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ヤンキー×ツンデレ令嬢(ラブコメss)

作者: *毒林檎*

日常に疲れていて癒されたい人に贈ります。

 山のふもとに一軒家がそびえ立っている。

 重厚なスレートの屋根に白い壁、高い塀に囲まれた高級住宅だ。



 一台の赤いセダンが爆音を立てて敷地に入ってきた。



 セダンのドアを勢いよく開けると、20代の若者が運転席から飛びおりた。金髪のヤンキーである。


 ヤンキーは両手を口の端にあて、二階の出窓にむかって叫ぶ。



「おー、お嬢ちゃん、海に行こうぜ」



 窓から巻き髪の女性が顔を出した。風になびく銀糸を思わせるプラチナブロンドの髪に、気の強そうな澄んだ緑の瞳をしている。


 身を前に乗り出すと、負けないくらいに声を張りあげて、ヤンキーに返事をした。



「お断りですわ!庶民が気安く近寄らないでくださいまし!」

「日に焼けたくねぇのかい。お高く止まりやがってよぉ」



 ヤンキーが洋画じみた大げさなジェスチャーで額に手を当てた。


 それを聞いたお嬢様が、窓枠に両手をかけながら、おずおずと切り出す。



「わたくし、黒ギャルになるんですの……?」

「ならねぇって。日傘でもさして、着いてきな!

 っていうか、黒くなっても嬢ちゃんはギャルにならねぇよ」

「どういうことですの」

「肌の色は関係ねぇんだよ」

「ふむふむですわ……。

  わかりましたわ!行って差し上げましょう」

「意外とノってくれんじゃねぇか」



 こいつ、天然だなぁ――ヤンキーはお嬢様がひっこんだ出窓を見つめながら、心のなかでつぶやいた。



 ヤンキーが車のキーを人差し指で振り回しながら待っていると、つばの大きな白い女優帽をかぶったお嬢様が編みカゴをもって現れた。


 すらりと伸びた形のいい脚、その足元には小花柄のサンダルを履いている。


 ひざ丈の柔らかな純白のワンピースをなびかせて、お嬢様はセダンへと近づいた。ヤンキーがすかさずドアを開く。



「ほらよ、助手席だ」



 斜めにかぶった帽子の下から、涼やかな緑の目がヤンキーを見返す。


「よしなに」











 お嬢様が乗り込むと、ヤンキーはエンジンを全開にし、アクセルを踏み込んだ。爆音を立てて車は走り出す。



「捕まってろよ、危ないぜ」



 BGMはエミネムのラップだ。ヤンキーは歌にあわせて口ずさみ、お嬢様は黙って頬杖をついて、反対側の窓を見ている。


 高速道路が海に近づいてきた。


 ヤンキーはボタンを押して窓を開ける。

 一陣の風が二人の髪をそよがせた。



「潮風が心地いいぜ、なぁ」

「手荒い運転ですわね。お里が知れますわっ」



 編みカゴをひざに載せたお嬢様が、りりしくヤンキーをにらむ。



「これくらいカッ飛ばすと、血がたぎるってもんよ」

「ふん……!野蛮ですこと」

「お里ねぇ、俺の育った地域ではたくましさこそ第一でな!

  はっはっは、そんなツンケンすんなって」

「ふ……ふんっ!」



 目を三角にするお嬢様をあやすように、ヤンキーは窓の外を顎でしゃくった。道路の横は、すでに全面の海だ。


 目に沁みるほど、鮮やかな青。

 波打つ水面が、太陽の光を跳ねかえしてきらめいている。



「ほら見ろよ、青いぜ」

「まぁ……もう海ですの!」



 お嬢様が思わず身を窓へ乗り出して声をあげた。

 輝く瞳で海を眺める姿を見て、ヤンキーも楽しそうに目を細める。



「そうだな 地平線の向こうで、空の青と混ざってる

  海は久しぶりか?」

「毎年グアムに行ってますわ!」

「な、なるほどな。さすが金持ちだ。日本の海もいいだろ」

「えぇ、80点ってとこですわね!」

「グアムほどのぬける青じゃねぇかもしれないけど、俺は嬢ちゃんと一緒なら99点だな!」

「まぁ、残りの1点は何なのですの?」



 車が海岸に到着すると、二人は言いあいながらドアを閉める。

 お嬢様は不思議そうに首をかしげた。

 ヤンキーは意味ありげに笑い、テトラポットの端を指さした。



「その位置に立ってみな、もうすぐだ。もうすぐ夕日が沈む……」

 



