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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第14章 脅威は突然やってくる
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第110節 フリーマーケットと水鉄砲、髪留め

 3学期が始まった初めての週末、俺はある場所に呼ばれていた。


「ごめんなさい・・・こんな所に・・・お呼びして・・・しまって。」


 呼んでくれたのは瑛奈だった。 いや正確には彼女が呼んだのではない。


「瑛奈、別に謝ることでは無いわよ。 こうやって来てくれたんだし、胸張ってこうぜ!」

「・・・それを張本人が言うかいな。 普通。」


 そう、今回呼んだのは遊月だ。 目的はもちろん・・・


「いいんじゃない? こういう機会でしか会えないんだし、彼女の要望に応えてあげても。」


 そう言うのは遊月が呼んで欲しいと言っていた人物、海呂だった。


 事の発端は前日の事。 俺の彼女の中で瑛奈だけは学校が違うため、他のみんなよりも俺と居る時間がかなり少ない。 これは彼女達の間でも決まっていたことなのだが、休日はなるべく瑛奈と一緒にいることを優先的にさせてもらっている。


 という訳でどこかに行こうかと誘ってみたはいいものの、お互いに行く場所の算段が決まっていなかった。 そこに現れたのはたまたま隣にいた遊月だったという訳だ。


 そんな訳でデート場所を提供する代わりに一緒について行くと言ったのだ。 そして俺に海呂も連れて来てくれと言われた。 ちゃっかりしてるわとと思いつつ、海呂に連絡をとり、今に至るという現状だ。


「でもなんていうか、そっちは大変な事になってるみたいじゃない? こういう場所に来て大丈夫なの?」

「大丈夫、むしろこういう場所にでも来ないと気が滅入るんだよ。 電脳世界に入れないのがこんなに辛いとは思わなかった。」


 この世界に来ての楽しみを取られた気分を味わっている今日この頃の俺。


 今曜務学園で起こっていることは瑛奈を含め、一部の人間にはある程度知らされている。 もちろん、信頼のおける人物に限るがな。 なので瑛奈経由で遊月にも耳に入ったのだろう。 その辺はちゃんと心配してくれているようだ。


「それで、つられてこられたここなんだけど・・・」


 その海呂の言葉に周りを見渡す。 そこにはテントのようなものが張ってあり、その中で思い思いの品物を売る、フリーマーケットが行われていた。


「ここって何も無いただのだだっ広い広場だと思ってたのに。」

「実はここは定期的にこうやって出店を出せる許可が出てるの。 みんな要らないものをただ捨てるのは勿体ないからね。 広場も使ってもらえるし、一石二鳥な訳。」


 ふーむ考えられてるなぁ。 とにかく見てみようかと思い、早速フリーマーケットに入ってみる。


「さあさあ! 見て行ってよ! この宝石がなんとたったの500円!」

「この手袋が今なら300円。 凍える冬もこれがあれば安心!」

「そこのお客さん! このカーディガン、今なら安くしておくよ! 見てって見てって!」


 やっぱりフリーマーケットだからお客さんに見てもらいたくて出店を出している人も必死だ。


「というかなんでまたフリーマーケットなんだ? 普通にデートするなら大きいあのショッピングモールの方が・・・」

「そこが分かってないのよ飛空。 こういう場所でお宝が安く手に入るかもしれないのよ? 必ずあるのも大事かもしれないけど、安く済ませたいのは学生の性分でしょ?」


 遊月の言い分も分からんでもないが、それでもデート場所として選ぶのは・・・悪くは無い・・・のかな?


 それにしてもフリーマーケットなだけに色々と出ているな。 でもほとんどが日用品か装飾品だ。 まあ当然といえば当然なんだろうが・・・


「ん? これは・・・」

「あ、どうです?お客さん。 これホースから直接打てる水鉄砲なんですけどね。 今なら100円で売ってあげますよ。」


 これを見て、もう使える場面が花壇の水やり以外に思い浮かばないあたり、末期なのだろうか? いや最初のうちは普通に遊べたんだろう。 だが飽きが来て・・・そんな所だろう。


「すみません、これお願いします。」


 そう言って100円を渡して、ビニールに入れてもらう。 まあ絶対的に欲しそうなものでないのは分かっているが、とりあえず、ね。


「さて、他には・・・」


 そう言いかけた時にふと瑛奈の方を見てみる。


「? あの・・・どうか・・・しました・・・か?」


 その不自然な俺の行動に疑問に思ったのか瑛奈が首を傾げる。


「カチューシャ・・・いや髪留めの方がいいか。」


 そう呟いて俺はアクセサリーを売ってる店を探した。 いくつかのアクセサリーショップは見つかったが、瑛奈のイメージとは違うものばかりだった。 こう、花とかって言うよりは動物、しかも小動物系の感じだから・・・ そう思いながらキョロキョロとしていると。


