第103節 冬休み開始とサバゲー準備、サバゲー戦
冬休みが始まり、寒さに耐えつつも朝を迎える。 今いるのはこの世界の「津雲家」である。 さすがに長期休暇中なので寮は使えないって夏休みの時に分かったしなぁ。
とりあえず2階の自室から階段を降りてリビングに入る。
「おはよう飛空。」
俺の母親 (代わり)の津雲 千恵。 名前があるのはこの世界での存在を示す為なのだそうだ。
「今日はどうするの?」
「うーん。 冬休みに入って、課題もないし、ほんとにどうしたものかな。」
そう、夏休みの時とは違い冬休みは課題が設けられていない。 つまりほんとに家にいるか、出掛けるかしか選択肢がないのだ。 いや、別に出掛ければいいんだけど、行く先に困るってよくある事じゃん?
「飛空、携帯、鳴ってるわよ。」
「え? あ、ほんとだ。 誰だろ?」
電話らしいので画面を見る。 相手は・・・了平?
「もしもし?」
「やあ 久しぶりだね。」
「ああ、それはいいんだが・・・どうした?」
「ちょっと練習に付き合ってくれないかな?」
「練習? なんの。」
「サバゲーの。」
サバゲーの? とりあえず理由が分からないので場所と時間だけ教えて貰って、こちらも準備を始める。
「あら? 出掛けるの?」
「うん。 行ってきます。」
そう言って家を出る。
最寄り駅から30分ほど電車に揺られ、呼ばれた駅の近くの開けたグラウンドのような場所に着いた。 野球場として使われるのだろう。 半分程が芝生でもう半分が砂場になっている。 しかしそのグラウンドの中に所々に見える遮蔽物が別の場所だと錯覚させる。
「やぁ、飛空。 ごめんね、急に呼んじゃって。」
そう声を掛けてきたのは今日俺を呼んだ響月 了平だ。 光学迷彩柄の服とヘルメット、そのヘルメットにゴーグルが着いており、まさにこれからサバゲーしますよと言わんばかりの格好でこちらに向かってきた。 持ってる武器はAK-47だっけ?
「どうしたんだ?了平。 新たにサバゲーなんて趣味にしたのか?」
「学校からなにも出なかったからね。 せめてこっちの世界でも戦っておきたくてさ。」
戦闘狂か? 分からんでもないが俺はそこでもなかったのだが、ここに影響があったのか。
「しかしよくそんなサバゲー用の武器なんて持ってたな?」
「私の父が元々サバゲーをやっていて、それの名残りで持っているだけです。 今回集まってもらった人も両親の馴染みの人達です。」
俺の疑問に答えたのはこれまた迷彩服を着た芥川だった。 芥川の持ってる銃のスコープの経口からして、スナイパーライフルだろうか。
「2人とも似合ってはいるんだけど、俺は今手ぶらも手ぶらだぜ?」
「その件に関しては大丈夫です。 私が父から借りているので安心して色んな武器を使って下さい。」
そういうと芥川は後方を指さす。 その先には色んな武器やら服やらが無造作に置かれていた。 いいのか?借りもんなのに。
とりあえず目の前にあった。 マシンガンのようなものと、ホルスターとハンドガン。 後はナイフ入れを太ももに巻いて、
「あ、その服も着て。 僕らのチームだって分かりやすくするためにさ。」
あ、その服、理由があったんだね。なら着ますかね。 そう思い服に手を伸ばす。 あ、これ羽織るタイプか、ならそのまま着れるな。
迷彩服を羽織り、準備を完了する。
「というかさっきチームって行ったなら他にメンバーいるよな? どこにいるんだ?」
「実はもう始めちゃってたり。」
「え?」
その疑問にいきなり近くで「パンッ」という音がする。 なんの音だ?
「あ、フラッグ1回取られたね。 一旦仕切り直しだ。」
どうやら今やっているのはフラッグ戦のようだ。 たしか敵陣地にあるフラッグに弾を当てれば得点なんだっけ?
