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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第20章 ここは冒険諸島クェスタラ
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第214節 出発と皇女、説明

 そんなわけで二日後の明朝。 指定された通りに国会議事堂に着いていた。


「まあそんなに恐い顔をしないでくれ。 確かに仕事を押し付けたようで申し訳無いとは本心から思ってるし、何より後出しにしておかないと拒否するかも知れなかったから。」


 大臣の言いたいこともわかるが、なんで普通に行かせてくれないんですかね? ほんとに労ってます?これ。


 今更なことなのでもうこれ以上は睨まないことにする。 それ以上に楽しみなのは確かなのだし、それに


「凄いよね。 こうしてみんなでクェスタラに旅に行けるんだから。」


 海呂がみんなを見渡してそう言う。


 そう、今回の旅もといバカンスには同伴者を何人でも連れていける。 つまりそこは普通の旅行と変わらないのだ。 大臣の無理矢理なお願いを受け入れたのでこちらも多少無茶を通させてもらった。 ちょっとした仕返しも兼ねて、俺を含めて12人の大所帯で旅行をする。 メンバーは俺の彼女たちと寮の同部屋のメンツといつもの顔ぶれだ。 ある意味これだけでもちょっとしたパーティだ。


「向こうのお偉いさん、島の主には話をある程度通してある。 同盟云々は話してはいないけどね。」


 いや、それは先に話しておくべき案件では? まあ本来の目的とは違うようなので関係はあまりないか。


 内心腑に落ちない部分もあるが、それはそれとして旅客機に乗り込んだ。


「楽しみやなぁ。 冒険諸島に行けるなんて、滅多なことがない限りいけんような場所やで。」

「そんなに有名な場所なのか?」


 テンションの上がっている輝己にそう聞いてみる。 するとそれに答えたのは紅梨だった。


「冒険諸島と言えば、いろんな人が集まって、未知の可能性を切り開けるって話よ。 だから基本的に一度島に入れば、そこで一生を過ごす人も多いんだって。」


 その話を聞いて、ただただ関心が生まれてくる。 大臣も言っていたように生活の基盤はしっかりとしているようだし、俺達はバカンスついでのお試しで行くようなものなのであまり関係はないかもしれないが、もし気に入ったらそこで過ごしてみるのもいいかもしれないな。 そんなことをはしゃいでいるみんなを見ながら飛行機のフライトでゆったりとしていた。



「よく来てくれました。 ようこそ、冒険諸島 クェスタラへ。」


 着陸してすぐに係の人に案内された場所は一角のお城だった。 お城とは言ってもそんなに大きいわけではないし、目の前の島の主であるチエーリ・ローンティ皇女の両端には大量の書類が積み重なっていた。 なんかこの光景をクレマでも見たな。 コレン侯爵もこうして山積みの書類片付けてたっけ。


「このような対応でごめんなさいね? ギルドに渡すための依頼書を製作しながらだから。」


 チエーリ皇女は少し困ったようにこちらに微笑みかける。 ふわりとしたエメラルドカラーのロングヘアーで優しげなその雰囲気と出で立ちはどこか「聖母」という言葉が相応しく思うほどだ。


「こちらこそお忙しいところをわざわざお会いできて光栄でございます。」


 そんなチエーリ皇女に俺を含めて、後ろで聞いていたみんなも反射的に頭を下げる。


「頭をお挙げください。 話は聞いております。 この島の魅力を存分に楽しんできて下さいね?」

「ありがとうございます。 それと皇女様にはお話が。」

「あら。 どのようなご用件でしょうか?」


 そこで俺は今の世界の現状と、曜務とクェスタラの同盟について、そして「テレポーター」の設置とその利点について提案した。


「なるほど、確かにこの島の住人にとっても利益になりそうなものばかりです。」

「最初は島のみでの利用として、機会が増えたら他国との橋渡しになるかと。 材料などはこちらで用意しますが。」

「いえ、それには及びません。 この案件は私直々の依頼としましょう。 上級冒険者やスキルを使えるものが集まってくれると思います。」

「すみません何から何まで。」

「よろしいのですよ。 あ、これから冒険者として登録に行かれるのならこちらをお持ちになって?」


 そう言ってチエーリ皇女は俺にひとつの封書を渡してくれた。


「これは?」

「これから冒険者になるにあたって、最初はランク1からのスタートなのですが、あなたたちはまとまっていた方がいいと思うので「クラン」を結成することをオススメします。 そして「クラン」作成にはクランマスターはランク2以上でないといけないので、飛空さんのランクを2にしてもらう措置をお願いする書面が書かれています。 これをギルドの職員に渡せば了承してくれることでしょう。」


