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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第15章 電脳が交じりあった世界
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第152節 民族衣装と引ったくり、騒がしい寮

「うむうむ。 似合っておるぞ飛空。 これでお主もこの国の一員だ!」

「私の着なくなった服が丁度いいサイズになったようだ。 少しでも不満があれば言ってくれよ?」

「そんな事は言わないさ。 でも借りる事になっちまったけどありがとうな。」


 俺が今着ているのは、この国の代表的な衣装らしく、赤色で上から羽織る感じの服なのだが、どことなく地球のインド人が着てる服と似ていた。 確かサリーって名前だったっけ?


 そもそもの経緯としては、王子との決闘の後、公園で体操やらジョギングやらで来ていた人達が俺たちを好奇の目で見ている事から始まり、最初はエレアとワーライド王子がいる事なのかと思ったが視線は2人ではなく俺に当てられていたことから「あれ? 俺もしかして、この国の人と馴染めてない?」と感じたのがきっかけだ。


「そう言えばここに来る観光客はみなこの衣装で過ごしてもらっているのを忘れていたぞ。」

「ここの国のことを知ってもらうために、他国から来た者達も着てもらって気分から味わって貰うのが目的なのだが、君との決闘の事で頭がいっぱいだったよ。 配慮に欠けていた。」


「もう過ぎたことだしいいではないか。 飛空殿。 済まないがもうしばらく時間がかかりそうだ。 なにぶん我々も慣れない作業をするものだからね。」

「仕方ないですよ。 まあ焦らずゆっくりやって下さい。 交渉は済んでるんですし。」

「そう言って貰えると助かる。 出来次第確認してもらうから、それまではエレアとワーライド王子と一緒に観光を楽しんできてくれたまえ。」


 この国の事を知るために街へと繰り出す。 しかしこうやって同じ服装にすると、一国の王子と王女だって一目じゃ分からないものだな。


「しかしなんというか、改めて見てみるとみんな生き生きとしてる感じが凄いな。 国全体が明るく見えるぜ。」

「みながやりたい仕事をしているのだ。 こうなるのも当たり前だ。 あるものはあのように出店を出したり、またあるものは他国が好きだからみんなに知ってもらいたいと、わざわざ別国まで遠出してそこで情報誌などを購入して、それを売っているものもいる。 そこに知らぬ知識があるならそれを欲するのは人間の性だろう。」


 そうワーライド王子が説明をしてくれる。 オーバーリアクションだけど。 それでよく国が回ってるとも言えるとも捕えれる。


「わらわたちは国の利益よりも国民の自由を尊重しておる。 それに国民が尊敬の念としてわらわたちに色んなものをくれるのじゃ。 より良い国の繁栄のためにの。 少し過剰な気もするがの。」


 民族国家ってそんなものなのか? それともこの国独特の感性? とにかく不思議な力で国が回ってるのはよくわかった。


「なのでこの国の事を知らぬ他国の人々も少なからずいるのだ。 どうしてもな。 だからそのような・・・」

「ま、待ってくれぇ! それを持っていかないでくれぇ!」


 その声に振り返るとこちらに向かって走ってくる人影と、倒れ込んでいる老人がそこにはいた。 おいおい、引ったくりかよ。


「へへへっ! こんな頭がお花畑の街でむしろ取られないと思ったのかよ! ほんと・・・あっ!?」


 何かを言いながら去ろうとしていた引ったくりの左腕をワーライド王子が掴む。 引ったくりも急な事で理解が追いついていないようだ。


「あんだよ! 離せよ!」

「離すわけが無いだろう? 人から物を盗んでおいてよくそんな言い草が放てるものだ。」

「あ!? 盗まれるような事をしてるから悪いんだろ!? この国には危機感ってのがねぇのかよって位、取りやすいようにしてんだからな! そんなのどうぞ取ってくださいと言ってるようなもんだろ!?」


「いや、その理屈はおかしいだろ。 それと自分が窃盗したことに接点が無いじゃないか。」

「はっ! 決まってんだろ? この国はな、治安がいいんじゃねぇんだよ! 平和ボケしてんだよ! だからこうでもしないと分かんないだろ!? お偉いさんはよぉ!」


 引ったくりの理不尽な言い訳に俺が突っ込むと、それに対して反論してきた。 威勢はいいな、こいつ。


「ほぉ。 では貴様の目は節穴のようだな。 今のこの周りの雰囲気を見ても同じ事が言えるのか?」


 そう言った後に引ったくりは周りを見る。 するとそこには俺達を中心に街の人々が集まっていたのだ。


「な、なんだよこいつら・・・ いつの間に集まったんだよ!」

「ここの国のものでは無さそうなので、教えてやろう。 我々の様な王族が何かをしなくてもここの者達は動くのだよ。 例えそれが自分達の利益になり得ないものとだとしてもな。」

「その男から荷物を取り替えすんだ!」


 そう言って屈強な男達が引ったくりを取り押さえる。 そして別の人が引ったくりをロープで丁寧に拘束していく。 荷物も元の持ち主に戻り、これでめでたしかな?


