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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第14章 脅威は突然やってくる
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第123節 攻め方と攻め時、タブレット

 戦況は大分拮抗している。 五河先輩の放つ空中飛来物に対して飛空さんずっと対応し続けているので、戦局がなかなか変わらない。 あの飛行物体ズルすぎる気がします。


「なあ蓮叶君。 君の生徒会長があの武器を使うようになったのっていつかしら?」

「ちょうど去年の今頃っす。 あれを考えついたおかげで今の生徒会長になれてるようなもんっす。 それに五河生徒会長のアイディアはいつもみんなを驚かせているものばかりっす。 あのアイディア脳ありきの五河生徒会長っす。」

「なるほどな。 柔軟な発想力だからこそ見える世界がある・・・か。」

「技術面や戦闘面ばかり見ている他の学校との違いがここで現れるのか。」


 幸坂先輩も志狼先輩もどこか納得したように頷いていた。

「俺にもあんな柔軟な頭が欲しいっすよ。」

「じ、じゃああんたは、ど、どうやって、せ、生徒会に入ったのよ?」


 夕暗先輩が蓮叶から必死に話を聞こうとしている。 先程無理やり腕を取られたのがトラウマになってるのかもしれない。


「俺は実力があったからっすね。 でもそちらのかわい子ちゃんにコテンパンにされたから、世界は広いなって感じたっすけど。」


 そう言って私を見てくる。 見せつける気は元々なかったのだけれど、そんな目で見ないでもらいたい。


「あの飛行物体に対して、飛空君はどう動く? それともこのまま負けちゃうのかしら?」


 志摩川先輩が嬉しそうにモニターを見ている。 しかもその言葉には「飛空さんが転んでもタダでは起きない」と示唆しているのと同じだ。 私もそんな思いでモニターを見ることにした。


 ――――――――――――

 まさかあんなに面倒なショートスタイルにしているとはな。 さすがにトラップマインと烈空砲をセットで使ってくるとはね。 ありゃ本格的に近づくのは至難の業になりそうだ。 近づこうとすれば地雷と強制ダウン、遠いとドローンを相手にしなければならないし、袋小路に入ると粉塵爆発の餌食だ。 「動かず勝つ」って言うのを実現化したような武装と戦い方だな。 さてどう切り抜けるか・・・


「さてと、そろそろそっちは体力の消耗が出てきてる所かと思うんだけどなぁ。」

「電脳世界にそんなのありましたっけ?」

「雰囲気だよ。 そんなの無いのは百も承知だろ?」

「・・・俺はどうやってあなたを倒すか脳内フルスロットルで動かしているんですけれどねぇ。」

「それなら私は如何に君に攻撃をさせないかを考えないといけないかな?」


 よく言う。 この状況ってだけでもそっちにアドバンテージがあるじゃないか。


 ドローンに死角は存在しない。 どこまで高く飛べるのか分からないが、マップ全体を見通せる程の高さまで行かれたらどうすることも出来ないが、一つだけ分かった特徴は、あのドローンの最低飛行高度は五河先輩の立ち姿で頭上より下には行けないことだ。


 つまり屋根の上からではドローンは下れないという事だ。 また距離も五河先輩を中心に半径5mが最大距離なのだろうと推測出来た。 まあその距離を補うための武装があのドローンには備わってるとも言えるが。


「逆に言えばそれが、欠点だったりして。」


 そしてもうひとつの特徴は、ドローンにはカメラがあるが、それは基本的に正面のみで、旋回能力があのドローンはあまりない。 それを逆手に取ることは出来るが、そんなものは本人がよくわかっている事だ。 対策はしてるだろう。 投下型とかな。


 そうして考えてるうちに帰っていたドローンが再び現れて暫く隠れている俺を探している。 そろそろ虱潰しに来るはずだ。距離を詰めるならここしかない。


 隠れている建物から顔を覗かせる。 すると五河先輩が何の警戒もなく姿を現した。 ここに来て油断? それともドローンに集中してるから周りが見えてない? だか無策で突っ込むのは良くない。

 建物やフォークリフトを使って、影から影へ動き、ロープリングの射程距離内に入ったのを確認した後、ロープリングを構え、一度周りを見る。


 ドローンはまだ出てる、操作している五河先輩は俺が見えてない。 ならロープリングの狙いはひとつ!


