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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第19章 新たな地、新たな仲間
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第211節 地下の秘密と約束、地下通路

 薄暗い部屋の中、積み重なっている檻、大小は様々で、奥の方はよく見えない。 しかしバーの奥の地下深くにこんなものがあるというのは明らかにおかしい。


「それに血生臭い・・・上でおつまみを出すために使われた動物の匂いだとしても強すぎる。」


 こんなところにいるだけでも本当に気分が悪くなってくる。 だが檻の中に何があるのか確認をしなければ、ここを離れようにも離れられない。

 そんなときに後ろから「コツッ、コツッ」と階段を降りてくる足音がした。


「・・・っ! 誰か来た!」


 俺はすぐに物陰に隠れて、光学迷彩銃を使い、壁に寄り添う。 完全に死角になっていて、目を凝らしても見るのさえ難しい場所に陣取った。


「ひっくぃ・・・ へへへ、ここのあんちゃんは本当に最高だよなぁ。 こーんな国にとって珍しい動物をこうして触れるんだからさぁ、えひひひひひひ。」


 どうやら酔っているのかかなり気分が有頂天気味な男が、独り言のように呟いた。


 そして俺のいる壁とは反対側の壁から鍵を取り出して、ひとつの大きな檻を開ける。


「そぉら・・・でておいで? 可愛い子猫ちゃん。」


 その男の指示で出てきたのはなんとライオンだった。 百獣の王、サバンナではその名が象徴されるかのような、強さと気高さを持つ動物。 しかし現れたそのライオンのたてがみはあまりにもズタズタで、体の作りもかなりひ弱だ。 あれで大人だと言うのなら貧弱過ぎる。


「よぉく出てきてくれたねぇ。 お前さんは頑固だから、なかなか出てこないもんなぁ。」


 そう言いながら壁に立て掛けてある長い鞭を持ち出す。 それをみてライオンは「ビクッ」と体が震えた。 これから起こることは容易に想像できたが、今の俺には止めることはできない。


 そして、ライオンを鞭で叩くという、サーカス団でもやるかやらないかのような行為を平然と行う。 確かに俺は止めることはできない。 だがやれることはいくらでもある。


 俺はポケットの中にあるスマホを取り出して、録画ボタンを押し、この光景を撮影する。 これは物的証拠になる。


「しかしほんとにこうしていると、自分が高みにいるようで最高の気分になれるぜぇ・・・えへへへへへ。」


 かなり過激に鞭を振る男。 こちら側からしてみたら反吐もでない光景を見せられているのだがな。


 ある程度撮ったところで俺は更に部屋の奥に進むことにした。 あの犬がもしかしたらいるかもしれないと思ったからだ。


 奥に進むと、檻はどんどん積み重なっていて、老朽化も酷い。 これ以上乗せると下の檻がもしかしたら潰れてしまうのではないか。 そう思うほどに。


 そんな風上にも置けない下衆な行為を行っているここのオーナーに、それ相応の罰を考えてもらわなければと思っているときに、視線を感じた。 あの時感じたのと同じ、助けを求める視線だ。


 感じた視線を辿ると、重なった檻の下から3段目。 かなり乱雑に置かれた檻の中。 檻の奥まで光が差し込まない中、光の届くギリギリのところにあの時の犬がこちらを見ていた。 かなり弱っているのは、光が届きにくいこの場所からでも良く分かった。


「・・・今は助けることが出来ないけど、必ず助ける。 こんなところに閉じ込めるなんて、この国のほうじゃ絶対に許さない。 だからもう少しの辛抱だ。 だから諦めないでくれ。 絶対に来て助けてやるから。」


 出来るかも分からない約束を繋げる。 もちろん理解できているのかは正直分からないが、俺とあの犬の間の瞳のやりとりで心は繋がったと思う。


 元の場所に戻ると別の、今度はもっと若い男が小動物をいじめていた。 先程までいたライオンは檻に戻されたようだ。 とてもじゃないがここにいると俺の心までも荒んでしまう。 気付かれないように一緒に出るしかないが、これを見るのは勘弁ならない。


