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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第14章 脅威は突然やってくる
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第125節 夢の中と夢の内容、獏

 新たなポイズンノイズが現れたその日の夜。 ふと目を開けると本来あるはずの天井がない。 もっと言えば自分は浮いている感覚がある。


 この感覚には覚えがあった。 いや、もっと言えばこの世界に転移してから何回か()()には来ている。 ここは夢の世界。 そして夢の世界で「これは夢だ」と分かる明晰夢だと言う事も。 さらにこんな事をする場合はただ一つ。


「飛空さん。 あなたにお話があります。」


 声の方を向くとそこには俺を今の世界に転移した女神様、転移女神様がいた。 彼女が明晰夢を作ったのだ。 それ自体にもう疑問は持たない。


「ちょうど良かった。 俺も女神様に話があるんです。」


 俺と女神様、話すことは一緒だろうが話をしておきたいと思っていた。


「・・・そうですか。 ではまずは私の方から。 どうやら従属神は力を蓄積しているようです。」

「力を蓄えている?」

「神にも許容量というものがあります。 そんなに簡単には力を酷使出来ないし、定期的にその力を使わないとその力が暴走してしまいます。」


 風船みたいなものか。 空気を入れればそれだけ入るが、放たないと破裂してしまう。 そんな感じだろうか?


「それでその蓄積されている場所は分かってたり?」

「・・・そこまではさすがに・・・」


 ま、それは分からないとは思っていたからいいんだが。

 神の力の蓄積・・・それが爆発してしまったらこの世界はおろか他の世界にまで影響が出そうだ。 何としてもそれは止めなければいけない。


「なら俺の方からも、今回また新たなノイズが生まれました。 それに関してはいつか起こることだろうとは予測していました。 でもおかしい点があるんですよね。」

「おかしい点、とは?」


「タイミングが狙ってるかの様なんですよ。 前回も前々回も。 最初の方は仕方ないにしても3回目と4回目に至っては作為的だと感じるんですよね。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいに。」


 そう、俺が電脳世界に入るとかなりの確率で新種と出会っている。 ここまで噛み合うとなにか意図を感じてしまう。


「それは・・・」

「まあ、考え過ぎならいいんですけどね。 ただちょっと気になってしまって。」


「ここまで来ると多分相手もそれ相応の対応をしてると仮定してもいいでしょう。」

「・・・て事は俺の行動は手に取るように分かると。 神の力でこちらを常に見ていると。」

「こちらでも阻害行動は行っているのですが、そこは神同士、何かの拍子にその阻害が壊れてしまうこともあります。」


 どうやら神々の厄介事に俺は巻き込まれたみたいだな。 全くいい迷惑だ。


「それで? 俺はどうすればいいんです?」

「その従属神も後1週間もすれば神としての力は無くなります。 彼を拘束するのならそれが過ぎた頃になるでしょう。 ただ貯めているであろう神の力はどうなるのかまでは分からないですが。」


 なるべくならそれが分かった後に捕まえたいものだな。


「とにかく今の現状で動くことは出来ないって事っすよね。 ならこっちも原因追求も大事だけど、やっぱり少しでも対応出来るようにはしておかないとな。」

「それがいいと思いますよ。 干渉が出来ない私たちにはあなたがこの騒動を止めれる唯一の人材ですから。」


 ちゃっかり職務放棄したぞこの女神。 それがいい事なのか悪いことなのか。


「そうだ。 夢の事でひとつ気になることがあったんだった。」

「なんですか?」

「前に1度だけこんな夢を見たんです。 前の世界の友人が、俺だけ先に行っちまったって言ってるみたいに聞こえたんです。 「なんで俺を置いてお前は行っちゃったんだよ」だったかな?」


