第175節 アップグレードと過剰供給、オーバーブースト
「機械騎士 ファントム・ステレシード」
効果:このカードを攻撃及び効果の対象に選ぶ事は出来ない。
このカードはプレイヤーに直接ダメージを与える。 ただしその効果を使用した場合、与えるダメージは現在の攻撃力の半分となり、攻撃終了時破壊される。
攻撃力8/体力1
後半にしてはかなり強力だと思われる効果を持ったモンスターを召喚できた。 相手に直接ダメージも与えられるし、なにより対象に取れない。 こいつがそう簡単にやれない事は明白だ。
「さらに俺は手札の「ジャンク・マリオネット」の効果発動! 自分フィールドのモンスターを素材にして、このカードを召喚する! 素材にするのは機械の鉄くず! そして機械の鉄くずは破壊される扱いではないので次の鉄くずを生成できない。」
ひとつの鉄くずがひとりでに動いたと思ったら鉄くずの中から、継ぎ接ぎで出来たなんともお粗末な人形が現れた。
「ジャンク・マリオネット」
効果:自分フィールドのモンスターを素材として、手札から召喚出来る。 この時手札を消費しない。
このカードが戦闘によって破壊された時、破壊した相手モンスターは次のもう一度自分のターンが戻ってくるまで「-1/-1」のステータスを付与する。
攻撃力2/体力2
「バトル! ウォークタで投石器を攻撃!」
本当ならここで処理をしておきたいが、手札の状況を見て、今はその時ではない。
「攻撃力は変えてこない、か。 ならばこちらもそのまま受けよう。」
ウォークタの刃が投石器を捉えるが、投石器の堅さに刃が全く通らない。 そしてウォークタはそのまま帰ってきた。
「ご苦労さま。 ウォークタ。 俺はターンエンド。 手札を補充し直す。」
引いてきたカードは・・・ うん。 なんとかなるかもしれない。
「俺のターン! ドロー!」
ユレストのターンになる。 さてとここからどうするかね。
「俺は手札を2枚消費して、「大地を揺らす者を召喚」!」
「大地を揺らす者」
効果:このカードの攻撃は相手モンスター全体に攻撃する。
攻撃力1/体力2
全体攻撃か。 モンスターが多い分こちらには不利かもな。
「そして俺は手札を1枚消費して、投石器の効果を発動する。」
そう言うと、先ほどと同じように投石器の皿の部分に、岩が乗せられ、こちらに向かって飛ばしてきた。 そして俺の体に直撃する。 ダメージはないけどこれはキツいんだよな。
「これで、相手は攻撃が出来なくなったわよ。 召喚もしちゃったし。」
鮎がそう俺に投げかけてくるが、それだけのために投石器の効果を発動とは到底思えなかった。
「そして俺は手札を3枚消費して、魔法カード「アップグレード」発動! 対象は「投石器」! これにより投石器は山札の中にある「トレビュシェット」へと変貌する!」
そう言うと、投石器は淡い光に包まれながらどんどんその姿を大きくなっていく。 そして淡い光が消えたと思えば、先程の投石器とは似ても似つかない、とても厳つい感じの機械になっていた。
「トレビュシェット」
効果:このカードの召喚時、相手に10ダメージ与える。 次にこの効果が使えるのは3ターン後になり、その間攻撃が出来ない。
攻撃力6/体力8
効果を確認し終わった後、トレビュシェットはひとりでに動き出して、大量の岩をこちらに飛ばしてくる。 というか10ダメージって、これ食らったら終わりじゃねぇか!
「お、俺は手札を2枚消費して、魔法カード「スクラップシールド」発動! 1ターンに1度、ダメージを半分にする!」
そう言うと目の前にガラクタで作られたような盾が現れて、それの影に隠れる。 そして岩が振り終わるまで凌ぐ。 所々崩れ、その瓦礫に体がやられそうになるが、まだ立てる状態になっていた。
「これで俺はターンエンド。 さて、風前の灯火となったが、まだ足掻くかい?」
その問いは見下しているように感じるものの、本人の表情は至って大真面目だった。 この先どうなるのかが見たいのだろう。
「俺のターン! ドロー!」
ならその思いに答えてやろうじゃねぇか!
「俺は手札を1枚消費して、魔法カード「最新型」発動! 対象を選択して、攻撃力を+2する! 俺が選ぶのはウォークタ!」
そう宣言すると、ウォークタの刃の部分がピカピカになっていた。 最新型ってそこ!?
