第170節 大まかなルールと部屋着、夜の・・・
噴水広場に集まっていた子供達と別れて、お店で「サモンコール」のアイテムを買って、宿屋を借りて「サモンコール」について色々と情報を仕入れていた。
「「サモンコール」、自分が召喚士となり、様々なタイプのモンスターを操り、同じ召喚士と自らの技量を極限まで出し合う決闘である。」 とはこのゲームのコンセプトを模したキャッチフレーズである。
「初心者だからスターターデッキがオススメって言われて2つ買っちまったけれど、なるべくなら普通のパックも開けてみたかったなぁ・・・」
カードゲームに置いてはそれも1つの楽しみなのだ。 最も売っていたのは専門店ではなく、ごく一般的な商店の一角に置いてあった。 ちなみにこれを扱っている店はないのかと店主に聞いたら
「そんなのはないよ。 何せ札の国だからね。 価格は基本的には一定なのさ。 まあ、取り扱っているのがうちだけって言い方も出来るけどね。 みんな札事以外で争いたくはないのさ。」
と言っていた。 競争率がないので、「サモンコール」に関してはこの店の天下に近いだろう。 まあ、他に店がないなら比較も不可能だしな。
「さてと、とりあえず大まかなルールは理解出来たぞ。」
そう言ってスターターデッキに入っていた取扱説明書を閉じてそう呟く。
まず準備するものとして、山札は50枚、スターターデッキもそれぐらい入っていた。 まあそこは当然だとして。
次に手札は7枚、多いかなと感じるが、山札が50枚だと考えると妥当な数字だとも思える。
ターン開始時に山札から2枚ドローする。 これに関しては多い気もするのだが、このゲームにはマリガン (初期手札を任意の数山札に戻してシャッフルし、戻した分を再度ドローし直す事。)が存在しないため、手札事故防止の対策だろう。 まあ事故る時は事故るって元の世界の友人が言っていたが。
召喚が可能なのは1ターンに1度、1体しか出せない。 そしてここからが手札が多く必要な理由となる。 召喚に必要なコストはカードの右上にあるのだが、このコストというのが手札を使うので、
例えばコストが2なら手札を2枚捨てた上での召喚になるのだ。 なので手札の消費が物凄い事になる。 実際にスターターデッキを見てみたら手札補充のカードが大体2割位入っていた。
ちなみにコストを消費しての召喚なのだが、手札を消費するだけの召喚方法が出来るのは「3」までで、「4」以降は手札を含めて、フィールドと呼ばれるモンスターを呼び出す場所に出ているモンスターを1体をコストに捧げた上での召喚が出来るようになる。 それだけ強力な分、捧げるものは多くなるという事だ。
もちろんモンスターだけの殴り合いだけなら消耗戦になるのは必然なので、当然ながら「魔法カード」というものが存在する。 手札から使えて、コストの支払い方法も手札からのものだが、こちらは最大でも「3」までで、基本的には自分モンスターの強化、相手モンスターの弱体化、後は先程説明した手札増強にフィールド全体に影響を及ぼす広範囲魔法がある。 魔法カードを出せるタイミングに関してなのだが、相手モンスターの弱体化以外では自分のタイミングで手札を消費して出せる。 これが中々の曲者でもあったりする。 タイミングがズレるだけで優越が決まると言っても過言ではない。 ここが戦況を左右するだろう。
勝敗の付け方はライフ制で30個のライフを無くしたら勝敗が決まる。 ちなみに相手にライフを与える方法としてはモンスター同士で戦わせて自分のモンスターの攻撃力が相手のモンスターの体力を減らして、 その差分が相手、もしくは自分に入る。 体力によっては1回では削りきれない事もあるので、それも戦略として入れるのもありだろう。
そしてこのゲーム、手札の消費が多いので山札も馬鹿にならない位に減っていく。 そうなってくると、普通のカードゲームなら、次に引くための山札が無くなると負けになる「デッキ切れ」という勝敗の付け方が存在するのたが、「サモンコール」ではそれを想定してるため、山札が無くなった場合、コストや倒したモンスターなどが落ちる「破棄場」と呼ばれる場所から全て山札として回収し直す。 もちろんシャッフルして戻ってくるため、次のカードが必ずしも最初に捨てたカードになるとは限らない。
これらのルールに基づいて、ゲームを進行していく。 それがこのゲームなのだ。
と、まあここまでを自己解釈で進めてきたが、要はやるかやられるかと言った具合なのが既存だろう。 新しい王様になってから3年程ならルールが作られ始めなので、まだ難しいルールを適応してないのだろう。 齧った程度だが、色んなカードゲームをやってきた俺だからわかる事で、まだこの国の王様は気付いてないのかもしれない。 このままの状態だと衰退の糸を辿ると。
「ならそれを引き合いに条件交換するのも悪くないかもしれないなぁ。 クリマやリューフリオの時は無条件でやってもらったようなものだし。 お互いに利益になるような事じゃないと交渉にならないもんな。」
「何をぶつくさと言ってるのよ飛空。」
お風呂上がりで湯気を身にまとい、血行が良いのかほんのり肌が赤みがかっている鮎が宿屋の部屋着姿でこちらに話しかけてきた。 分けるのも面倒だったので同部屋にしてもらったが、少し判断を謝ったかもしれない。 だって同い年の異性と二人きりだぜ? 緊張が少し高まってくるじゃないか。
あれ? でも俺アスベルガルドの時はイバラと一緒だったし、前にリューフリオでナディに起こされた事もあったような・・・? いやいや、イバラはアンドロイドだし、ナディは起こしに来てくれただけだから実質ノーカン・・・うん?
