第171節 門番さんと街並み、王子達
前回も話しましたが2人はしてませんよ?
してませんからね?
朝、鮎と二人きりの部屋で目が覚める。 昨日はお楽しみでしたね。 なんて事はしてないので悪しからず。 知ってるでしょ?
そう言えば今日話をしに行くってこと通ってるのかな? さすがに行って門前払いはくいたくないぞ?
とりあえず朝ごはんを食べ終わった後に昨日あった門番の人に話を聞きに行こうかな? 大丈夫だよな?
宿屋から離れ、門番さんに会いに行くために出かけたのだが、検問に行かずとも昨日の門番さんが目の前で歩いていた。
「おはようございます。」
「ん? おお、君は昨日の。」
「あの、昨日話をした王様への会合の話は・・・」
「あぁ、大丈夫だよ。 今日は本来ならなにも無かったんだけど、新しい王様は気まぐれだからね。 楽しそうな話には意外と目がないんだ。 若いからってのもあるんだろうけど。」
へぇ、新王は若いのか。 そりゃ子供達に遊ぶためのカードを作ったんだからそれぐらいの若さがないと出来ないのかもな。
「今日は非番なんだけれどもし良ければ、私が王の宮廷まで連れて行ってあげよう。」
「え? いや、それは申し訳ないですよ! せっかくのお休みなのに!」
「ここの国は仕事があるようでないのさ。最もらしい理由があるだけで、大人も子供もあまり変わらないのさ。 ほら、そこの人達だって、商人なんだけどこの国流に言わせてもらえば「札を使うのが最高の取引方法だ」って言ってああやって賭け事で全てを賄ってるのさ。」
テラスで何やらトランプゲームのようなものをしている大人達をさしてそういう門番さん。 遊びなのか仕事なのか分からんなあれじゃ。
そんなのを知り目に宮廷へと歩みを進める。 数分もすると至って普通の宮廷が目の前に現れた。 良かった。 国自体がちょっと特殊なのでこっちまで特殊だったらどうしようかと思った。
そんな感じで門番さん
「そう言えば名乗ってなかったね。 私はトラレナ・クロレンス。 よろしくな。」
トラレナさん (名前で女性だと分かった。 声が低いし、背丈も髪型も格好も青年にしか見えなかった。)が宮廷の入口の兵士と話をすると、了承を得たようで、俺たちを通してくれた。
「それにしてもトラレナさん、随分と兵士の人に好かれてましたね。」
「ここの兵士は若いのが多いんだ。 その中でも私は古参兵のようなものだから、みんなの面倒をよく見たものさ。」
そう笑うトラレナさん。 古参兵と言うけれど、そのにじみ出る若さは20代にしか見えない。 実際は
「おっと、女性の年齢を詮索するのは頂けないな。」
そう考えようとした時にトラレナさんに止められた。 顔に出てたかな? うーん、ポーカーフェイスはしっかりと決めれるようにしないと。
そう考えて自分の顔を触っていると、なにやら声が反響してきた。 最初は小さいものだったが、それが段々大きくなってきて、ある扉の前に来ると、
「やっぱり僕は使者の人はそれなりに歳を重ねた人物だと思うんだよね。 男性ならやっぱり歴戦の勇士を使うだろうとね。」
「いいや! 俺は若いと睨んだね! リューフリオで中年のオッサンが外交関係の為に来れるとは到底思えないからな!」
そんな2人のいかにも若そうな声が聞こえてきた。
「飛空、随分と期待されちゃってるね。」
「どっちに転んだ所で多分変わらないさ。 それよりも王様は1人ではないのですか?」
「おっと言ってなかったね。 この国の新王は兄弟で出来ているんだ。 その方が考えに偏りが無くなるとは前国王のお言葉だよ。 国民も納得している。」
この国の仕組みが何となく分かったところでトラレナさんが扉を叩く。
「我が王よ。 使者を連れて参った。 開けてもよろしいか?」
「その声はトラレナさん。 いいですよ。」
「いよいよお披露目か。 どんな人だろうかな。」
そして扉が開けられて大広間の如く広い部屋に入る。 そして俺が入った途端に向かって左の橙色の髪をしたおかっぱ頭の男子が座りながら目頭を抑え、右の同じ橙色の髪のオールバックの男子が席を立つ。
「ほらな! やっぱり若いぜ! 今日の賭けは俺の勝ちだな兄さん!」
「ふぅ・・・憶測を見誤ったか・・・ まあ女性じゃなかっただけマシという事にしておこう。」
そんなやり取りを遠目で見ている俺と鮎。 トラレナさんは心底呆れた様子で見ていた。 どうやら彼らにとっては日常茶飯事らしい。 というか人を賭けの対象にするんじゃないよ。
