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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第14章 脅威は突然やってくる
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第128節 公園とピクニック、広がる景色

 寮を出てからもう2時間が経つ。 周りは山に囲まれている。 そんな中で桃野家+俺を乗せていた車は一度小型スーパーに止まっている。 俺は適当に飲み物を買ってきて早急に戻ってきた為、今は兼人さんと男二人の状況だ。 正直試合やってる時よりも空気が重く感じる。


「私もね、2人の娘を持つ身として、最初は案じていたものさ。」


 唐突な語りに身を震わせてしまった。 いかんいかん、こんな所で取り乱しては。


「でも君を見て分かったよ。 君は優しい人、それだけじゃない、双子から好きになったとしても、どちらも無下にしていない。 普通ならどちらかを取るのに、君はどちらも選んだ。 慎重かつ大胆な行動だ。」

「選べなかったって見解もあると思いますが・・・」

「それでどちらも拒否するよりかは全然いい事だと思う。 だからそんなに自分を小さく見せることなんてないと私は思うよ。」

「兼人さん・・・」


 その言葉に心が救われているように感じた。 やっぱりこういう事を見てくれている人がいるだけでも安心が出来る。


「話によれば、他にもいるらしいが、まあみんなで仲良くやれるならそれでもいいんじゃないかな? 一夫多妻制は禁止にはなってないし。」

「まだ高校生ですよ? そんな遠い先の話をしないでくださいな。」

「これは失敬、未来を見すぎていたようだ。」

「二人とも、お待たせ。 ごめんねぇ、この後()()()に行くって分かったからちょっと買い込んじゃった。」


 声の方を向くと両手いっぱいに袋を持った朱華さんと、自分達の買うものを済ませた紅梨と白羽がいた。


「よし、ここまでくればあと少しだ。 もう少しの辛抱だから頑張ってくれよ。」


 そう言って兼人さんが再度車に乗り込む、それに習って俺たちも車に乗る。 これからどんな景色が見られるやら。


 車で走らせること15分、着いたのはある公園の駐車場だった。


「父さんここ? 見せたい景色がある場所って。」

「いかにも。 まあ見てもらうのはもうちょっと歩いたところなんだけど、とりあえず中に入ろう。」


 そう言って公園へと入っていく。 話によればここは俺達の住む地域とはまた違うようで、どちらかと言えば空気が澄んでいる。 多分周りに高層ビルやらがないからだろう。 逆を言えばそれだけ何も無いとも捉えられるが・・・


「うーん。 やっぱりそれなりに人が集まっているなぁ。 良きかな良きかな。」


 そう言って大きめのカメラからカメラを登場させて風景を取り始める桃野父。 持ってるカメラは一眼レフかな?


「いつも壊してばかりの現場だからね。 自然が残ってるこの場所が本当に好きなのよ、兼人さんは。」


 俺が思っていた疑問を朱華さんが打ち消す。 爆弾での解体はロマンがあるが、そのあとは何も残らないとも言える。 そんな瀬戸際の所で働いていたら自然に任せて作られるこのような風景が綺麗に見えてしまってもしょうがないだろう。


「まだ少し時間があるな。 せっかくだから、ここいらでお昼にしようか。」

「そう言うと思って、さっき買ってきたわよ。 ほらほら、飛空君も遠慮しないで。」


 そう言われてしまっては仕方ない。 ビニールシートが敷かれた後、俺は適当な場所にちょこんと座った。 そして先程のスーパーで買ってきたおにぎりやら惣菜やらが並べられる。


「いやぁこうやって家族でこうしてピクニック気分で来るのもいつ以来かなぁ。」

「まだ紅梨達がそんなに大きくなかったくらいかしら? もう10年も経つのね。 そりゃ彼氏も出来るわ。」

「も、もう母さんはまたそうやって・・・!」

「今日は、飛空さんも、いるから、その・・・」


 朱華さんの一言に顔を赤く染める双子の姉妹。 うん、いい家族で良かったよ。


「ほんと、羨ましい家族だよ。」

「ちょっと。 なに感傷に浸ってんのよ。 飛空。」

「え? いやだって俺はある意味部外者だろ? こういうのは遠くから見てる感じで丁度いいんだよ。」

「飛空さん、らしいですね。 ふふ。」


 白羽に笑われてしまって気恥ずかしくなってしまう。 お茶飲も。


 そんな家族の一員になれたような時間を過ごして、寝転がって一休みしていると、


「よし! そろそろ頃合いだろう。 みんな、そろそろ向かおう。」


 そう言って兼人さんが歩き出す。 みんなもそれに習って後ろを歩く。 歩くこと5分、ある高台に着いて見えた景色は


「「「ふわぁ・・・」」」


 俺、紅梨、白羽の3人が息を飲む景色。 それは俺達のいる場所からでは絶対に拝めない光景が広がっていた。


 常緑広葉樹林の広がった山に、谷に出来た集落。 その集落の近くを流れる川の先には湖が出来ている。 その全てを包み込む暖かな太陽の光。 それらが全てを景色のひとつではなく、全体としてとても綺麗に映っていた。