「そんな単純なものじゃなかったりするよ。 相手は何もひとりじゃないからさ。」
「そういうものか。 所で聞きたいんだが・・・」
「なんだい?」
「なんで俺を呼んだんだ? 理由があるのか?」
「単なる埋め合わせが本音だけど、君もつまらないんじゃないかなって思ってね。 ちょっと呼んでみた。」
どういう事だよ。 まあ確かにやること無かったから有難いといえば有難いんだが。
「とにかく入ろう。 今は作戦を練り直してると思うから。」
「はいよ。」
そう言って暗幕をくぐるとかなり小型だが作戦拠点があった。 そこで大人達があれやこれやと作戦をたてている。
「あ、了平君、翔凪ちゃん。 ちょうど良かった。 これから2回目の出陣をするところだったんだ。」
「今の戦況は?」
「相手さん、どうやらショットガン持ちの特攻部隊が数人いるようでね。 そっちの相手をしてたらスナイパーでフラッグを取られちったよ。」
「地雷源や距離を考えると、撃つ方が安全ですからね。」
「そう。 それにスナイパーを止めても、今度は特攻部隊が責めてくる。 相手の思う壷だ。 撃たれたら戻ってから出ないと出陣のし直しは出来んし。」
「みんな基本的には頭を狙われたんですか?」
「いや、ショットガンなら「急所以外を当てた場合、武器によって一定回数当てないとヒットにならない」の対象外だからな。 遠距離からならともかく、至近距離はどうしようもない。」
いかんなぁ。話が飛躍しすぎて完全に蚊帳の外だ。 俺いる意味なくね?
「ところで彼は?」
「今回緊急で参加してもらう事になりました。 津雲 飛空君です。 彼は曜務学園の出身なので戦闘の心得はあります。」
そう言われて目の前の大人達に会釈をする。
「君、得意武器は?」
「あ、僕はあまりみなさんの見慣れてる武器を使ってないのであまり役には立てないかと・・・。」
「とりあえずマシンガンを持っているので牽制するだけでもと思いまして。」
俺の情けない発言に了平が被せてくる。 多分俺じゃ足でまといになるかもな、この感じ。
「心配しなくてもそんなに本気でやってるわけじゃないから、気楽に楽しんでいってよ。」
その一言に安堵を覚える。 2試合目が始まるとの事で、他の人の邪魔にならない程度に自分も配置に付かせてもらう。 マシンガンを実物で初めて持って分かる重量感。 如何に自分の戦っている世界での持ち物が重みを感じないかを実感した。
「そろそろ相手も動くから、動く時は慎重にね。」
隣にいる人にそう言われて息を潜める。 普通に電脳世界で戦っている感覚とはまた違った緊張感がなだれこんでくる。 敵がどこから現れるか分からない。 いつも以上に緊迫した空気が俺を過ぎる。
時間としては2分ほどなのだろうが、もっと時間が経ったように思えるのは緊張感からだろうか。 そんなことを思いながら前方を見てみるとなにかが動いたように見えた。 気のせいかもしれない。 だが、撃ってみれば分かる。 考えるのを止めた脳がそう呟く。 草原のダミーの上の部分を左から右に流すようにマシンガンを撃つ。
その後に「カツン」となにかが当たった音がした。
「うわっ! あれ当ててくるのか!上手く見つからないように来たのになぁ・・・」
そう言って1人が立ち上がった。 そして来た方向と逆方向へと帰っていく。
「凄いね君。 私じゃ見えなかったよ。」
隣にいる人に褒められた。 正直俺もたまたま撃っただけなのでまさか当たるとは思っても見なかった。
しかしその後はあまり見せ所もなく試合はこちらのチームが3人がかりで旗を囲んで一斉射撃をして、旗に当てていたので、敵も反応しにくくかったんだろうな。
「いやぁ。 君の活躍のおかげで今回は勝てたようなものだよ。 君、ほんとに初心者かい?」
「サバゲーは初めてですよ。」
あえて「は」と言ったのは電脳世界で戦っているからである。 決して元の世界でやっていたからではない。
「せっかくだからほかの武器も使ってみないかい? このスナイパーはサイレンサーと8倍スコープが付いていてね。 どんな敵でも見逃さないのさ。」
「おいおい、スナイパーなんて可哀想だろ。 わしはこれがオススメじゃよ? 「IMIガメル」じゃ。 これを使えば連射ブレを最小限に抑えることが出来るぞい。」
「バカ言っちゃいけねぇよアサルト爺さん。 彼のステルススキルは我々の中でもずば抜けてると思うのだ。 だから私はこの「デリンジャー」を進めるよ。 暗殺用と言えばこれだろう。」
なんか様々な人に色んな銃を薦められる。 いやあの、俺は助っ人なだけであって決して本格的にやりたいわけでは・・・
「久しぶりに新しい人を入れれると思って生き生きしてるね。 みんな。」
「あの人達はあれぐらいがちょうどいいのかもしれないわね。」
いや、そこ2人、傍観してないで助けてくれよ! 俺どうすればいいんだよ!
そんな感じで今日1日、ずっとサバゲーに入り浸る事となってしまった。 楽しいのはいいんだけど、限度ってものがあるんじゃね? と思った1日だった。
自分はサバゲーをやっている訳ではないので、無い知識を絞り出したり、調べたりしてこの小説は出来ています。
サバゲーやっている人が読んでいるならごめんなさい




