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別世界で俺は体感バーチャルTPSの才能がとてもあるらしい。  作者: 風祭 風利
第14章 脅威は突然やってくる
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第107節 気付いたことと監視室、報告

「先輩はなにに気がついたんでしょうか?」


 保健室のベットに横たわる志摩川先輩を見ながら、志狼先輩にそう質問をする。


「あのノイズはただのノイズじゃあない。 あの攻撃を食らった後、電脳世界を出たら症状が現れた。 これから考えるに、あのノイズから脳に直接作用するようになっているような仕組みになってるみたいだね。」

「そしてお前から発せられた「出血毒」という言葉で1つの仮説が出来た。」


 仮説・・・一体どんな仮説が飛び出すのだろうか?


「電脳世界における攻撃は脳に伝わり痛みとして現実世界に入ってくる。 そしてお前の毒という言葉を使い「ポイズンノイズ」と名付ける。」


 ポイズンノイズ・・・ 安直だが分かりやすい方が覚えやすいので今後はそうしておこう。


「会長の「出血毒」、君のクラスメイトが受けた「麻痺毒」、どうやら相手は形状と共に毒を使い分けているみたいだ。」

「だから最初に飛空さんが見た時は影だったのに、今回見たらトカゲのような姿になっていたのですね。」


 夭沙がその解説に思い出したかのように答える。 しかし俺はその事でいくつか仮説が考えられた。


「今回のトカゲは自ら近づいてきました。 でも前の影の時はこちらから近づこうとしなければ動かなかったんです。 そのポイズンノイズは学習してると考えた方がいいですよね?」

「そうだな。 しかも今回の場合、「近づかれると格闘を喰らう」と言うことを学習した可能性が充分に高い。 となると今度は容易に近づいてこなくなるな。」

「後は・・・今は大して強くない毒性のものを使っていますが、今後もっと、色んな毒を使ってくる可能性は否定出来ません。」

「そうだね。 相手も形状を変えている。 その都度瞬時に判断しなければならなくなるのは至難の業かもね。」


 俺の2つの考えを幸坂先輩、志狼先輩は丁寧に答えてくれた。 志摩川先輩の方を見ると今は苦しさはなくなったようで、ゆっくりと眠りについていた。


「どうやらこれは元を突き止めるしかないようだな。」


 こんな事態に招いた元凶がどこかにいる。 ではどこに居るのか、何故こんな事をしたのか、絶対に追求しなければならない。


「まずは被害が広がる前に情報収集と行くぞ。 もしかしたらこの学園以外にも被害を受けてる学校があるかも知れん。 まずは友好関係にある学校から当たっていくぞ。」

「なら俺達は学園のシステムについて見てみたいのですが、もしかしたら何者かが関与してる可能性があるかもしれないので。」

「分かった。 そっちは一度任せる。 歌垣、朝塚、山本、行くぞ。」

「わ、分かりました。」

「あぁん、副会長速いですぅ。」


 そそくさと保健室を出る幸坂先輩の後を追いかけるよう夭沙と歌垣先輩がついて行って、最後に志狼先輩が保健室から出かかったところでこちらに振り向き、


「生徒会の一員らしくなってきたね。」


 その言葉を言って、すぐに追いかけて行った。


「な、なんと言うか、ら、来年の生徒会も、あ、安泰しそうね。」

「そうだな。 今年はどっちも強いからなぁ。」


 志狼先輩の言葉に夕暗先輩と倉俣先輩が反応をした。 強いって正直に言われるとなんか照れくさくなるな。


 保健室を出て10分ほど、俺達は電脳制御装置の前にいた。 コンピューターのサーバーを大きくしたような機械が3個ほど鎮座していて、制御盤もその中にあり、こちらからは干渉出来ないような仕組みになっていた。


「っはぁ・・・このサーバーで電脳世界を保っているのか・・・」

「本当はもっと細かく制御装置があるんだけど、大元はここだけだよ。」


 そう説明してくれたのは、電脳制御装置の監視をしている警備員さんだ。 ここの警備は、24時間体制で確認をしているのだが、ここの警備してくれる人は1人が大体1日置きで朝、昼、晩と交代してるのだそうだ。


