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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第14章 脅威は突然やってくる
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第131節 遊園地と手作り弁当、観覧車

 寒かった時期が終わり、徐々に暖かさが出てきたそんな春の入ったかのような季節。


 先週は色々あって予定が組めなかったが、今週末は予定が組めたので、今日は瑛奈との時間である。


 時刻は9時半。 寮から近い駅のホーム 待ち合わせ時間は10時なのだが、早く来ることに損は無い。


「さてさて今日はどこに連れていかれることやら。」


 最近あっちこっちに行っている気がする。 なかなか自分がじっとしてられない体質なのは知っていたが、ここまでだとは思っていなかった。 まあそれもある意味いい経験になったるのかもしれない。


 あのお告げから1週間が経った。 正直ここまで言うほど進展がない。 このまま何も無いまま行くのは予知神の予知とはかけ離れる。 だが、どちらにも動きがない以上、下手には動けない。 未来とは予期せぬ出来事によって変わりやすいのだ。 いや、ここでの準備万端の体制に持っていく為にはなにか俺が動く必要があるのか?それなら合点が行くが生徒会の人間ではないのなら俺はただの一生徒だ。 そんな戯言のような話を国家 (?)権力が動くほどになるだろうか? でもなぁ・・・


「あの・・・飛空・・・さん?」


 考え込んでいると名前を呼ばれたので声のするほうを向くと、そこには春先ファッションだろうか? 淡い桃色のYシャツに緑色のロングスカートを身にまとった瑛奈がそこにはいた。


「ああ、おはよう瑛奈。 あれ? もう集合時間だった?」

「いえ・・・そういう訳では・・・ないですよ? ただ・・・早く来たら・・・飛空さんが・・・もう来て・・・いたので。」


 ホームの時刻を見ると集合時間の15分前を長針は指していた。 ありゃ、お互いに早く来た感じになったのね。


「まあいいか。 それは特に気にすることではないか。 所でその手に持ってるものは?」


 瑛奈の持っている巾着に包まれた四角い物が気になったので聞いてみることにしてみる。 いやこういう時のそういうものは何かは分かってはいるのだが念の為ね。


「あ、これは・・・お弁当・・・です。 久しぶりに・・・会うので・・・頑張って・・・作って・・・みました。」


 ほぉ。 これがよくアニメとか小説とかに出てくる「思春期男子の憧れる女の子の行動」で不動の上位にランクインしている「彼女お手製弁当」ってやつか。 これは楽しみですなぁ。


「それじゃあ、瑛奈も来たことだし、早速行こうか。 どこか行きたい場所ってある?」

「あ! それなら・・・遊園地に・・・行ってみたい・・・です。 修学旅行でしか・・・行ったことが・・・なかったので・・・と思ったので。」


 なるほど、それなら楽しめるしお弁当も食べれるね。 そういう訳で、モノレールに乗って、ここら辺では大きめの遊園地へと目的地を定めていざ出発。


「ふんふふんふーん♪」


 瑛奈が鼻歌を歌っている。 相当ご機嫌のようだ。 瑛奈は学校が違う故になかなか会うことが出来ない為、こういう機会は貴重なのだ。


 そしてモノレールに揺られること30分。 目的地の遊園地の最寄り駅に着いた。 俺達が着いた時間はそんなに早い時間ではなかったが、かなりの人で溢れかえっていた。 子連れの親子も多ければ、俺たちと同じようなカップルが多いようだ。


「遊園地ってやたらとその手の人達が多いよな。 やっぱり普通に男だけで行くのとは訳が違うね。」

「賑わって・・・いますね・・・。」


 そりゃ賑わってなかったら遊園地として終わってるだろ。


 入口までかなり時間をかけたが、なんとか入ることが出来た。 入場料を見た時に「男子割り」というのがあった。


 普通は家族割とか、カップル割なのだろうが、そんなのはこの遊園地では見慣れているのだろう。 後は悲しみを背負ったような男子を少しでも和らげるためなのだろう。 ま、俺には関係ないけどな。


「時間が・・・かかっちゃい・・・ましたね。」

「まあそんなものだろう。 さてと、何から行こうか?」


 その後は普通に遊園地を楽しんだ。 30分並んで乗れたジェットコースターとか、ファンシーなコーヒーカップとか、後は不思議な館とか色々とアトラクションを乗ったりしたもんだ。 射撃ゲームもあったのだが俺が曜務学園の人間だと言ったら入店拒否されてしまった。 あらら。


「なんか前にも同じことがあったような気がするんだよなぁ。」

「射撃系は・・・出来なさそう・・・ですね。」


 まあそれも仕方ない事か。 そんなこんなで時間が過ぎていって、お昼頃になったため、邪魔にならない所の花壇の堀で瑛奈の持っていたお弁当を食べる事にした。


「少し・・・料理から・・・手を引いて・・・いたので・・・自信が・・・ないです。」


 そういう瑛奈を尻目にお弁当箱を開けると、麦米と梅干しがまずは入っており、おかずがアスパラベーコンがあり、玉子焼きは綺麗に入っており、ナポリタンがあって、残ったスペースに市販のゼリーがあった。 ちなみにアスパラと言ったが形が似ているだけで、本来の名前ではない。 分かりやすくするためにね。


「ど・・・どうです・・・か?」


 瑛奈が不安そうな顔と声を出しているがこれだけでも十分な高得点だよ?


