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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第14章 脅威は突然やってくる
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第109節 停滞と植物、消化液

 それから情報収集を再開させてから3日が経ったがこれと言った変化があまり見られなかった。 具体的には出てきたノイズの種類がリザードマンか影型しか現れないからだ。 ノイズが起こる回数や、敵が出てくる数などが少しずつ増えるくらいで、後は生徒全員が対処出来るほどになっていた。


「なんか拍子抜け感あるわよねぇ。」


 報告書に目を通していた志摩川先輩がそう愚痴を零す。 志摩川先輩だけではない。 幸坂先輩や志狼先輩は情報の足並みが牛歩になってきてどこか落ち着かない様子だし、夕暗先輩と倉俣先輩はポイズンノイズのせいでまともに電脳世界に入れないことにいい加減限界を感じていそうだ。


「まあまあ皆さん。 こっちから見つからないなら、向こうから出してもらいましょうよぉ。」


 唯一この状況下であってもマイペースを崩さない歌垣先輩がそんなことを言う。 相変わらず空気を読めない人だ。


「あのノイズはやっぱりただのバグだったのでしょうか?」

「いや、それは無いよ。 少なくとも俺は思う。」


 夭沙の疑問に俺は真っ先に否定をする。


「その理由、聞かせてくれる?」


 そのやり取りを見ていた志摩川先輩が俺に質問をしてきた。


「だって今まで何事も無かったのに、いきなり現れるなんてさすがにおかしいですよ。 バグなら自分達である程度は修正出来ます。 しかし今回のはノイズ、しかもこちらに危害を与えてきた。 これは明らかに外部的要因が絡んでいます。 しかも我々の学園以外にも被害が出ている。 同時期に同じようなノイズが発生しているのなら誰かが故意的にやったと考える方が妥当だと思います。」


 これはあくまでも俺の個人論だ。 もちろん正しいなんて保証なんかない。 だが外部干渉の方が考えやすいというのが俺の考えだった。 結局自分もこの事件から逃げたいのかもしれない。


「流石は飛空君だ。 しっかりと状況を把握した上でのその結論は、この場の誰よりも説得力があるよ。」

「・・・ふっ、そうだな。 焦りすぎていたのかもしれないな。 対策など変化が起こる前に行い、そうなった時にパニックにならないようにするためのものだしな。 ちょっと熱くなっていたようだ。」


 志狼先輩の冷静な言葉に幸坂先輩も煮詰まったなにかが取れたようだ。


 一通り喋り終えた俺は椅子の背もたれに思いっきり背中を預けた。


「流石ですね飛空さん。 悪かった空気が一気に戻りましたよ。」

「いやいや、夭沙がきっかけを作ってくれたおかげさ。 こっちこそお礼を言いたいよ。」

「飛空さんの彼女として冥利に尽きますよ。」


 相変わらず抜け目のない子だ。 生徒会という立場でなければ頭でも撫でていた所だよ。 後でさせてもらえるかお願いしてみるか。


「でも完全に変化が無いわけではないんですけどね。」


 何かを思い出したかのように倉俣先輩が意見を述べようとする。


「最近、数が増えてるのは知ってると思うんですけども、あれはなにか関係してるんでしょうかね?」

「そこもなんとも言えないわね。 確かにノイズはひとつしか出せないなんて事はないからそれは有り得る話ではあったんだけど。変化がそれくらいっていうのもねぇ・・・って感じでね。」

「そればかりはどうすることも出来まい。 今はやれる事をやるだけだ。 そうだろう?」


 やるだけの事はやる。 それも決して簡単な事ではない。 しかしいつ来るかも分からない変化を待っているよりは、被害が広がらないように最善を尽くすのもまた生徒会の仕事だ。 今のこれはまだ始まったばかりだ。 このまま何も起きなければいいのだが・・・



「ま、そうは問屋が卸さないわな。」


 昨日の生徒会室での自分の考えを思い返しながらモニター越しで起こっている事をマジマジと見ている。 今見ている映像には他クラスとの合同練習中の試合にノイズが入った。 そこまでは今まで通りだったが、今回現れたのは植物だった。 花は咲いていないのだが、一番上の部分に付いているのは口のような形をしている。 どこかで見た事のあるような植物なのだが、思い出せない。 なんだっけ? あの植物の特徴は・・・