「冬休みの時でも来ていたのですか?」

「いや、冬休みの時はまた別の人が来ていたよ。 多分短期バイトとかだろうね。 ここの警備、仕事があまり無い割に給料はそれなりだからさ。」


 そんな裏事情を聞きながら、監視室の中へと案内された。 見た限りでは俺達の寮の部屋くらいの広さだろうか。 奥には先程までいた制御装置の映像が流れており、手前に行く程に、ソファや机、テレビまで置いてあった。


「ここまでの設備にしてもらうのには理由があるんだ。」


 そう言って警備員さんはドアを指さした。 何の変哲もないドアかと思ったが、よく見ると施錠するための鍵がない。


「僕達は警備している時は外に出ることを禁止されてるんだ。 装置に勝手に触れないようにね。 だからこの部屋にはトイレはもちろん、シャワールームまであるんだ。 だから決して不快ではないよ。 むしろ下手な部屋よりも住みやすい。」


 そう言って笑って返す警備員さん。 いい人揃いだよな。 この学校は。


「それで、そんな監視室に来た君だけど、気になる点があるんだって?」

「冬休み中に不審な人物がいなかったか、一応確認をしたいんです。 これだけの警備をくぐり抜けるのは至難の業です。 ですが、万が一ってこともありますので。」

「用心深いんだな、君は。」


 そう言って警備員さんはモニターを触り始めた。 すると1つのモニターが今映している映像と別の映像が流れてきた。


「これが冬休みの間、撮られていた映像だよ。 もっともここの映像のみになっちゃうけどね。」


 そのモニターを見ながら、年越し前から年越し後まで流してもらったが、これといって変化が無かった。 始業式に入る前の前日に何人か制御装置の所に来たが、学校の先生達が多く、あまり気になる点が無かった。


「これで全部だよ。 僕自身が見てもあまり変化が無いように見えるんだけど・・・」

「・・・ハッキングや似たような映像を流されてないか、調べる事は出来ないですか?」

「それなら先生達が確認して行ったよ。 特にそんな痕跡は無かったって。」

「・・・・・・そうですか。」


 先に可能性を潰してくれていたのは助かった。 ならどうやってこのサーバーにノイズを、誰が、なんのために仕込んだのか分からない。


「わざわざ見せてくれてありがとうございました。」

「・・・僕ら警備員のみんなにも少しの変化も逃さないように心掛ける事を共有しておくよ。」


 その言葉にもう一度頭を下げて、監視室を後にした。

 一度情報を整理するために生徒会室へと戻ってきた。


「まずはこちらの現状を言おう。 この現象に陥っているのは我々曜務学園に限った事ではないらしい。 少なくとも円商高校と級頼高校は被害を受けているとのことだ。」

「円商に級頼、どちらも電脳対戦に関しては最先端をいっている学校ですね。」

「ああ、級頼高校はその原因を探っているとの連絡もあった。 これに関しては我々よりも先をいっている向こうに任せた方が良いだろう。 こちらの報告は以上だ。」


 幸坂先輩が席に座ると同時に俺が席を立つ。


「では続いてこちらの話を。 今日来ていた警備員さんに話を伺った所、学校の制御装置に学校関係者以外の人物が入った形跡はないとの事です。 監視カメラの映像にも不備がありませんでしたし、ハッキングや映像偽装の痕跡も無かったとの事です。」


 そこまでを話して席に座る。


「ならこの学校から発信された可能性は低いんだな。」

「そういう事になります。 倉俣先輩。」

「じ、じゃあ、か、完全に、が、外部の人間の、は、犯行と断定して、いいんですね。 副会長。」

「可能性を潰したとなると、そうなるな。」


 この学校から犯罪者なんて出したくはないからな。 それにはため息をつく。


「では一体なんのためにこんな事をしたのでしょうか?」


 夭沙の疑問にはみんな唸った。 電脳世界への外部干渉、そして有害なノイズをこの学校だけではなく、円商や級頼に送った元凶。 その目的は? どんな人物なのか。 皆目見当もつかない。


「ともかくまずは対策案としては「ノイズがはしった場合は有無を言わさずに攻撃を加えること」。 「ノイズからの攻撃を食らわない」というのが今の最小限の対策だ。 明日の集会で全体に報告をする。」


 その報告をして生徒会を解散する。 あ、志摩川先輩、忘れてた。

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