 俺はロープリングの引き金を引く。 そして放たれたロープは真っ直ぐ飛んでいき、五河先輩の上半身を拘束する。 これでドローンも扱えない。 攻めるならここだ! そう思い隠れていた場所から前進をする。


「私はあまり縛られるのは好きじゃないんだ。 人はもっと自由であるべきだと思うんだよね。」

「それは精神的な話ですか? 物理的な話ですか?」


 縛られてんのにすげぇ余裕そう。 これなんかあるんだろうなぁ・・・ でも止まっても居られない! ここで終わらせて・・・


「バシュッ」

「なっ・・・!」

「私だってなにもしてないでドローンを使っていたわけじゃない。 ま、この分だとドローンと私、どっちが囮か分かったものじゃないな。」


 上から粉が舞って来る。 四方の屋根の端にはカプセルのようなものが割れていた。


 そう言うと遠くから「ドンッ」という大きな音がした。 ドローンの対人ライフルが撃たれたのだ。 動かせないのは分かっているので、多分自動操縦としてドローンに命令したのだろう。 そして地面に着弾し、その火花で再度爆発した。


 ――――――――――――


 彼は今まで戦ってきた中で1番に強い。 青天が「あの少年の武器は珍しいものだった。」というので、いきなり何を言い出すのかと思った。


 交流戦の時のエキシビションマッチの時は私は忙しかったのでその試合を見ることは出来なかった。 もちろん1試合目と2試合目の時もそうだ。 だか、決勝戦の時に見た彼の武器で、青天が言っている意味が分かった。 彼の武器はごく一般的な武装ではない。


 しかしそれをまるで手足のように使いこなしていて、流石の私も驚いた。 そしてそんな彼と私は戦い、私の考え抜いた「フライング・サークル」 (彼はドローンと呼んでいた)と対等に戦っていた。 しかし流石の彼もこの爆発には耐えられないだろう。 煙が晴れる。 彼はその場に倒れていることだろう。 いくら体力があった彼でもそう簡単には立つことは出来ないはずだ。


 しかしそれは予想打にしなかった事。 何故なら彼の姿が一切無かったからだ。 このゲームで身体が無くなることはまず無い。 なら何故? どこに消えてしまったのか?


「そうやって考えてる所が戦闘向きじゃないのが分かりますよ。 まああんな近付かせない武装ならなおのことかなって感じますわ。」


 彼の声がしたのは私の真後ろ。 いつの間にか後ろに回り込まれていたのだ。 煙が晴れるまではその場に留まり、煙が晴れる直前で「光学迷彩銃」を使って一気に距離を詰めてきたのだ。


「そろそろ決着を付けましょう。 うちの生徒会長はあまり気が長くないんですよ。」

「・・・そうね。 これで決着かしら。」

 そう言って私は彼の手に持っていた業物で身体を貫かれた。


 ―――――――――――


「お疲れ様。 随分と苦戦してたんじゃない?」


 帰ってくるなり志摩川先輩にそんな事を言われる。


「そんな事を言わないで下さいよ。 これでもあの飛行物体と戦うの大変だったんですからね?」

「確かにそれはあるね。 最初から工場内を爆発させられたのはさすがに予想外だったでしょ?」

「そうなんですよ。 志狼先輩。 でもあの時爆風を使って跳べて良かったですけど、気づけなかったらまともに試合になってなかったですよ。」


 志狼先輩に言われ、率直な感想を述べる。


「お前の危機感知能力には常々関心する。 あれだけの状況下であんな行動が取れるんだものな。 まさに「敗北を考察する少年」だな。」

「なんです? それ?」

「俺達の中ではよく知る話でな。 「奴は勝てないんじゃない。 敢えて負けようと立ち回る。」という事を言った者がいるんだ。 その言われた人間が・・・」


「敢えて負ける事によって勝ちを掴みに行くのではなく、負けのないような戦い方をする。 その話には諸説あるんだがね。」


 幸坂先輩の話を紡ぐように五河先輩がこちらにやってくる。 眠たそうなのは相変わらずで、感情が読み取りにくい。


「しかし君達の実力は改めて分かった。 これがデータを入れるための電子化タブレットだ。」

「ありがとうございます。 これを相手に差し込む場合はどうすればいいですか?」

「普通なら入れた相手が直接出せるようになってるんだが、今回は例外。 相手の武器に2、3秒ずつ取り込むように入れるんだ。 すると少しずつデータに入っていくからそれを別の媒体に入れればいい。」

「ほんとありがとうね。 なにから何まで。」

「これも君達のネットワークを繋ぐためだよ。」


 これであの謎のノイズに対抗出来るものが出来るかもしれない。 もう怯える必要の無くなる状態になるかもしれない。 電子化タブレットを持ちながら、新たな決意が芽生えた。

今年はこの話が最後の投稿となります。

来年は少し投稿期間が空くと思います。 期待して待ってくれる読者には申し訳ないのですがご了承ください。 それでは良いお年を。

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