『・・・なにもしてこないのかしら?』

『いや、前の事もあるから、遠くから撃ってみよう。』


 モニター越しのクラスメイトが植物に向かって攻撃を開始しようとした時、植物の方が急にうねり始めた。


『うわ! う、動いた!』

『怯まないで! まだ何をしてくるか分からないわ!』


 そしてその植物は口のような部分から何かを飛ばしてきた。 何発も撃ってきたが、臨戦態勢だった為、みな四方に散らばる。 中にはその何かに足が少し当たってしまったり、跳ね返ってきた火花のようなものに触れてしまったものがいるが、その植物はその場から動く様子はなかった為、そのまま総攻撃をくらい、ノイズは消滅する。 そして強制終了させられる。


 これももうひとつの対策案。「ノイズが現れた場合は撃退する。 撃退終了、もしくは撃退出来ない場合は強制終了を行う事。」だ。 長時間いることによる電磁波の慣れがポイズンノイズに発生しないようにするためだ。


「みんな無事か? あれがなんなのかは分からないがとりあえず・・・」

「あっつっ・・・!」


 先程まで戦っていた女子の1人が右足のふくらはぎを押さえて蹲った。 何事かと確認をしてみると服に異常は見られなかったが、靴下を脱いだ右足には皮膚が焼けただれたような跡が残っていた。


「これは! ・・・あまり触ってはいけません。 病原菌が入るかもしれない! 誰か、彼女を保健室へ。」


 そう先生に言われ、数名の女子は電脳室を立ち去った。


「どういうことだ? 服ではなく皮膚が焼けただれていた? しかもあの攻撃を食らった部位にその後が残っていた・・・」


 先生の疑問を隣で聞いてきて、同じようなことを反復する。 あの植物から放たれたものは液体だった。 しかも若干緑がかっていた。 植物・・・液体・・・焼けただれたような跡・・・皮膚を溶かした?・・・あの形・・・ そこでハッと思い付く。


「先生! あの植物が吐いてきたのは溶解液です! そしてあれは食虫植物の類だと思われます!」


 そうだ思い出した! あの形で尚且つ溶解液を出す植物、あれはウツボカズラだ! もっとも本物のウツボカズラは溶解液は吐かないが・・・


「消化液か・・・ しかし直接来なかったな。 どうなっているんだ?」

「多分、前回からの襲撃失敗と、「こちらからも反撃をしてくる」という2つの要素が合わさったんだと思います。 つまりこちらも遠距離から攻撃すればいいと学んだのではないですか?」

「なるほど、そういう事か。 しかしやつから動けなくなっているのは好都合かもしれない。 遠距離攻撃とはいえ、今はやつは動かない。 これなら遠距離用の対策になる。」


 教員らしい考えだ。


 消化液か・・・思ってたように毒の危険性が上がっている。 体に直接干渉してくることになるとは。 ここまで来るといよいよ攻撃を食らうことは出来なくなってきたな。


「ではこれにて授業は終了とする。 またなにか分かり次第連絡を行う。 今日も済まなかった。」


 先生がそう言って謝罪する。 みんな当然かのように電脳室から出ていく。 それを見送って最後に残った俺を含め、海呂、紅梨、白羽の4人は一度先生を見た後電脳室を出る。


「いよいよもって先生が見えないところで電脳世界に入れなくなったぞ。」

「こればかりは、しょうがない、ですよ。」

「そうねぇ。 生徒の安全第一だもんねぇ。 その分私達も気を付けないといけないんだけどね。」

「これからどうやって対処する予定だい? 飛空。」

「・・・俺に聞くなよな。 でも多分今まで通りだと思うぜ。 他にまだ対策が出来てないんだ。 こればっかりは待つしかないぜ。」


 なんてことの無い会話をみんなで交わしながら、寮へと戻った。


「ただいまイバラ。」

「おかえり飛空、みんな。 今日も大丈夫だった?」


 イバラは常に寮にいるため、俺達が授業中や帰省していてもどこにも基本出れないのだ。 例外としては矢萩学院に行く時ぐらいだろうか。


「俺達はなんともないよ。 だけど被害者は出た。 本格的にこれを起こした犯人の尻尾だけでも掴まないと」

「飛空。」


 その声とともにイバラがこちらに近づいてきた。顔近いよ


「無茶な事はダメだからね。 約束したから。」


 なんか勝手に約束をうえつけられたが、元からそのつもりだし、ほんとに無茶な事はしないつもりだ・・・多分。


「飛空は誰かが言わないと無茶な行動しそうだから。」

「それは、少し、分かるかも、です。」

「私達もその約束聞いたんだからね。 破ったらただじゃおかないわよ。」


 うーん、なんか彼女が増えた事でがんじがらめにされてないか?本気で怒らせないようにしないとな。 いやマジで。

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