「・・・へっ! テメェらやっぱり平和ボケしてんじゃねぇか! 今のご時世なぁ! こんなロープ如きじゃ捕まえたって言わないんだよ!」


 そう言って引ったくりの手にはナイフが握られていて、手首、足のロープを切り、そして体のロープにナイフを突きつける。 あの感じだと、多分電脳世界のナイフだろう。 あんなにギチギチに縛られてるのに取り出せる訳が無いからな。


「ほんとに間抜けだなぁ? ほら、こんなに簡単に抜け出せるババババババ!」


 あ、体のロープ切ってなんか言おうとしてたんだろうけど、俺のスパークガンのヒットの方が早かったな。 悪いね。


 その後すぐに「ロープリング」を構えて、引ったくりを今度は切れないロープで拘束する。


「あ!? あんだよ! これ!? 早く解きやがガガガガ!」

「むう、しぶといな。 そろそろ観念しないとでかいのを1発・・・」


 そう言って片手散弾銃を出した所で、


「飛空、それはやりすぎになるぞ?」


 銃を構えた右腕をエレアに止められる。 分かってますって。 ほんとに撃つと思う?


「今にも撃ちそうな顔はしとったぞ?」


 おっと、それは気を付けないとな。 まあ事実目の前の引ったくりは泡を吹いて気絶している。


「必ずしも平和ではないという事だが、我々が動くような事でもないという事だ。」


 凄い国だなここは。 そんな一悶着はあったが、その後は普通に国を観光した。 王子王女だと分かった時の国民の反応は異常だったけどな。


 ある有名映画のワンシーンの聖地だったり、自然から出来た由緒ある自然建築物だったり、ここの国の特産物を使った料理を食べたりと (ちなみに麺料理だった。)アスベルガルドと同じ位に観光を楽しんだ。 もちろんそんな楽しい時も終わりはやってくる。


 観光3日目の夕方頃、ようやく完成したとこの事で宮殿に戻ってきた。


「時間がかなりかかってしまって済まなかった。 この端末に我々の国 「クリマ」の情報が入っている。 これでこの国ともテレポーターで来る事が可能になった。」

「ありがとうございます。 これは直接僕が持っている訳にはいかないので、大臣にちゃんと保管してもらいます。」

「のうのう。 また次に来れるのは何時になるのかの?」

「まあ、いつでも行けるわけじゃないからなぁ。 でもそんなに長い期間じゃないと思うぜ?」

「今度はみんなで来ようぞ!」

「ははっ。 そうだな。」


 エレアの満面の笑みにこちらも笑みが零れる。


「今回は私は行けないが、近いうちにそちらの国にお邪魔する事になるだろう。」

「その時は俺達がこの国を案内してやるよ。 王子の方が良ければな。」

「あぁ! 他国から来た使者と一国の姫を奪う戦いをした後、お互いを分かち合い、友情を越えた何かが芽生えた! これもまたひとつの偉大なる(ストーリー)!」


 最後の最後までオーバーなやつ。 こっちに来る時には少しは治しておけよ?


「お父様、またわらわは曜務に戻るぞ。」

「あぁ。 これで何時でも来れるようになったから何時でも戻ってきなさい。 私達は待っているからな。」

「うむ!」


 エレアとコレン侯爵の別れのハグを見た後に俺とエレアはテレポーターをくぐる。


「お疲れ様です。 大臣。」

「うむ。 お疲れ様、飛空君。 次の国にコンタクトを取るのに時間がかかっているから、また出来次第連絡をする。 その間は学業に専念出来ると思うよ。」

「ありがとうございます。 それじゃぁ、学校に戻るか。」

「そうだの。 みんなにも会いたいしの。」


 エレアがそう言っているので早速国会議事堂 (多分本当は違うのだがもう似ているからそういう事にしておいてる)から出て学校の寮に向かう。


 そして学校の寮に着いたところで少し違和感を持つ。


「あれ? なんか寮が騒がしくないか?」


 そう、陽が沈んでいるため寮から光が漏れてるのは分かるのだが、それにしては少しうるさく感じる。


「なんだろう? なんかあるのは分かるけど・・・」

「あ、飛空、おかえり。」


 玄関に入ろうとした時にイバラに挨拶される。 夜分遅くまでご苦労様だよ。


「なぁイバラ。 このうるささはなんだ? なにが起こってるんだ?」

「それが、お客さんとかじゃなくて、みんなと同じ制服を来てたけど「ここが寮か」とか言ってた。」

「・・・ん? そう言えば今日って・・・ あぁ、そうか。」

「なにか分かったのかの? 飛空。」


 俺は思い出した。 今日がなんの日で、どういう日なのか。


「今日は入学式だったんだな。」

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