第193節 参戦と本当の馬鹿、次の行き先
状況確認と設定をいじってもらうため、俺と夭沙は制御室へと足を踏み入れた。
「現状は? 今どうなってる?」
「突然現れたポイズンノイズに困惑してる人が多いけど、回線を現実と電脳世界でリンクさせてるから、高花さんと弧ノ一さんのアドバイスでそれぞれ対処しているよ。」
必死こいてプログラムを書き換えようとしている司が簡潔に現状を話してくれた。 さすがは実況者と解説者、対応はお手の物だな。
「津雲さん。 これはどういうことなのですか? まさか、僕が考え出した案のせいで・・・」
「心配すんな若本、これはもとよりお前のせいじゃない。」
決して懸念していた訳じゃないし、若本の考え出したこのゲームは革命が起きるとも大臣が言っていた。 だが最近聞かなくなったポイズンノイズの情報が今ここで現れるとは・・・
「それで、今はポイズンノイズのことを知っている人達だけでも入れるように、プログラムを書き換えてるって訳。 多分これを入力すれば・・・出来た!」
無中瀬がガッツポーズを取る。 時間はかかっただろうが、これで途中参戦出来るってわけだ。
「よし! すぐに駆除を開始しよう。 夭沙、行こう!」
「はい!」
「僕らも、終わるまでバックアップするよ!」
「まずはあの二人に現状報告よ! 『高花さん、弧ノ一さん、聞こえますか? 今プログラムを書き換えて、途中参戦出来るようにしたから、ポイズンノイズの事を少しでも知ってる人を中に入れて、知らない人は1箇所にまとまるように指示して!』」
制御室を出る前にそんなやり取りを耳にする。 急がないと、まずいことになるぞ! そう思い俺と夭沙は電脳世界の入り口へと走っていった。
「皆さん! 突然現れたものには近づかずに私たちが指定した場所までどれだけ距離があっても走りに行ってください!」
「しかしこれはどういうことなのでしょうか? 最近出てきていないと聞いていたポイズンノイズが再び現れる様になるとは。」
「嘆いていてもしょうがないですよ弧ノ一さん。 我々の仕事はこの現象を知らない生徒を、少しでも安全な場所へと案内する事です。 ん? はい、はい。 本当ですか!?」
「どうかしましたか? 高花さん。」
「皆さん! 聞いて下さい! これから津雲 飛空さんが電脳世界に入っていきます! その後も彼らの仲間が次々と入っていくとの情報が入って行きます!」
「おおー! これはもう敵無しですなぁ! しかし、今回の場合はFFのような状態になっていますが、その辺は大丈夫なんですかなのでしょうか?」
「そこはほら、飛空さんですし、人を撃つことはないでしょう。 ・・・この状況下で飛空さんを撃つ人がいなければ、の話ですが。」
「いやぁ、こんな中で撃つ輩はいないでしょ。 ・・・多分」
目を開けると、例の島にいるのは分かるが、今いる場所は前回いた浅瀬の湖ではなく、森の中だった。 さてどこに行けばいいのだろうか。 貰える島の地図では全体でしか映らないし、そもそも今回は小型マップにも地形しか映らないから、敵はおろか人すらも映らない。 手の打ちようがないな。 どうする・・・ん?