「おっ。それっぽいの発見。」


 目の前に見えたのは、鳥やリスのクリップの付いた髪飾りだった。 ほかにも色々な動物があったがとりあえずは、


「すみません。 このリスの髪留めくれますか?」

「はい、ありがとうね。 あら? そっちの子は彼女さん?」


 バンダナをした女性店員が瑛奈の方を見て、そう聞いてきた。


「ええ、彼女です。 あ、それからもう何個か髪飾り欲しいんですけど。」

「毎度あり。 彼女さんと一緒に買ってくれたから3割引にしてあげるよ。」

「本当ですか? いやぁなんだか申し訳ないです。」

「いいのよ。 手作りしてるものだったから元々売れるか分からなかったものだしね。」

「へぇ、随分細部が凝ってますねぇ。」

「とても・・・素敵・・・です。」

「ありがとう! そう言って貰えるとお姉さんも嬉しいよ!」


 そんな訳で瑛奈の分も含めて6個程髪留めを購入した。 それなりの金額になったがお姉さんの意向により元よりもかなり安く買えた。 ちなみに他のみんなの分として紅梨にはイルカ、白羽には白鳥、鮎にはペンギン、夭沙にはシロクマ、エレアには猫、文香には犬にした。 喜んでくれるだろうか?


「飛空さんの・・・プレゼントなので・・・きっと・・・喜んでくれます・・・よ。」


 瑛奈がそうニッコリと笑って言ってくれた。 というか今ナチュラルに心読まれた? そんなに分かりやすい表情してたかな?


「しばらく他にも見てみようか。 というかあの二人どこに行ったんだ?」

「遊月ちゃんは・・・目を離すと・・・すぐにどこかに・・・行っちゃう子・・・なので・・・海呂さんが・・・いるので・・・あれなら携帯で・・・という事も。」


 まあそんなに気にすることではないか。 ならばと俺と瑛奈はフリーマーケットの雰囲気を楽しんだ。 確かにこうやって見てみるとフリーマーケットっていうのも楽しいものだな。


「やっと・・・笑って・・・くれました。」

「ん? そんなに険しい顔してた?」

「なんと言うか・・・凄く怖い・・・顔を・・・していました。」


 うーむ最近のポイズンノイズの対策とか調査とかで色々と煮詰まってたからかなぁ。あまりなにかを楽しむって気分になれてなかったのかもな。


「今日くらいは学校の事を忘れてもいいか。 入ってなきゃ出ては来ないんだしな。」


 そう考えつつ、気分を切り替える。 今日みたいな日くらい許してくれるだろう。


 その後もこの世界のその国の民族衣装が飾られてあったり、なにかに使われていたんであろう雑貨品まで色々とみて回った。 見ているだけでも楽しいとはこの事を言うのだろうか。 電脳世界での生活に慣れすぎていたせいか、こういうのを見ているのがむしろ新鮮に感じる。


 2時間ほど回って一度集まりたいと遊月から連絡があったので、入口付近に戻ってくる。 なんと言うかほんとにマイペースな奴だなと改めて感じた。


「あ、いたいた。 おーい!」


 人混みの向こうから遊月が高らかに手を振ってこっちに向かってくる。 一方の海呂は何かを手に持ちながらこちらに向かってきた。


「いやぁ、速いよ遊月さん。 もうちょっとゆっくり見ていっても良かったのに。」

「何言ってんのよ海呂。 早くしないと無くなっちゃうものだってあるのよ? こういうのは早さ勝負なの。 電脳バトルも同じよ?」


 電脳バトルに関しては違う気がするが、彼女の流儀なら何も突っ込むまい。


「それで? 何買ったんだよ?」

「私わねぇ。 ジャジャーン!」


 その言葉と共に出されたのは赤と青のストライプが特徴のマフラーだった。 結構長めだったがそれ巻けなくね?


「別に1人で巻くわけじゃないもの。 ね? 海呂。」

「・・・使う機会があまり無いことを祈るよ・・・。」


 そう答えた海呂の顔は真っ赤だった。 おうおうそっちもお熱いですなぁ。


「そ、そんな事よりなにか食べに行こうよ! ほら! そのために呼んだんでしょ?」


 海呂が急に早口になりそそくさと行先も決めてないのに行ってしまう。 その後ろをクスクスと笑いながら遊月がついて行く。


「あいつの意識が変わってきたかな?」

「だと・・・いいです・・・ね。」


 そんな事をお互いに呟きながら、2人を追いかけた。


 その後、終始狼狽を繰り返す海呂はなかなか新鮮だった。

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