「おかえりなさい飛空さん。 ど、どうされたのですか!?」


 絶賛監視カメラ実行中の夭沙が俺が帰ってきたのを察知したのと同時に俺がやつれていることに気付き、声をかけてきてくれる。


「ん、大丈夫。 絶対に王子に叩きつけてやろうって思っただけさ。」


 あまり夭沙に事実を知らせたくはないが、いつかは明るみに出る。 だが今はその時ではない。 まずは救出作戦のための準備を整えなければ・・・


「飛空さん。」


 夭沙は俺の名前を呼ぶとそっと自分の胸に抱き寄せた。


「今は、休みましょう。 時間はまだあります。 だから・・・」

「・・・あぁ、そうだな。 今日は戻ろう。 リモコンスナイパーは置いていけば消えることはないからこのままにしよう。」

「ひゅー 見せつけてくれちゃってー。」


 第三者の声に俺も夭沙も慌てて離れる。 そうだ、この場にはスリームさんもいるのを完全に頭の中から外れてた。


「若いねぇ。 さてと復活してくれたところで、どうするんだい? これから。」


 改めて確認させれて、頭を切り替え直す。


「多分強行突破するのは得策じゃない。 相手がどんな手を使ってくるか分からない以上、内側から崩していこうかと思ってるんだ。」

「暗躍作戦というわけですね。」

「あぁ、俺は光学迷彩銃を所持してるからそのまま潜入を繰り返す。 その間に逃走経路や入手ルートなんかを洗い流してみる。」

「昔の忍者のような事をするってことだね。 随分と悪いことをするね。 君も。」


 それだけ今回ばかりは心底許せない案件だったって事だ。 自分でも気分が悪くなる事ってあるんだなってこの世界で初めて実感したレベルだったからだ。



 翌日から本格的に作戦を開始した。 (ちなみに帰ったあとの夜は夭沙にカチューシャを着けてもらって、尻尾や耳を堪能させてもらった。 昨日はお楽しみでしたよ。 ええ。)


 まずは地下の動物達がどうやって連れてこられているかだ。 犬や猫、鳥ならともかく、ライオンなどの大型動物に関しては、外に出しっぱなしでは目立ってしょうがない。 それ以前に明らかに検問には引っ掛かる。 だがそんなことは聞いたこともないだろう。 そもそも知っていたら把握していると思うし。


 そう思い、今日は地下に少し入り浸る事にした。


「予想なら地下通路があると思うんだけど、検問を避けるだけならそれなりに大きいものじゃないと連れてこれられないと思うんだが・・・っとと。」


 別のところから気配がしたので自分の気配を殺す。 そして新たに動物を連れているようで、入口から来ていないと言うことは多分別の入口があるのは間違いなさそうだ。


「ほら、ついてくるんだよ! ったく、ライオンが捕まえれたからってここまでするか?普通。 こっちが食われたら元も子もないってのに、よっ!」


 そういって男が引きずるように連れてきたのはなんと虎だった。 まだ元気な雄の虎なのだが、抵抗をしているように見えない。 ここのことなので死んではいないのだろうが、引きずっていると言うことは眠っている可能性が高い。 そこからはライオンの時と同じように、逆らえないよう調教していくのだろう。


 入ってきた方向は把握したので、その方角に向かって息を殺しながら歩いていく。 近くで見張っていればどこから来るのかがはっきりする。 そしてそのまはま密輸ルートまでもしかしたら掴めるかもしれない。 そう思いながら待っていると、先程の男がこちら側に向かって足音を立ててくるのが分かった。


「っふぅ。 これをやるだけで給料がいいのは結構だけど、今回はそれ以上値段貰わないとな。 今回も命をかけて持ってきたんだからよ。」


 そう言ってなんでもない壁に手をかける。 するとそこから「カコッ」という音と共に壁の一部がへこみ、そこから通路が現れる。 どうやらそこが隠し通路のようだ。 近くにいたので閉められる前に光学迷彩銃を使用しながら一緒に入っていく。 改めて通路を確認するとあまり設備が整っていないのか通路は舗装されておらず街頭のようなものも無かった。 こんなところを通ったのでは、動物達の安全も確保されるわけが無い。


「いや、そもそも保護目的でやってないなら、関係ないのか。」


 ここで私腹を肥やしてるやつが、改めてろくでなしなのは確認できた。


 歩くこと15分ほど、先程の暗かった場所とは一変して、明るくて広い場所に出た。 するとそこに動物達が運ばれてきたであろう荷馬車と、数名の男達がいた。何かを喋っているのは分からなかったが、荷馬車に乗ると、そのまま外へと出ていった。 そのあとを追って、どこに出たのか確認をする。 すると出たのは国境からはかなり離れた場所に出てきた。 後ろをみてみると、大きな岩や木々が立ち並んでいたが、これら全てが立体映像(ホログラム)で、地下への入り口をカモフラージュしているようだ。 確かに普通の人には分からんわな。


「よし、場所も何をしているのかも分かった。 後はこのまま、王子に報告するだけだ。」


 そうと決まれば、早速報告だ・・・と言いたいところだけど・・・めちゃくちゃ遠い気がするんだけど・・・国境が。

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