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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第17章 陸続きの国達
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第169節 また検問と噴水広場、サモンコール

 劇場公演が終わり、セルトラム陛下からの依頼を受けた翌日の朝。


 俺はリューフリオから隣国へ向かうための馬車に揺られながら、次の国の資料を見ていた。


「札の国ハークダード、札とは遊戯に使われる事がほとんどであり、国民はその「札」を使っての交渉術のしてよく使用している。 もちろん子供からお年寄りまで幅広い年齢層が平等かつ納得出来るような範囲の遊びを設けている。」


 全てを「札」と呼ばれるもので管理しているとかそういうのではないんだな。 まあそれはそれで困るけどな。


「はぁ。 しかしせっかく仕事が終わったんだから帰国くらいさせてくれたらいいのになぁ。 これで俺、またしばらく帰れないんだけど。」

「いいじゃない。 ほぼほぼタダで海外旅行してるって考えたら「帰りたい」なんて贅沢もいい所じゃないの?」


 そうは言うけどなぁ・・・ホームシックになる事だってあるんだぞ? 曜務にある寮や家も正確に言えば「実家」ではないけどな。


 そう俺の不満を返してきたのは 山本 鮎だ。 白羽はリューフリオにて、お別れをして、代わりに鮎がやってきたのだ。 パートナーが入れ替わり制ってどうなんだろうね?


 リューフリオの街から離れ、自然豊かな森を走っていると、目の前に相応しくない建造物が現れた。 察するに検問だろう。 待ち構えていた門番に止められる。


「止まれ。 ここから先は札の国ハークダードとなる。 目的とそれを証明出来るものを提示してもらう。」


「我々は音楽国家リューフリオが陛下、セルトラム・リューフリオの名の元に貴国、ハークダード国王へ同盟を結びに来た。 それに伴い我が友好国、曜務との同盟及び新たな架け橋として参られた。 これがその招待状だ。」


 そう言って馬車の騎手が門番にその招待状を渡し、それを門番が確認をする。


「ねぇ、あぁやってやり取りしてるの見てみると、全くの異世界に見えない? 私なんだかワクワクしてきたんだけど。」


 そんな騎手と門番のやり取りを馬車の窓から見ていると、鮎がそんな事を言ってくる。 まあ俺からしてみたら今でも十分別世界体験してるんだけどね。


「よし、中身を確認させてもらった。 我々にとっても損のない話だ。 通って良しとする。 しかし本日は会談が入っているので国王への訪問は明日にしてくれないか。 それとここで換金をして行ってくれ。」


 そう言って俺はリューフリオ高価であるトランをとりあえず持ってる分だけ出す。 記念として1枚の銅貨は残すがね。

 それから10分程してトレーの上に数枚のカードが置かれる。


「これが我々の国で使われるお金の代わりとなります。 こちらそれぞれ単位が違いまして、赤から順に、白、黒、茶と単位が下がっていきます。 赤が万単位、白が千単位、黒が百単位、茶が十単位となります。 単位はマークとなります。」


 分かりやすいような分かりにくいような、そんな通貨の数え方である。 カード1つが十単位で区切られているため、万単位の赤がそれなりに多くなっている。


 そんな感じで門をくぐり抜け、馬車は再度走り出す。


 そして少し馬車が走っている所を窓から見てみると、所々に木造りやレンガを積み上げたもの、鉄くずを集めたようにしか見えないようなものまで様々だったが、そこに家があった。 ここは草原に近いところなので子供達が遊んでいる所を見ると、あの子達の家なのだろう。 そんな事を思いながら馬車は先程までの草原とはうってかわってちゃんと舗装されている道に差し掛かった。 どうやらここからが中心部のようだ。


 目の前の噴水広場に子供達が集まっているが先程までの草原で遊んでいた少年たちとは違い、2人の少年が向かい合って、何かを行おうとしている所だった。


「なんだ? 何が始まるんだ?」


 気になったので馬車から降りて、近くまで様子を見に行く。


「あぁ、お兄さん。 これ以上は危ないから近づいたらダメだよ。」


 近くにいた子供に止められたので、そこで止まる。 遠目からでも見えるのは、2人の手に持っているのはカードだった。 しかも先程貰った通貨用のカードではないものを、トランプゲームをするかのように手札として持っていた。


