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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第16章 曜務電脳統合学園2年生
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第153節 帰省と依頼、「みんなと同じ」

 入学式。


 それは新たなる生活の門出。


 今までに見たことの無い知識をその手に掴み取る。 それを学ばせてくれる学校に心を踊らせ、新たな仲間と共に中学では出来なかったことを出来るようになる。 そんな大掛かりなイベント。

 思えば、俺がこの世界に来てから本当の意味で1年が経ったことを知らせるものでもある。


「どうした? 飛空。 そんな遠くを見るような表情をして。」


 黄昏ている所をエレアに突っ込まれたので、我に返る。


「ごめんごめん。 でもそうか。 もうそんな季節なんだな。」


 我ながらしみじみとしている。 まだ玄関先だと言うのに後輩達の声がかなりの大音量で聞こえてくる。 こりゃ元気っていうかただただやかましいだけだぜ。


 そう思いながら玄関から入る。 すると丁度終わったタイミングだったのか、何人かが食堂の方から出てくる。 確かに誰も彼も見たことない顔ばかりだ。


「いやぁ、すげぇ楽しみだよな!」

「ほんとほんと! 明日からもう実践するんだもんな!」

「ねぇねぇ、どんな武器になった?」

「あ、それ、明日までは喋れないんだよ?」


 と言った具合に男女の後輩達であろう学生がそれぞれ男子寮と女子寮で分かれていく。 うんうん。 みんな好奇心旺盛でよろしいこって。


「じゃ、俺達もアイツらの所に・・・」


 ギュルルルル・・・


「・・・行く前に飯行くか。」


 帰ってきてから食べ物を食べてない事を思い出して、エレアと一緒に食堂に行く。 そして電子生徒手帳を使って発券をして、食堂のおばちゃんに渡す。


「あら! 久しぶりね! 元気してた?」

「ええ、そちらもお変わりないようで。」

「これからもよろしくね。 それじゃこれを持っていきな。」


 そう言ってうどんの入った器を渡される。 エレアも同じものを用意してもらい、適当に席に座る。 知り合いが居ないのは、食べた後だからか、そもそも要らないのか。 とにかく2人だけで食べることになった。 ちなみに他の後輩達もチラチラとはいるが、恐らく全体の10分の1もいないだろう。


「ま、色々とあるから、ここに留まるだけじゃないか。」


 そう思いながら食事をしていると、


「あ、あの!」


 なんかデジャブ感を感じる声のかけられ方をされたので声の方を向くと、4人ほどの男女がそこには立っていた。 かなり緊張しているのか、体がガチガチだ。


「も、もしかして生徒会の一員で学校交流会で優勝した津雲 飛空さんですか?」


 目の前の代表であろう女の子が俺にそう質問をしてくる。


「ああ、そうだけど?」

「やっぱり! 凄い凄い! 早速有名人に会えた!」


 有名人って・・・ そんなになのか? 目の前の4人がはしゃいでる所を見るとどうもそうみたいだな。


「あの! 私達! 飛空先輩の事を知って! この学校に入りました! 先輩は生徒会から実力が認められてスカウトされて、円商高校との合同で開催した学校交流会で代表になって優勝して、ここの寮にお手伝いアンドロイドを取り入れた人なんですよね! その動きに! 私達は心動かされて! 先輩のようになりたいと! 必死に頑張りました!」


