第184節 開始と新たな参加校、その代表
「さあさあ、いよいよこの時がやって参りましたよ! 「第二回 学校交流会」! いやぁ、まさか2回目が出来るとは思っていませんでしたよ。 解説の弧ノ一さんはどう思われますか?」
「私としても久しぶりの晴れ舞台でかなり、かーなーり、テンションが上がっております! こうして場を用意してくれた生徒会面々には頭が上がりませんよ。 あなたにももう一度こうして、解説が出来るとも思っていなかったんですよ。 実況の高花さん。」
「ははは、嬉しいことを言ってくれますねぇ。」
あそこの2人は相変わらず元気そうでなによりだ。 まあ実況と解説はそうでなくては困るというのもまた然りなのだが。
先程の2人が言ったように、今日から3日間は交流会になる。 前回と同じように宿泊先もあるし、なにより案件について通ったのはある意味頑張ったからとも言えるだろう。
前の会合の時に学と若本から開始早々に頭を下げられたのは今でも覚えている。 この2人には理解してもらえて良かったと安堵したっけ。
逆凪と兎我野はまだ理解してもらえなかった。 いや、正確に言えば逆凪はあれから一度も資料に目を通してないだろうし、兎我野は「こんなもの無くても」という自信の過信からくるものだろう、まあ過半数が決定した事なので納得せざるを得ない状況ではあったからもう文句の言い様はないがな。
「今回の交流会の件について、我々の参加の許可をご了承いただきありがとうございます飛空様。」
そう言ってくるのは支流譜修道院から来た飛鳥 美笛だ。 修道院なので格好が完全にシスターさんのそれだった。 フードの下から覗く無垢に近いような童顔はとても戦いに向かない。
「あーいや、参加を決めたのはそっち側だし、俺達は提案しただけだぜ? でもよく引き受けてくれたと思ってる部分もあったりするんだよね。」
「せっかくなら先駆者に聞きたいじゃないっすか! どんな世界が広がって、どんな風になっているのか!」
けたたましく叫ぶのは伊邪那岐工学高校の飛倉 亜斗だ。 あんまりに大きい声だったのでこっちの耳がいかれるところだった。
「先駆者っても君らと同い年だぜ? まあ1年の差は確かに大きいかもしれないけれど。」
『だからこその今回の企画なんですよね。 僕達みたいな体感バーチャル駆け出しのような学校からしてみたら本当に有難いですよ。』
耳に当てているボイスチャットから聞こえてきたのは雷公動物養護学校の珠美 光成の声だった。 声がかなり高く、背丈も低く、髪を伸ばしている為かなり女子のように見える。 だが男だ! 最初見た時は俺も驚いた。 生物学上雄であるにも関わらずここまで女子のような容姿をしている。 そこまでの男子はむしろ二次元の世界だけだと思っていた。
「動物養護学校なのになんで体感バーチャルに?」
『最近になって動物にもレントゲンを取れるようになって、その過程で電脳世界がある事を知って、校長先生が「ついでに取り入れてみようか。」という案が出たからだようですよ?』
「ず、随分と思い切った事をしたものだね・・・」
レントゲン撮影ついでに電脳世界のそれを取り入れようなんて普通考えられんぞ。
「でも、幅広い視野を見れるのはいい事だと思いますよ。 私達も電脳世界での自由度には頭が上がりませんので。」
そういうのは鞘絹女学院の赤坂 京葉だ。 茶髪で清楚のような顔をしているが、驚いたのは服装で、鞘絹女学院は衣装、ファッションデザイナーを作り出す学校なのだ。 なので彼女達の身にまとっている制服は、支給された制服にこれでもかと言うくらいにデザインが施されている。 普通なら校則違反で速攻で退学になってもおかしくないくらいに、だ。
「やっぱり、ファッションを嗜む者としては凄いのかい?」
「それはもう! 服のデザインはもちろんなんですけれど、組み合わせや細部に至るまで自分好みに設定が出来ますし、アクセサリー類もとっても豊富で、なによりもいいのはそれらを着ても戦闘に一切の支障がないことですね! 自分のファッションで自分の思い通りに動かせて、もう本当に電脳世界とは有難いものです! なんでもっと早くに取り入れなかったのかと、訴えたいくらいだったりも・・・」