「・・・」

「・・・」


 女神様は答えない。 いや()()()()()()が正しいか。 お互いに沈黙してしまう。


「夢に関しては私には分かりません。 それはほかの神も同様に、です。」

「・・・やっぱりそうですか。 せめてどういう事なのかだけでも教えて欲しかったです。」

「確かに私たち神には分からない事です。 ですがそれを知る者も知っています。」

()()()()()()?」


「夢を主食とする生物。 獏です。」

「獏・・・」


 俺もその生物については聞いた事がある。 人が寝てる時に見る夢を食べ、悪夢を見た後、獏にその夢の内容を伝えると、獏がその夢を食べその悪夢は見なくなると言う。


「でもそれって架空の生物じゃなかったでしたっけ?」

「伝承には伝説の生物と標記されているので、現実には存在しませんがこういう夢の世界ならば会うことくらいは可能です。」


 なんでもありの世界、夢。 現実で出来ないならせめて夢で実現させよう。 なんだか夢在学院のモットーみたいな話をしているな。


「ただ獏にも都合というものがありますので、許可の方は私が貰っておきましょう。 次回には会えると思います。」

「ありがとうございます。 些細な事だったのですが。」

「いえいえ、我が息子のような飛空さんの願いを実現させるのも神の務めですので。」


 あなたはそういう神じゃなくね? まあ会うことが出来るなら越したことはないが。


「では今日の夢はここまでとなります。 また新しい一日を刻んで行きましょう。」

「ほんとの平和が訪れるのは、その従属神を捕まえてからになるんだろうけどな。」

「飛空さんなら出来ますよ。 神々一同、応援してるんですから。」


 壮大な後ろ盾だ事。失敗する方がむしろ難しいんじゃないか?

 意識が遠のき、瞼が再び落ちる。 次に目を開けると天井があった。 現実世界に戻ってきたのだ。


「夢を喰らう伝説の生物、獏。 俺の想像通りの生物か、はたまた違う生物なのか・・・。」


 どちらにしてもあの夢のことは気になる。 俺は決して前の友人を置いていった訳じゃない。 女神様の気まぐれ (なのか分からないが)により連れてこられたに過ぎない。 もしかしたら自分の中にある罪悪感から生まれた夢の産物かもしれない。 それは本当に直接獏に会うまでは分からないのかもしれない。


「考える事が多すぎやしないか? 今の俺。」


 電脳世界での事、神々との事、夢の事。 どれもこれも一筋縄ではいかない問題ばかりだ。 考えるだけでも正直頭が痛い。


「はぁ・・・ ほんとに解決出来るか分かんねぇよ。」

「何をぶつくさ言っとんねん? 朝から。」


 輝己の声がしたので、顔を覗かせる。 どうやらまだ眠気眼のようで、目を擦っている。


「すまんな。 起こしちまったか?」

「別に? いつもの時間に起きただけやで? そしたらお前の独り言が聞こえてくるんでな。 気になったんねん。」

「そいつはどうも。 でもま、ちょっと問題に当たっちまってな。 後々解決していくつもりだけど、頭の整理が追いつかなくてな。 悩んでいたんだよ。」

「お前さん、何かしらでいっつも迷っとんな。」


 ほっとけ。 そんだけ色々あんだよ、こっちにも。


「なあに、困ったことがあるなら話くらい聞いたるわ。 お兄さんに話してみぃや。」

「・・・全く、調子のいいやつだなお前は。」

「それが輝己の取り柄でもあるでしょ。 2人だけの秘密にしなくてもいいんじゃない?」

「そうそう。 僕達だっているんだからまあ解決は出来ないかもしれないけど、話くらいは聞いて、案は出してあげるよ。」


 いつの間に起きていたのだろう、啓人と海呂も同じようなことを言ってきた。


「もうちょっと気の利いた言葉は無かったのか? 全員言ってる事が似たり寄ったりだぜ?」

「しゃーないやん。 他に思いつかんへんもん。」

「結局僕らも似た者同士って事なんだろうね。」

「それ答えになってないんじゃない? 啓人。」


 そう言って笑う海呂、それにつられて俺達も笑う。 そうだ、俺は1人じゃない、借りれる手ならいくらでもある。 それを最大限に活かすんだ。


 巻き込みたくないとかどうとかなんてものは些細なことだ。 こうなってしまった以上はいつか話さなければならないだろう。 だけどそれは今じゃない。 その時まではまだ心の中に閉まっておこう。

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