「何ひとりでうなされてるのよ。」
そんな様子を不思議に思ってか、鮎が俺の顔を覗いてくる。 それと同時に、ここの宿の部屋着が少し大きめなのか、少しダボついた服から鮎の胸の谷間をチラリと覗いてしまったのでそのまま視線を逸らす。
「別に? ちょっと考え事をしてただけさ?」
「・・・私の方を見て話してよ。」
ごもっともな意見だが、正直今の鮎の体勢が非常に俺の脳を刺激するため、出来るなら体勢を立て直してからにして欲しいんだけど。
「鮎も見ておきなよ、これ。 なんか明日の王様と会うのにこれが絡んできそうだからさ。」
「それは別にいいんだけどさ。 私、意外と直感で動くタイプよ? 習うよりも慣れろ精神の方が強いのよね。」
それなら俺だって直感タイプなんだけどもな。そんな事を考えつつも、カード達を上から下までしっかりと見ていく。
そんな事をして30分程で、自分がお風呂に入ってない事に気付き、備え付けのお風呂に入る事にした。
シャワーと浴槽が一体となっているユニットバスのような形になっていたので、体を少し清潔にした後、浴槽へと入る。
「ふぅ・・・さてと、ここではどんな事が起きる事やら。」
連日考えまくっているため、そろそろ頭を休憩させたい所ではあるのだが、性格柄そうは問屋が卸さないようだ。 そんな事を改めて思いながらため息をつく。
「飛空、入口近くに服、置いておくわよ?」
「ああ、ありがとう鮎。」
寝る時間が近いのか、随分と準備がいい。 まあよくよく考えたら部屋着を持ってきてないことを忘れていたので助かったと言えば助かったんだがな。
風呂から出て、部屋着を着て、さあ明日の為に寝ようかなと部屋に戻ると、
「・・・あ、ごめんね飛空。 ちょっとだけ待って・・・」
寝る準備をしていた鮎がどこか艶めかしい様子で布団の中にいた。 モゾモゾとしていて掛け布団があるため、何をしているのかは分からない。
「・・・んっ・・・いいよ・・・。」
そう言って自分が入っている布団を開けてくれる。
本来ならこのまま入ってもいいのだろうが正直な事を言えばそうはいかない。 理性を最大限に保ちつつ、鮎の布団に近づいて、顔を覗かせる。
「悪いな鮎。 俺達は確かに付き合っているけれど、「そういう関係」になるのはまだ早いと思うんだ。 色々と準備したみたいだけど、今は出来ない。 すまん。」
そう言って謝る。 すると鮎は、
「・・・ぷっ・・・はははははっ・・・ ごめんごめん。 ちょっとやってみたかったのよ。 こういうこと。」
先程までの艶めかしさから一変、いつもの鮎に戻る。
「いやぁ、こういうシーンをよくドラマとかで見るけど、やっぱり飛空は飛空だね。」
「試したのか? 俺を。」
「そういう訳じゃないよ。 というかぶっちゃけ私もよく分かってないのよね。 「そういう関係」について?」
なんだよ。 どっちみちしないって事だったのかよ。 なんか妙な雰囲気に流されちゃったじゃないか。
「だからごめんって。 明日も頑張るんでしょ。 私ももう寝るから。 おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」
そう言ってもうひとつの布団に入る。 眠たかったので、もうすぐに眠りに入ったが、布団同士がそれなりに距離が近い為鮎が何か小言を言っていたような気がするが、そんな事を聞く前に寝てしまった。
この後は特に何もせずに寝ています。
未成年だからということにしてください。