 怪訝な表情を浮かべて、お嬢様がその場所に歩を進めた。









 空が薄いオレンジに染まり変わる。

 真っ赤に燃える火の玉が水平線に吸いこまれていく様子に、お嬢様は潤む瞳で見とれていた。



 その横顔を眺めながら、やおらヤンキーが近づく。




 ――――お嬢様の帽子で口元を横から覆い隠すと、そっとキスをした。



「なっ……!!いきなり何をなさいますのっ……!」

「ほらよ、二人の影絵が、岩の影とあわさって、ハートマークになっただろ」



 お嬢様はあっけにとられて、口を開けている。

 なにか言おうとしたが、言葉が出てこない様子だ。


 ヤンキーは少しはにかみながら、頭の後ろをかく。



「夕日のときを待っていたのさ」



 指先で回転させた帽子を、再びお嬢様の頭に乗せた。



「ふ……ふんっ!なんともキザったらさしいことですわっ!」

「はっはっは、夕日に負けないくらい真っ赤だぜ。 

 夜になる前にお家に送り届けねぇとなぁ」

「さ……最後までしっかりとエスコートするのですわよっ!」

「おうよ、お手をどうぞ。裾に気をつけてな」

「ふんっ……!」



 お嬢様は耳まで赤くなったまま、ぷいっと目をそらしてヤンキーの手をとると、片手で裾を持って車に乗り込んだ。



 車内ではエミネムのLove the way you lieが流れる。

 ヤンキーは静かに曲に耳をすませ、お嬢様は窓にもたれて外を眺めていた。

 無言の時間の中、赤や黄色のライトの線が道路を流れ過ぎてゆく。










 車が敷地内に入って、止まった。



「さ、着いたぜ。今日は楽しかったか?」



 赤さがひいたお嬢様は、かかえるようにして腕を組んでいる。横目でヤンキーを見て答えた。



「ふん。ま、まぁ、庶民にしては、なかなかのエスコートでしたわよっ!」

「そりゃ、よかった。100点になったかな」



 まんざらでもない褒め言葉に、ヤンキーは快活に笑う。

 うやうやしくひざをついてお嬢様を助手席から下ろすと、ヤンキーは立ちあがった。



「それじゃ、俺は帰るぜ」

「ふん!ま、まぁ、あなたがどうしてもとおっしゃるのなら、また行って差しあげてもよろしくってよ!」



 お嬢様はほんのり頬を染めながら、帽子のつばをつかんで伏し目がちに言った。



「はははは。そりゃ嬉しい申し出だ」



 長いまつげが影を落とす目の奥に寂しさを見てとり、ヤンキーはポケットに手をつっこんで何かを探しだした。


 銀色に光る細いチェーンを取りだす。先には海水を思わせるような水色をしたガラストップが揺れている。



「今度はガングロになるまで海ではしゃごうぜ。これ、海でとれたガラスで作ったペンダントだ」

「どうしてもとおっしゃるのなら、貰って差しあげますわ!」

「きっと対岸からのメッセージが入った小瓶の欠片だろうな。端は削って丸くしてるから大丈夫だ」



 ヤンキーはお嬢様の後ろ髪をかきあげると、細い首にペンダントをつけた。


 はらりとプラチナブロンドの髪が下りて、白い鎖骨にきゃしゃなペンダントが流れる。

 水色のガラスが淡く光った。



「ほんとキザですことね」

「はっはっは、俺がキザなんじゃねぇ。

  お嬢ちゃんがキザにさせてるのさ。じゃ、またな」



 ヤンキーは身をひるがえすようにセダンに飛び乗った。

 開けた窓から顔を出し、二本指をこめかみの横にそえる。



「アデュー」

「アデュー……ですわ……」





 お嬢様は、両手を胸の前に置いてセダンを見送る。


 白いワンピースの後ろ姿を、真夏の風が爽やかに吹き抜けていった。








 ――Happy ended――


















今回はラノベ風。ツンデレは正義‼(*・ー・)

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ公の場で言うことではないですがどこかで見たことのある即興ストーリーですね( ˙-˙ ) 貴様スクショを……いえなんでもないです。
2017/10/31 23:17 退会済み
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