 どれも手の込んだ料理なだけにどこから行こうか迷うが、こういうのは玉子焼きから行くのがベターかな? 少し大きかったので箸で切って口に入れる。 モグモグ・・・ゴクンッ


「うん。美味い!」

「ほ、本当ですか? 良かった・・・」


 ホッとしたように自分のお弁当に手を付ける瑛奈。 玉子焼きは少ししょっぱい味付けだったが、俺はこっちの方が好みだ。 人によっては甘い方がいいって言うけど。


 次にアスパラベーコン。 これも中々に美味かった。 味付けが場所によってまちまちだったがそんなのは許容範囲内だ。 麦米と合わせるといいコンビネーションになる。


 最後のナポリタンがこれまた好みの味付けになっていて、懐かしさすら感じ取れた。 他の子の手料理とかをまだ食べたわけではないのだが、瑛奈は腕を上げればもっといい所までいけると思う。


 そもそも軟瑠女子って健康を扱うような場所だから当たり前なのかもしれないけれど、それでもこれは瑛奈の努力の賜物だろう。


 ゼリーもしっかりと平らげてお弁当箱に蓋をする。


「ご馳走様でした。」

「はい・・・お粗末さま・・・でした。」


 そんなやり取りを終えて満腹感の余韻に浸ったあと、


「さて、遅い昼食にはなっちゃったけど、まだ時間はあるから、なんかこの遊園地の名物らしい観覧車にでも・・・」

「あ、飛空さん・・・待って・・・下さい。」


 瑛奈に呼び止められ振り返ると、瑛奈にティッシュを持った手で口を塞がれた。 いや、口周りを拭いてもらったの方が正しいな。


「すみません・・・口周りが・・・汚れて・・・いたので。」

「い、いや。 助かったよ。」


 い、いかん! 元々そんなに身長が高くない瑛奈から口周りを拭いてもらったのはいい。 その後上目遣いで謝罪するのは反則でしょ! その仕草に不覚にもドキッとしてしまった自分がいた。 俺も案外チョロいのかもな・・・。


 さて、長い時間並んだ観覧車は下から見上げるにはあまりにも大きく、正直てっぺんが見えない。


「お次の方、どうぞ。」


 店員さんに呼ばれてゴンドラに乗り込む。 そしてドアを閉められた後。


『こんにちは。 この観覧車から見える景色はとっても綺麗だからぜひ楽しんでいってね。』


 コミカルなアナウンスが流れて、ゴンドラはゆっくりと回る。


「この観覧車ならどんな景色でも見れそうな気がするな。」

「とても大きい・・・観覧車です・・・からね。 見えるかも・・・しれないです・・・ね。」


 それを最後にゴンドラが4分の1位まできた辺りまで会話が続かなかった。


「飛空・・・さん。」


 口を開けたのは瑛奈からだった。


「こうして・・・2人きりで・・・会う機会は・・・私はとても・・・少ないです。 ですので・・・寂しい時も・・・あります。」


 瑛奈がとても哀しそうに語り始める。 学校が違うだけ、それだけでも本人にとっては辛いのだ。 こうして優先的に瑛奈と一緒にいることをお願いしている。 でも彼女にとっては足りないものばかりだろう。


「私だけ・・・皆さんと・・・遅れてる気が・・・するんです。 だから飛空さん・・・」


 そこで、一度行き詰まったがやがて俺をもう一度見て、


「わ、私に・・・キスを・・・してくれません・・・か?」


 顔を赤く染めながらそう言った。 それに対し、俺はフッと笑い、瑛奈に近づき肩に手を置く。 やる事が分かったのか瑛奈は目を瞑る。 そんな瑛奈の唇を自分の唇と優しく重ねる。 数秒後、唇を離してお互いを見る。 その後瑛奈は先程よりも顔を真っ赤に染めながら、俯いてしまった。


「あ、ありがとう・・・ございます。 私の・・・我が侭を・・・聞いて・・・くれて。」


 どんどん小声になっていく瑛奈。 うーんゴンドラを出るまでにはある程度戻ってもらいたいな。 自分でやっておきながら若干後悔した。


 瑛奈には寂しい想いはこれ以上させれないなと、帰り道、モノレールの座席に座り、疲れて眠ってしまった瑛奈を見ながらそう思った。

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