赤坂は自分のゾーンに入ると早口になるタイプだな。 いるよね。 こういうさらけ出すのにゆっくりしてる余裕なんてないって人。
「はっ! す、すみません。 つい、いつもの癖で・・・」
「いいよいいよ、そう思ってくれてるだけでも電脳世界としてはいいんだから。」
自分が行った事に恥ずかしさを覚えたのか、しゅんとしてしまった。 分かるよ、その気持ち。
「さて、お互いに準備が出来上がったようですので、早速試合の方に移らせてもらいます。」
おっ、試合が始まるか。 今回の交流会は前回と同じ3日間なのだが、総当たり戦になるので、1日目から試合が始まるのだ。 ちなみに8校ずつで2つの会場を使ってそれぞれ試合をしているのだが、実況と解説は高花先輩と弧ノ一さんを中心にそれぞれの専属の放送部が報告をしている。 しかし16校ともなると管理が大変になるな。 ちなみに俺は今は会場を下から見るような立ち位置で全体を見ている。 空席はそんなに多いものでもなく、それぞれの学校ごとに席が決まっているので、どの辺に誰がいるかというのも分かりやすくなっている。
「あそこの子達、元気ですねぇ。 片方は曜務学園の制服を着てるけど、もう1人の子はどこの学校の生徒でしょうか?」
飛鳥が見ている方に目を向けるとそこにはエレアがナディを連れてどこかに誘おうとしている様子だった。 ナディも如何せん嫌がってる様子ではないので、多分誘われてそのまま行く流れになったのだろう。
『あっちではなにか女子が集まっていますよ。 あれはなんでしょうか?』
ボイスチャットから珠美の声が聞こえたので、どこだと探していたら右上の方に確かに女子の集団が集まっていた。 というかあそこのエリアって軟瑠女子高の場所じゃね? そんな事を思いながら様子を見ていると、ちらりと中心に居る人物が見えた。 それをみて俺は納得をした。 無理もない。 だって真ん中にいる人物は何を隠そうワーライド王子だったからだ。 男に飢えてる軟瑠女子にワーライド王子みたいなのが行けば、そりゃ目立つか。
「心配しなくてもあれは自分の知り合いですよ。 迷惑になるようなことは無いですよ。」
「なんだかどっかの王子っぽいんだけど。 あんたとどういう関係なんだ?」
「どうと言われても・・・ 今自分は曜務の使者をしていて、そこで王族に会うからそこで知り合ったって感じ・・・?」
「え!? 津雲さんってこの国の使者になってるんですか!? す、凄い・・・」
赤坂が大層驚いたような表情を見せる。 まあ、そりゃそうか。 一学生がそんな重大な役割担ってるって言ったらそりゃ驚くよな。
「さて! 第1試合目が終了致しました! いやぁどうでしたかね弧ノ一さん? 今回の両場所の戦いは?」
「そうですね。 やっぱりいくら相手が戦闘経験が少ないからって、既存学校の方は荒が出ちゃってる感じでしたね。 相手がいくら格下だからってそれに驕っていると足元を確実に掬われますからね。」
「ありがとうございます。 これから試合に出る人は十分に頭を切り替えてくださいね。 では次の試合へと移りたいと思います。」
向こうは向こうで虎視眈々と試合と実況をしている。 本当に俺達あんまり要らないよな。
「なら俺も電脳世界でのミッションでもしてこようかな? 席を外すけど大丈夫?」
「大丈夫ですわ。 また時間になったら及び致しますわ飛空様。」
「ありがとう。 でもなんか「様」付けされるのもなんか調子狂っちゃうな。」
「そこは修道女だから、という事にしておいて下さいませ。」
んー、まあ気になる程度だから別に問題は無いか。
そう思いながら飲み物を取りに行こうと売店の所に行くとなにやら人だかりが出来ていた。 全員が男子だったのでかなり場所を取っていた。 何事だ? こんな所で?