『どうも飛空さん。 高花です。』
無線から聞こえてきたのは先程実況をしていた高花さんだ。
「今回の戦いは場所が分かりにくいのでこちらからナビゲートさせていただきます。」
おっ、それはありがたい。 特に多く入っていないので場所がいまいち把握しきれていないんだ。
高花さんのナビゲートのもと、俺は1つの都市に着いた。 その都市にはサソリなりウツボカズラなりが軒並み揃っていた。 数はそんなにだが、まあ各個撃破で十分なくらいだ。
「さて、これ以上ここにいてもらうわけにもいかないから、ご退場を・・・」
右手に銃を構えた時、右手の甲に痛みを感じた。 しかもその攻撃は右斜め後方からの攻撃だった。 後ろにはポイズンノイズはない。 ならこの攻撃はなんだ? その攻撃が飛んできた方向を見るとそこには銃を構えてこちらを見据えている男子生徒の姿があった。
「へぇ。 津雲 飛空って言うのかおめぇ・・・ 嬉しいぜ? なかなかこの世界に入って来ないし、入ってもなかなか会えなかったからなぁ。 現実世界じゃあんなことされたが、ここならこっちも遠慮なく行けるからなぁ・・・・・・ 落とし前つけてもらうぞこらぁ!」
誰かと思ったら2度も俺にナンパを邪魔されたやつだった。
「・・・ヤンキーにはヤンキーなりのプライドがある・・・けどなぁ・・・」
そう言って銃を構えているにも関わらずつっこんでくる馬鹿にこちらも銃を向けながら、少しばかりの殺気を添えて、
「もう少し冷静になって・・・」
「時と場合くらい考えなさい!」
そう俺のセリフを遮ってその人物、紅梨がそのヤンキーにマークスマンライフルの銃身を脳天に叩き込んでいた。 おぉ痛そ。
「紅梨、こっちに来てくれたんだな。 他のみんなは大丈夫そうか?」
「ええ。 他のみんなも各個撃破してるみたい。 あんたが心配する程でもないわ。」
「ははっ、違いないや。 それじゃ、交流会最後の仕事と行きますか!」
そこからあとはひたすらにポイズンノイズを狩っていった。 あまり強さを持っていないので、本当に楽に倒せたと思ってる。
交流会も (なんだかんだで)無事終了。 この後は俺は旅立たなくては行けなくなるんだけど、その前に色々と下準備を・・・ね?
交流会の終わった次の日の明朝、俺は国会議事堂に足を運んでいた。 もちろん目的は大臣に会うためだ。
「すみません大臣、こんな時間に。」
「気にしないでくれ、それよりも君の方が心配だよ。 良かったのかい? もう少しゆっくりしていかなくて?」
「俺はじっとしているよりも動いている方がなんかしっくりくるみたいなので。」
我ながら困った性格だよな。 そう肩を竦めると、大臣も「フッ」と軽く笑った。
「君がそれでいいのなら私は止めないさ。」
「それで、次に行く国は?」
「アスベルガルドの隣国 「重力変動地 グラジオス」だ。」
「重力変動地」・・・そこは国家とかじゃないんだな。
「アスベルガルド統率者 ガリトス様によれば、その国を訪れるのには不思議な制約があってね。 なんでも金属類を持ち運ぶ事が困難なのだそうだ。 例え外からの輸入品でもね。」
「それが、制約なのですか? 確かに携帯機器を持ち歩けないのは大変ですね。」
それでは連絡の取りようがない。 多分方法はあるのだろうが、その国ならではのルールがあるのだろう。 下手に刺激しないようにしなければ。
「それが今回の国の主な注意点だ。 今回ばかりは「テレポーター」の設置が出来ないことを頭に入れて置いてくれないかい?」
「分かりました。 それでこの時間に来た理由なんですが。」
「そうだったね。 こんなに朝早くに来るから、何事かとも思ったよ。」
それは本当に申し訳ない。 早い方が時間が取れていいかなって思って。
「昨日お話した新たな電脳世界のゲームを聞いて貰った上で少々相談があるんです。」
そう言った後、大臣は凄く真剣な眼差しで俺を見ていた。
まずは粗方なルールを教える。 そして俺が感じた修正点とこれを授業の一環として取り入れてもいいのではないか?という話だ。 ちなみに今回は発生したポイズンノイズについても話した。
「なるほどな。 危険は伴うが、新たな可能性を見出せるかもしれない。 そういう事かい。」
「はい。 もっと詳しく知りたいなら、それを作った人物を連れてきますよ。」
「そちらの方がいいな。 ではそちらの話は別のものに任すとして、次の国に行く方法なのだが・・・」
という感じで1時間程大臣と話をした後、国会議事堂を後にした。 次の出発は2日後の昼。 ナディとワーライド王子も同じ時刻に帰国 (テレポーターを通るから帰国と言っていいものなのか?)をする事になった。 新たな国でどんな出会いが待ち構えているやら。 頼むから面倒だけは止めてくれよ?
祝! 投稿数200節突破!
と言っても前回のようになにか特別な話を書く訳ではなく、節目として交流会編を終わらせるだけにしました。
気分転換にどこかでまた番外編みたいなの書かないとな。