「さらにウォークタの効果を使用。」
ウォークタの効果でなにを引くか・・・
「・・・なるほど、ものは使いようって事か・・・」
ユレストは俺のその言葉の理解を出来ていなかった。
「俺は手札を2枚消費して、魔法カード「過剰供給」発動! 対象を選択して、そのモンスターの攻撃力を倍にする。 ただしこのカードの対象となったモンスターは戦闘終了時、破壊される。 俺はウォークタにそれを選ぶ!」
選んだ後にウォークタからは尋常じゃない熱を放出していた。
「準備は整った・・・ バトル! 俺はジャンク・マリオネットで大地を揺らす者を攻撃!」
ぎこちない動きで突っ込んでいって大地を揺らす者をがんじがらめにする。 なんか体を乗っ取ろうとしてるように見えるな。 しかしこれで邪魔をされる事もないだろう。
「俺はウォークタでトレビュシェットを攻撃!」
「おいおい、またお互いにダメージの入らない消耗戦をするのか?」
「違うね! 攻撃をしたのはこれの為だよ! 手札を3枚消費して、魔法カード「オーバーブースト」発動! これによりこのバトル中、俺の場のモンスターは攻撃力が倍になる! ただしこのカードを使用した場合、自分フィールドのモンスターは全て破壊される!」
ウォークタの攻撃力は「最新型」と「過剰供給」の分も加わり、これで14になる。
「・・・くっ!」
対策法が無かったらしく、そのままトレビュシェットは破壊される。 まだユレストの体力は2桁だが、突っ切るしかない
「最後にファントム・ステレシードで直接攻撃!」
「オーバーブーストの効果を使っても、ファントム・ステレシードを対象には出来ないから、攻撃力は上がらないぞ?」
その返しは正直な事を言うと想定内なんだよな。 カードゲームにはルール上では分からない穴がある。 それを理解出来るかが、カードゲームでは本当の勝敗になる。
「ああ、確かにファントム・ステレシードは対象には取れないから、攻撃力はもちろん、体力も上げられないさ。 だが、それはファントム・ステレシードを選んだ場合だ! オーバーブーストは効果範囲は場のモンスターだから正確な対象を取っていない! つまり、対象に取れないステレシードも全体効果としての一部として範囲内に入るのさ!」
「だ、だがそいつの攻撃を食らっても俺はまだ倒せないぞ!」
そうユレストが言うと、俺は少し悲しそうにそのカードの説明をした。
「・・・俺はあるカードを手札からコストとして消費をした・・・もちろん普通に使っても強力なカードだったよ。 だけど今の現状を考えるととてもじゃないけれど打破出来るとは思わなかった・・・」
「何を言って・・・まさか・・・!」
ユレストもなんのカードか理解出来たらしく、目を大きく見開く。
「俺はコストとして消費した魔法カード「機械の悲鳴」を破棄場から発動!」
「機械の悲鳴」
効果:このカードを発動したターン、相手フィールドのモンスター全てに「-3/-3」を付与する。
このカードがコストとして破棄場に落とされた時、山札に戻す事で自分フィールドのモンスター全ての攻撃力は現攻撃力の倍になる。
「俺は機械の悲鳴を山札に戻す! その一撃で全てを終わらせろ! ファントム・ステレシード!」
ファントム・ステレシードが自分フィールドから離れ、ユレストの所に向かい、ユレストの前に現れ、そして全てを終わらせる一撃を・・・落とした。
白い光に包まれた後、目を開けると、そこはもう元の宮廷な応接間の姿に戻っていた。 目の前のユレストは宙を見上げている。
「負けた・・・か・・・。」
その言い方はどこか清々しく感じた。
「何故最後の機械の悲鳴をウォークタの時に使わなかった? あの時に使っていれば決着はもっと早くついていただろ?」
「相手に安堵を与えてから確実な一手を与える。 それが俺のやり方だからね。」
「・・・ふっ。 意外と鬼畜なんだな。」
そうかな? まだ優しい方だと思うけど?
「決着は着いたか?」
ずっと玉座で座っていたサレスト王子が声を掛けてくる。 そんなに長い時間では無かったはずなんだがな。
「こちらとしてもなにを提供するか決まったから、話し合いを再開しようじゃないか。」




