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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第20章 ここは冒険諸島クェスタラ
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第220節 お叱りと真相、次の日

「さてと、どういうことなのか説明をしてもらいましょうか? 飛空?」


 どうも皆さん、津雲 飛空です。 この始まりかたをするということは察しのいい人なら分かると思う。


 今俺は正座をさせられている。 目の前には文香、白羽、紅梨、鮎、夭沙が左から俺を見ている。 ただし確実に「怒っている」という表情でだが。


 ちなみに他にも後ろには状況がいまいちつかめていないで慌てふためいている瑛奈、話を聞いていてただ傍観しているイバラ、頭に"?"を浮かべているエレア、そして今回の原因の張本人のリョウに、御愁傷様と言わんばかりに合掌をしている海呂、輝己、啓人のクランメンバー全員が集まっている。


 何故正座をさせられているかというと、俺とリョウが浴室から出て、脱衣所で俺が先に着替え終わって脱衣所のドアに手をかけようとしたときに、不意にドアが開いたので何事かと思ったらそこに紅梨がいて、なんでも食事が出来たので呼びに来たのだそうだ。


 そしてそのタイミングで俺の後ろでまだ着替えの途中だったリョウの姿を隙間から目撃し、戻ろうとする俺の腕を掴んだ。


「飛空? ちょっと話があるんだけど?」


 そう声をかけられた時の紅梨の顔は、笑顔でありつつもかなりの怒気を放っていた。 雰囲気が去年の交流会の時と同じだったのは俺の記憶が鮮明に覚えているからだろう。


 そんな経緯 (あのあと紅梨に引きずられるように連行されたのは言うまでもない。)があり、今俺は説明兼説教を受けているという現状だ。


「待ってくれみんな。 この件は彼が悪い訳じゃないんだ。」

「それは飛空の発言次第だから、リョウは今は口出ししないで。」


 鮎は弁護人であるリョウをあっさりと丸めてしまい、俺への問答 (尋問?)が再開される。


「えっと、とりあえず大前提として、俺はリョウが女だとは思っても見なかった。」

「それは、私たちも、同じ、です。」

「大前提の話だからね。 それは仕方のないことだとは思ってるわ。」


 白羽、紅梨の桃野姉妹はリョウが女だったこと、そしてそれを気づけなかったことについては同じように反省をしている。


「それで、俺はすぐに浴室から出ようと思ったんだ。」

「男性として当然の行動よね。」

「私の時もそうでしたからね。」


 文香が納得して夭沙がさらりと爆弾を投下する。 視線は一瞬夭沙に向いたがすぐに俺の方に視線を戻した。


「だけどそこでリョウに呼び止められて、断るのも悪いと思って、一緒に入ったんだよ。」

「そこが分からないのよ。 なんでそこで入っちゃうのかが。」


 鮎が指摘するのも最もだ。 そこで入る理由にはならない。 それに関してだが・・・


「それは・・・リョウ本人に聞いてくれ。 そればっかりは俺はリョウの頼みを聞いただけに過ぎないんだから。」


 その言葉でリョウに視点を向けられる。 その視線にリョウも元々話す気だったようで、すぐに口を開いた。


「なんというか、彼ほど真摯に僕に向き合ってくれそうな人もいなかったし、なにより僕自身が彼に隠し事をしているのが、いたたまれなくなってね。 もちろんいつか語ろうとは思っていたけれど、タイミングがタイミングだったから、仕方なく・・・」