「宰相殿、話を進めてもらいませんか?」
「言わずもがなですぞ、トラレナ殿。 サレスト様、ユレスト様。 使者の方がお見えでございます故、会合を始めますぞ。」
「おっとそうだったね。 落胆なんかしてる場合じゃなかった。」
「そうだな。 せっかくの休暇返上だ。 しっかりと仕事はしないとな。」
そう言うと2人は改めて俺の方を向き直る。
「改めまして曜務の使者よ。 僕はこの国の第1国王、サレスト・タロト・ハークダード。」
「俺は第2国王、ユレスト・タロト・ハークダードだ。 よろしくな。」
「ご挨拶ありがとうございます。 私は曜務の使者として訪問させていただきます、津雲 飛空と言います。」
「その付き人の山本 鮎です。」
丁寧に挨拶を重ねて、改めて今回の会合について説明をする。
「今回ハークダードを訪れましたのは、隣国リューフリオ、そして我が国曜務との現在の環境に置ける国同士での蟠りを無くすための同盟に加入してもらいたいと思っております。」
「現在の環境とは?」
サレストの疑問に答える。
「昨日、この国の子供達にお伺いしたところ、今子供達の間で大人気の「サモンコール」、最近になり絵柄のカードが投影されるようになったと仰っていましたが。」
「うむ。 2ヶ月程前にな。 兄者と今後の事も兼ねて遊戯を楽しんでいたところ、突然絵柄のカードが現れたのだ。 実害も無いし、何よりこちらの方が受けが良さそうだったのでそのままにしていたのだが。」
俺の昨日の出来事を伝えるとユレストがなぜそんなことになったのかを説明してくれた。
「そのカードには何か特殊な加工が施されていますでしょうか? 例えば小型の電子機器を入れているとか。」
「このゲームが出来て1年した頃に偽物が流通した事があり、 分かりやすいようにホントに小型なのだが、チップをカードの内側に埋め込んである。」
俺の仮説に今度はサレストが答える。
「なるほど、それが今回の事で影響を及ぼして、投影されるようになったようです。」
「それに関しては我々も想定外だったのですが、先程もユレスト様が申し上げましたように、実害がないのでそのままにしています。 これによる偽物流通も無くなったのでこちらとしてもありがたかった話でございます。」
仮説を確定させて、宰相が安心した様に頷く。 まあ悪用してる様子は無いのだが、念には念を入れないとね。
「そのような事態でも安心は出来ないです。 それを逆手に取ってくる輩もいないとも限らない。 それは本国のみならず、他国からも同じです。」
「なるほど、それで同盟を組んで先手を打とうという訳だね? 同盟内でのいざこざを少なくするために。」
「そういう事です。」
サレストの方は理解が早くて助かる。 ユレストの方は少し頭を抱えていたが、宰相の話を聞くと納得してくれた。 2人の性格がだいたい掴めてきた。
「そして同盟を結んでくれた暁には、こちらにあります「テレポーター」の使用権限をお与え致します。 こちらの「テレポーター」はかの国アスベルガルドの技術を持って完成した装置でございます。 既に我が国曜務を含め、アスベルガルド、クリマ、リューフリオでの運用を開始しています。」
「へぇ、そいつひとつで色んな国に行けるって事か!」
テレポーターの端末を出すとユレストが興奮気味に見つめてくる。
「はい。 ただしこれはあくまでも端末ですので、膨大なデータベースの媒体が必要となります。」
「それなら心配はない。 先程も申したように小型のチップをカードに埋め込むための機械がある。 それを利用しよう。 廃棄しようとしていた旧式だが、十分に役割は果たせるだろう。」
使用方法を説明するとサレストは次の手をすぐに返してくれた。 さて、こちらは全て提示した。 向こうはどう出てくる?
「しかしここまで至れり尽くせりしてくれるとは・・・ 我々の方も何か提示しなければ割に合わないな・・・」
サレストが何かを考え始めてしまった。 まあ直ぐに思いつかないのならゆっくり待たせてもらうだけなんだけど・・・
「飛空と言ったな! お前はなかなかに見どころがある男だ! どうだ? 俺と1戦「サモンコール」をしないか?」
ユレストは落ち着きなく俺との「遊戯」を所望してきた。 何となく予想が出来ていたけれど、やっぱりそういう展開になります?