 目をキラキラとさせながら話す女の子に圧倒されながらも話を聞いている。 というかなんか内部事情が大分公になってる気がするんだけど。


「えっと、それはそうなんだけど、あっと・・・」


「あ! すみません自己紹介が遅れました! 私は狩屋 奏香(かりや そうか)と言います! ほら、みんなも自己紹介しよ!」


「あ、えと新美 蒼人(にいみ そうと)っていいます。 よろしくお願いします。」


「ぼ、僕は、和田 冬斗(わだ ふゆと)、です。 よ、よろしくです。」


「あわ・・・わ・・・私は・・・阿東 茉莉萌(あとう まりも)・・・です・・・。」


 えっと目の前の茶髪ロン毛が狩屋で、青髪の芝生頭が新美、目を逸らしている白天パが和田、後ろで隠れちゃってる深緑のおかっぱ頭が阿東か。


「よし、みんなの名前は覚えた。 それで、そんな4人がどうして俺の所へ?」

「先輩に折り入ってお願いがあるのです!」


 そう聞くと狩屋が前のめりにこちらに寄ってきた。 エレアもいるので少し自重はして欲しいんだが。


「私達を強くしてくれませんか?」


「・・・うん? 言ってる意味が理解出来ないんだけど・・・?」


「私達は今回の武装適正検査で普通の武器が選ばれなかったのです。 私達は同じ学校から来ているのでみんな同じ悩みを抱えているんです。」

「なるほど。 つまり君達の適正武器だと周りに遅れを取りそうだから直々に指導して欲しいと。」

「無理なお願いだとは思っています。 でもせめて見てもらうだけでも出来るかなと思いまして・・・」


 狩屋はその後みんなを見て、俺を改めて見てから、頭を下げて、


「お願いします! 私達を鍛えて下さい!」

「うん。 別に構わないぞ?」

「そうですよね。 やっぱり・・・え?」


 多分断られるのを前提で話が進んでいたんだろう。 狩屋が驚きの表情で俺を見る。


「俺は別に特別な人じゃないんでな。 後輩の頼み、もとい生徒会として君達の依頼を承ろう。」

「あ、ありがとうございます!」


 そう言って狩屋を始めとした4人は頭を下げる。


「ただし、みんなの武器がどんなものなのかは明日の始業式後のレクリエーションで確認する。 だから今は戦い方を教えられない。 後、優先順位は君達が上になるけれど、特に他の後輩を贔屓する訳じゃないってことも分かってくれ。」

「はい! 本当にありがとうございます! それでは私達はこれにて失礼します!」


 そう言って4人は食堂を去っていく。


「飛空、ほんとに良かったのか? お主は旅から帰ってきた所なのだぞ? ゆっくりすれば良いのに。」

「まああそこまで慕われちゃあなぁ。 期待を裏切る訳にはいかないだろ?」

「相変わらず休むという事を知らんようじゃのお主は。」


 ほっといてくれ。 そういう性分だって事はこっちの世界に来てから分かったことなんだよ。


「だがわらわはそんなお主を好きになったのだ。 お主が倒れぬように見るのもわらわたちの仕事じゃ。 休みたくなったら存分に休めば良いからの? 無理だけはせぬようにな。」


 そう言って頬にキスをされる。 エレアの笑顔と元気な姿を見るだけでも癒しになってるから充分なんだよな。 そう思いながらエレアを見ていたら、急にエレアがモジモジし始めた。 彼女らしくない行動だったので首を傾げてしまう。


「の、のう飛空? お父様がわらわたちを婚約者同士にしてくれたではないか?」

「半ば無理矢理な気もしたけど、まあそうだな。」


 急に言い始めた時は流石に驚いたけどな。


「な、ならばわらわも、もう子供ではないから、み、みなと同じ事をしてもいいと思うのじゃ。」

「みんなと同じ?」


 そう言ってエレアは目を瞑り、待っていた。 これを見てすぐに分かった。 「みんなと同じ事」という意味が。


 待たすのも悪い為、エレアの肩をなるべく優しく触る。 「ビクッ」とエレアの肩が震えたが、覚悟を決めたようでその後は何事も無かった。 俺も少しずつエレアと顔を近づける。 5cm、3cmと近づき、そして


「エレアもいよいよなのね・・・。」

「ちょっ・・・どうなっとるんや。 見えへんやん。」

「ちょっと! そんなに押さないでよ!」

「君たちはいいじゃないか。 僕らだって見たいんだよ。」

「みんな、そんなに押したら・・・きゃあ!」


 そんな声が聞こえて「ドサドサドサッ」となにかが倒れる音がしたと思ったら見慣れた顔がわんさかと出てきた。


「い、いたのか!? お主たち!」


 そのエレアの言葉に倒れ込んだみんなは気まずそうに目線を逸らす。


「・・・いつから居たんだ?」

「新入生の子達が出ていった辺りから?」


 俺の問いにイバラが疑問形で答える。


「それなら早くこれば良かったものを・・・」

「私は早く合流したかったのよ? でも・・・」

「雪定が「こんな機会そうそうないからせっかくだし」っていうから・・・」


 つまり普通に好奇心に負けたってことでいいのか? ほんといい趣味持ってるよな。 人のこと言えないけど。


「まあ、しばらくはここにいるんだよね? 今年の1年の武器でも見てみないかい?」

「雪定、話を逸らそうとしてるのが見え見えだぞ?」


 そう言って吐息をもらす。 まあ次の国でどの位の期間いるか分からないから、こういう時でもないとここにいるメンバー全員と交流なんて出来ないからな。 休息として今は利用させてもらおうかな? 大臣には何気に感謝しなきゃな。

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