 その言葉でみんなどこか緊張が抜けたように肩を落とす。 そして改めて俺を向きなおす。


「お二人の間になにも無かったと言うことが証明されました。 リョウさんとは良好な関係でいきたいのでこれにて問答を終了します。」


 夭沙からそのように言われ、俺は正座を崩し、ひとつため息をつく。


「いやぁお疲れ様。 君を見て改めて思うよ。 ハーレムは男のロマンであると同時に、破滅いたら一瞬なんだなって。」


 いつの間に後ろにいたのだろう海呂が足がつりそうになった俺にそんなことをいってくる。


「お前らはこうなる前に対処しろよ? 少なくとも今の恋を手放すような事はすんなよ?」

「まあ目の前に模範がいるからなぁ。 複雑な気分やで。」

「大丈夫だよ。 これが苦労する男の姿だよ。」

「本当お前ら他人事みたいに・・・」


 辛辣な事を話す輝己と啓人に若干なにも言えないでいると、紅梨から改めて俺に声をかけてきた。


「・・・ほんとになにもしてないでしょうね?」

「・・・信用ないのは分かるけど、ほんとになにもしてないから。 断じて誓うから。 お風呂に入っただけ、それ以上でも以下でもない。」


 目を閉じて力説していたので目を開けると、もうすぐ目の前、鼻先がお互いに当たるか当たらないかといった距離に紅梨の顔があった。 そして紅梨の目には俺自身を見定めるかの眼差しだった。


「紅梨さん。 それ以上やっても同じですよ。 せっかくリョウさんの秘密も分かったので、その話でお食事としませんか?」

「えぇ? そんなに話すこともないと思うんだけどなぁ?」

「でもリョウの事はもっと知りたいぞ! せっかく仲間になれたのじゃからな。」


 困惑するリョウを連れていき、その日の夕食は晩酌なのではないかと思うくらいに盛り上がったのは言うまでもない。



「昨日は至極疲れました・・・」


 昨日と同じく海の家入り口で警備をしているが、昨日の目まぐるしい夜に、ちょっと朝がキツくなってしまった。


 リョウとの一件の後、すぐの夕飯とその後の俺達のクランメンバーとは違う、別の冒険者たちとのハチャメチャなやり取りは日付が変わるか変わらないか位まで行われ、朝も早かったということもあり、お酒を飲んだ記憶はないが、軽く酔っている感覚がある。


「はははっ、すまないね。 うちらが基本的にここの多忙期の依頼を受けて、みんな魂抜けるくらいに張り切っちゃうんだけど、今年は君達がいるから気力が余っていたらしくてね。」


 昨日と同じように俺と一緒に警備を行っているお兄さんがそんなことを語ってくれる。 年齢的には俺らよりも1つ2つ上位だろうなと言った雰囲気だ。


「でも君たちに感謝しているのも事実だよ。 ここの多忙期の報酬はかなりの破格で、それだけで夏を過ごせるといっても過言じゃないくらいくれるんだけど、その後のみんなは動かなくなっちゃって、1週間くらいギルドから依頼を受けないこともあるんだ。 でも今年はそうはならずにすみそうだよ。」

「僕達がいるせいで報酬が減ったりするんじゃないですか?」

「そんなことないさ。 むしろここの依頼主さんも、「人がいる分売上も大幅に上がってるよ」って言ってるし、心配はないんじゃないかな?」


 そこまでいうのなら問題はないのかな? 元々夏休み限定で来てるようなものだし。


「それに働きが良ければ、もしかしたらクランランクも上がるかもしれないし。」

「そういえば皆さんってランクはいくつになるんですか?」

「僕達は平均ランクは5だよ。 みんな中級者の冒険者さ。 高い人でもランクは7だったかな。 上級者がいるのは、クラン的にもありがたいからね。 そういえば紹介してなかったね。 僕らのクランはその名も「ライオットサマー」! 太陽のように明るい人達が多いからこのクラン名にしたのさ。 クランマスターは僕じゃないけどね。」


 そのクランの名前に少し頬を緩ませてしまった。 決して嘲笑ったのではない。 あの雰囲気にピッタリすぎる名前に笑いが込み上げてしまったのだ。


「僕らのクランは「ウィークワーク」と言います。 今回は別の件でこの島に来たのですが、冒険者として色々と学ばせてもらっております。」

「そうなんだ。 別件?」

「一応口外は出来ないのですみません。」

「いや、君達の事は仲良くしていきたいからね。 後ろめたい事じゃないのは分かるよ。 喋れないのなら深くは追求しないよ。」

「そうしてもらえるとこちらとしてもありがたいです。」


 こうして昨日と同じくらい目まぐるしく海水浴場を捌く依頼をその次の日まで続いた。 そして全てが終わった後、海の家で借りさせてもらってる部屋で寝る前に改めて思ったこと。


「確かにこれはクラン絡みでないと捌ききれないな。」


 眠りにつく前にそんなことを呟いた。

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