業時間は8~9時間ってところか。」

「お休みの時間などを考えるとそれぐらいが妥当ですね。」


 影で隠れながらターゲットを夭沙と観察していく。 さてこのまま家に帰るかと思ったら案の定そのまま帰路を帰るわけではなかった。


「どうやら奥さんに内緒でどこかに行ってるみたいだな。 夭沙、なにか喋ってないか?」

「いえ、私も「地獄耳」を効かせてるんですけれど、一言も喋らずに黙々と目的地に向かっている様子が伺えます。」

「そうか。 そんなに誰かに聞かれたくないことでもあるのか? それとも本当になにか後ろめたい事が・・・?」


 そんな事を二人で思いつつも、ご主人の後ろをひたすらについていく。 ここまでついているとなると警戒して来るものだと思っていたのだが、相当集中しているのか、振り向く素振りすらない。


 そして歩くこと10分ほど、俺は周りの雰囲気に違和感を覚える。 いや、雰囲気だけではない、俺の中の危険信号が反応するほどの甘い香りが鼻腔をくすぐる。 気をしっかりと保たないと一気に意識を持っていかれるような、そんな匂いだ。


「・・・なあ夭沙・・・」

「大丈夫です飛空さん。 わたしも多分ですが同じ答えに行き届いています。」

「・・・やっぱりか。」


 改めて確認することでもなかったのだが、念のために夭沙に聞いてみた。 どうやら状況の変化と、これから向かっている場所がどこなのかハッキリと分かっているようだ。


 先程までの閑散とした場所とは完全にかけ離れているかのようなきらびやかな建物と看板が軒並み立ち並んでいる前に俺達はたどり着いた。


「・・・香水の匂いがするって聞いた時点である程度は予測はしていたけど、予測通り過ぎて呆れちゃうよ。」


 そう、俺と夭沙の目の前に広がる光景は、俺自身もアニメや聞いたことのある程度の知識でしかなかった場所、娼婦街だった。 実際に目の前にある光景を見ても危ない感じだと分かるが、歳を重ねると別の意味で危険な場所になるのだろうか?


「どうしますか? 日を改めても同じことの繰り返しになります。」

「俺達は真実を奥さんに伝える義務がある。 例えそれが娼婦街で事を行っていたという結果であろうとも。」


 そんな思いを馳せて俺達は大人の繁華街へと足を踏み入れた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