「一体何が始まるんだ? ただのカードトレードじゃないだろ?」

「あれ? お兄さん達、もしかしてここの国の人じゃない? じゃあ教えてあげるよ! これから始まるのは今この国じゃあ知らない人はいない、それがあの「サモンコール」だよ!」


 そう少年が説明し終わると、

「俺のターン!」

 試合が始まったようだが、なにがどうなるのか全く分からない。 試合を見る前に色々と把握しておきたい。


「ねぇ。 サモンコールってどんなゲームなんだい?」

「そっか、お兄さんは知らなかったね。 これがそのカードだよ。」


 そう言って見せてくれたのは岩のような姿をしたモンスターが描かれたカードだった。 このカードだけでも色んな情報が入ってくる。


 まず上にあるのはもちろんモンスター名。 そして右上に「2」という数字が土色の円の中に書かれている。 多分属性とコストだと考える。


 そして真ん中辺りに絵が描かれていて、その下に文章が書かれている。 これがこのカードゲームにおいて、このモンスターが効果を持っている事と、その条件により起こる効果なのだろう。


 最後に右下に「2/5」と数字が書かれている。 このモンスターの攻撃力と、多分体力だろう。 そんな訳でひと目でとりあえずの情報は手に入った。


「へぇ、中々に作りがいいなぁ。」


 持ってみると厚紙程の硬さでとても軽い。 ちょっとやそっとじゃ折れないだろう。


「それだけじゃないんだよ! あれ見てみてよ!」


 そう言って少年が指さした先には、2人の少年を挟んで軽装の騎士とクレーン車が対立していた。 うわっ! 立体映像(ソリッドビジョン)が搭載されてるのか!


「このゲームは新しい王様になってから出来たものなんだけど、最近ではああやってモンスターが出てくるようになって、凄くテンションが上がってるんだ! お家で出来ないのは残念だけどね。」


 そう隣の少年が興奮気味に説明をする。 なるほど、今の環境はこの国にとってはめちゃくちゃいい方向に進んだんだな。

 そんな事を考えていると、右側の少年がモンスターを召喚した。 召喚したモンスターは手の肘辺りに何かを付けている以外は普通のモンスターが出てきた。 そしてそのモンスターは出されたと同時にその場でダランとしてしまった。


「私がずっと見てるけど、出したモンスターはああやって、何故かやる気がないみたいになっちゃうのよね。」


 隣の鮎が観戦状況を説明してくれた。 召喚した後にすぐにダランとしてしまう。 攻撃体制じゃない・・・


「・・・・・・召喚酔いか。」

「召喚酔い?」

「そうだよ。 お姉ちゃん。 このゲームのモンスターは召喚した時は相手のターンにならないと攻撃体制にならないんだ。 だからどれだけ強いモンスターを出しても、直ぐには攻撃できないんだ。」


 召喚酔いがあるなら先行で速攻で攻撃は不可能って事だ。 ちゃんと出来てるなぁ。


「あ、今度はあのクレーン車が攻撃するみたい。」


 クレーン車が軽装の騎士を攻撃使用とすると、騎士の方に緑色のオーラが現れて、クレーン車と互角にやり合っていた。


「へぇ、攻撃力を上げる魔法か。」

「うん。 逆に相手のモンスターの攻撃力や体力を下げるのもあるんだけどね。 お兄さんこのゲームの事初めてなのによく知ってるね。」

「ん? ああ、まあ前にいた場所でよく似たようなのをやっていたからね。」


 元いた世界で友人と色んなカードゲームをやっていたからな。 齧った程度だけど。 それのお陰か似たようなカードゲームなら大体どんな状態になるかは把握出来るのである。


「そう言えばここの王様ってどんな人なんだい?」

「僕が7歳の時、あ、今は10歳なんだけど、その時ににおういけいしょう? っていうのがあって王様だった人の子供が王様になったんだ。 その人が王様になってから直ぐにあのゲームが出来たんだ。」

「そうなのか。 いや実はね、俺達はその王様に用事があってね。 事前に知っておきたかったんだ。」

「王様に用事? どんな用事なの?」

「それは言えないなぁ。 国と国との内緒の話だからね。 ごめんなぁ?」


 そうあしらって目の前のカードゲームを見ていた。 後であのカードゲームを買っておくか。 なんかバトル的な何かになった時のために。

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