 チエーリ皇女が色々と言ってくれているのは分かるのだが、全てにおいてちんぷんかんぷんな俺たちの姿を見て、チエーリ皇女は丁寧に説明してくれた。 やっぱり聖母だわ。


 この島で冒険者として登録できるのは15歳、つまり俺達の国で言うところの高校生に成り立ての年代から登録が出来る。 そしてギルドに登録するにあたって、行われるのは「職業選択」、つまり自分はなにをしながら冒険者として生きていくかということを選ぶのだ。 とはいえこれもあれやこれやと自分で選ぶ訳ではなく、ある程度ギルドから適正な職業を提示された上で選ぶのだそうだ。 その方がいざその職業になって適正じゃないと分かったとき、適正職業にするまでにかなりの時間を浪費するのだそうだ。


 そして「ランク」という制度は下級、中級、上級、最上級まで分けられており、それぞれで受けられる依頼と報酬額が変わってくる。 もちろんながら昇級の壁はそれなりに高いらしい。


 一応階級に寄って求められているものが違い、下級では一定量の依頼 (内容は問わず)をクリアすること。 中級は数よりも精密さを問われる。 仕事が出来ても物が悪かったりすると報酬から減額を食らう。 そして上級はそれらの過程を踏まえた上で認められるかどうか、なんだそうだ。 ちなみに最上級ともなると数えるほどしかいないのだそう。


 そして最後に「クラン」、これは複数のメンバーが存在するときに、集まって依頼を成功しやすいように、パーティーを組み直すのに使う、要は作戦会議場みたいな感じだ。 ギルドひとつに登録して、それを他ギルドに見せると保証が変化するのだそうだ。 また登録したギルドに依頼報酬の1割程を譲渡すると、衣食住は提供してくれるのだそうだ。 変える家があるような感覚なのだろう。 しかしクランマスターはランク2からしか出来ない制約になっているらしく、ランク1同士では出来ないとの事。


「以上がこのクェスタラのルールですわ。 ご理解頂けたでしょうか?」

「えぇ、とても分かりやすいご説明、感謝いたします。」


 そう言ってみんな頷く。 こんな人が上に立っているなら、確かにこの島の為にと動きたくなるのも無理はない。


「それでは楽しんできて下さいね。 ここから一番近い「サウスター」というギルドに向かってください。 そこで話は済ませてありますので、すぐに登録をさせてもらえると思いますよ。」


 なにかのアトラクションの始まりかの如く見送りをしてくれるチエーリ皇女。 笑顔がとても眩しいです。


 そんな訳で皇女の住む城から出た俺たちだったが、最初からバカンスで無かったことに少しガッカリ感を覚える人もいたようだ。


「なんだか気難しい島ね。 これじゃぁ観光に来るような人がいないんじゃないの?」

「でもこっちの島で生活に困らないようにって配慮はとても素晴らしい事だと思うよ?」


 鮎の問題点の摘発を啓人がしっかりとフォローする。


「のぅのぅ、早くギルドに向かおうぞ! わらわはワクワクがとまらないのじゃ!」

「せやせや! そない話は一旦忘れて、ギルドに登録をしよや! わいらの旅行は始まったばかりやで!」


 エレアと輝己は我先にと行きたいようだ。 そんなに急がなくてもギルドは簡単には失くならないって。 っていうか二人のウズウズ感がこっちにまで伝わってくるようなんだけど。


 そんな思いに苦笑しながら、俺達はギルドへと向かうことにした。 折角くれた夏休みのイベントだ楽しまなきゃ損だよな!

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