「まあ、田舎ならではって言われてしまえばそれまでなんだけどね。」

「・・・そんな事ないですよ。 この景色は変わらずこのまま残っていて欲しい遺産のようなものです。」


 完全に景色に釘付けになりながらそう答える。 この目にこの景色を残さんとしているように。


「・・・そうか、そう言って貰えると嬉しいな。 ならせっかくだから記念撮影をしよう。この先に行くともう一段低くなるからそこでこの景色と共に撮ろう。」


 そう言って兼人さんはカメラマンを探しに行った。 といってもその辺の人に任せればいいとは思ったがそこは人のセンスに任せないのが兼人流なのだろう。


「あんなに楽しそうな兼人さん、久しぶりに見たかも。」

「今まではそんなにだったんですか?」

「写真を撮るのはいつもの事なんだけれど、まあ娘に進展があったことが嬉しいんじゃない? この子達の父親としては複雑な気持ちだとは思うのだけれど。」

「おーい。 待たせたね。 それじゃあよろしくお願いします。」

「はいな。」


 兼人さんが連れてきたのは少しお年を召した方だった。 下手な若手よりは信用出来るのだろう。


 それから俺達は所定位置に移動して見上げるようにその人の持っているカメラを見た。


「それじゃあ行きますよ。 はいチーズ。」


 カシャリと音がして写真が撮れたようだ。


「家に帰ってから現像するから次の休みの日に紅梨か白羽から貰ってくれ。」

「ありがとうございます。 今日はいい1日でした。」

「それじゃあこのまま寮まで送っていこう。 二人とも荷物は持ってきてるね?」

「寮に帰るついでに来たみたいに言わないでよ。 父さん。」

「ちゃんと、トランクに、あるよ。」

「それじゃあ帰りましょうか。」


 そう言って駐車場まで戻る。 行きと同じような席順になるかと思ったら、帰りは俺が助手席に乗ることになった。


 その理由はすぐに分かった。 車を走らせて30分としない内に、女性組は寝てしまったのだ。 朝早かったからなのか、疲れからか寝てしまうのにそんなに時間を要さなかった。


「出かける帰りはいつもこうだからね。 親子3人で寝ちゃって、まあ可愛いもんさ。」


 俺と兼人さんは後部座席で寝てる3人を見る。 うん、とても絵になる。


「ま、ここからは男二人で話し合いでもしようじゃないか。 女性がいると話しづらいこともあるだろうし。」


 そっちが目的だったりは・・・しないか。 こういう機会もないと思うし、せっかくだから先駆者の話でも聞こう。


「今朝も言ったが、君はうちの娘の他にも付き合ってる子がいるらしいじゃないか。」

「まあ普通ならそんな男に自分の娘を預けたくはないと思いますが。」

「君の場合は悩んだ末のその答えだろ? うちの娘もそうだが、他の子達にも気を配った。 それは普通では絶対に出来ない。 ただそれなりの覚悟はいるだろうがね。」

「嫌われないように日々精進していますよ。」

「それが分かればもう何も言うまい。 他の子共々、娘をよろしく頼むよ。」


 頭を下げることは出来ないだろうが、元からそのつもりだ。 誰にも迷惑はかけるつもりはない。


「まあ、その話は良いとして。」


 それでいいのか? 本当に娘達のことを思ってるのか?


「私にもいつか孫が出来るんだろうなと考えると少し緊張してしまうな。」

「・・・ソウデスネ。」

「で? どこまでいったのかね?」

「ブハッ!」


 兼人さんがいきなりそう淡々とした口調で聞いてきた。 な、なにを平然と聞こうとしてるんだ! この人は! 真面目な人かと思ってたのに。


「まあ最後までしてるとは思ってはいないが、君だって男だろう? それなりの欲望はあるはずだ。」

「なっ・・・! なにをいきなり・・・!」


「兼人さーん? 飛空君が困ってるでしょう?」

 後部座席から少し不機嫌気味の声が聞こえてきた。


「あら、朱華さん。 珍しいじゃないか車の中で起きるなんて。」

「車が揺れた衝撃で起きたのよ。 そしたらまあ、いきなりそんな会話し出すんだもの。 たまに兼人さんって()()()()()() あるのよねぇ。」

「気になったものはしょうがないじゃないか。 親としては知りたくなるだろう?」

「そっとしといてあげなさいな。 その時になった時は直接言ってくるわよ。」


 なにが()()()なのかは分かっているが、敢えて聞き流しておこう。


 そんな感じで俺が若干気まずくなりながら寮に戻ってきた。 めでたくは・・・なさそうだな。 後ろの2人は聞いてないよな?

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