プロローグ 【楽しい楽しい、沈没以前出航以下の修学旅行】7
体育館の中に入ると、既に到着していた御剣さんが高らかに演説していた。それを聞いている人はある人は退屈そうに、別の人はなんだか違う意味で興奮した目で見ていた。
ミツルギ・ヒイロ「――――そして、俺の放った一撃は闇の王にして光の支配者たる魔王女スベテオ・ノミコムダーの手によって世界は闇に包まれた。しかし、【超逸材のヒーロー】たるこの俺、御剣緋色が変身したクライマックス仮面の力で……」
カスガ・ハルヒ「……どうでも良いんですが、この話はまだ続くんですか? スベテオ・ノミコムダーとか、クライマックス仮面とか、色々と突っ込み所が多くて聞き堪えないんですけれども。耳に直接毒霧を吹きつけられている気分ですよ」
クラナカ・リボン「いえいえ、とっても新鮮ですよ! ヒーロー特撮漫画はまだ24本しか書いてないですからね!」
カスガ・ハルヒ「……十分、書いている気もしますが」
クラナカ・リボン「いえいえ! 100本を越えてない時点で【超逸材のイラストレーター】からして見れば、まだまだ書いてないのと同義なんですよ! ……それで、そのスベテなんとかの色は? 黄色と言う事でしたが詳細を言えばどのくらいの黄色?
イエロー・キャブ? カナリー? グレープフルーツ・グリーン?」
ミツルギ・ヒイロ「えっと、それはだな……」
困っている御剣さんに倉中さんは「クローム・イエロー? サルファー・イエロー?」と、聞いた事がないような色の名前をつらつらと言って、何色かを聞いていた。隣で聞いている春日さんは退屈そうに欠伸をしていた。
――――けれども、気になるのはその横で控えている謎の男だ。その男は彼らの近くの壁によりかかって立っている、赤い鬼の面を被った黒い半袖のTシャツが特徴の男。両手に黒い銛を持って静かにたたずみ、危険な香りを漂わせている。
ユキワリ・キョウヘイ(なに、あの鬼面の男? なんか怖いんだけど……)
そんな事を考えていると、桃色の髪の顔が嬉しそうに近寄って来た。桃色の髪をツインテールにした、ハートマークだらけの女。着ている服も桃色のジャケットで、それとなぜか妖艶な色気を感じられた。
ハート・オンナ「おやおやっ? 初めましてです! 自己紹介させていただきますわね。私は【超逸材の恋人】、橋渡恋歌だよ♪」
【超逸材の恋人;ハシワタリ・レンカ】
ユキワリ・キョウヘイ「……恋人?」
ハシワタリ・キョウヘイ「ちなみに、あっちに居るのは鈴木シーサーさんって言うみたいだよ。【超逸材の漁師】って言うそうなんですよ☆」
そう彼女が紹介すると、鬼面の彼女はコクリと頷いていた。
【超逸材の漁師;鈴木シーサー】
スズキ・シーサー「……コクッ!」
ハシワタリ・レンカ「結構怖い顔しているけど、大丈夫♪ 無口なだけで普通に良い人だから☆ この【超逸材の恋人】である私が嘘吐く訳ないって」
ユキワリ・キョウヘイ「……それはまぁ良いとして……えっと、自己紹介がまだでしたね。【超逸材のスケット】の雪割杏平と言います!」
ぼくがそう言うと、後ろできょとんとしていた相川さんも返事をする。大和さんは……どうやらあのヒーローさん達の所に行ったみたいだな。
ハシワタリ・レンカ「杏平くんに祐樹くん……こりゃあキョウくんにユウくんだね! よろしく、2人とも!」
ユキワリ・キョウヘイ「……キョウくん?」
アイカワ・ユウキ「……ユウくん?」
なんだろう、このぐいぐい来る感じは。
物凄い勢いで懐に忍び寄って来るのに、全く振りほどけない。これは彼女が持つ独特の色気のせいだろうか?
ハシワタリ・レンカ「そうだ、キョウくんの質問に答えてなかったね♪ 私がなんで【超逸材の恋人】と呼ばれるかと言われるようになったかと言ったら、それは恋人の演技が上手かったからだよ☆」
ユキワリ・キョウヘイ「演技……?」
ハシワタリ・レンカ「そうそう♡ 子供の頃から映画に出てるんだけど、恋人の演技に関しては異常なまでに褒められて、褒められて☆ そんな感じに、恋人としての演技を極めていったら、【超逸材の恋人】なんて呼ばれるくらいになっちゃったの♪ まぁまぁ、恋するってす・て・き、だよね♡ 私、恋のためならなんでもするよ!」
目をキラキラと輝かせて、橋渡さんはこちらへと近寄って来る。
ハシワタリ・レンカ「さぁさぁ! なんでも、なんでもするよ! 恋人のためならなんでもするよ~☆」
嬉しそうに笑顔を浮かべて近寄って来る彼女に若干照れを感じていると、ガシッと彼女の首根っこが掴まれて彼女の動きが止まる。
ハシワタリ・レンカ「あらっ? あらあらっ?」
ネコミミ・ダッフル「その辺にしておくにゃー、恋歌ちゃん」
彼女の首根っこを掴んだのは、クリーム色のはねた髪と桃色のダッフルコートが特徴の女性。頭に付けられた黒の猫耳はゆっくりと揺れ動き、怒っているのか頬を膨らませているが全然怒気を感じずに、ただかまってもらえずにすねているだけのように見える。
ネコミミ・ダッフル「あっ、こんにちは。君達は初めましてかにゃー? わたくし様は中吉田さゆりって言うにゃー。一応は【超逸材の教師】という正午は貰ってるんだけど、そんなに気にしなくて大丈夫だにゃ? 教師であるけど、生徒でもあるからにゃ」
【超逸材の教師;ナカヨシダ・サユリ】
ナカヨシダ・サユリ「けれども入学したと思ったら何故か、こんなヌネなんかに監禁されていて、驚き桃の木サンショウウオですよ」
ユキワリ・キョウヘイ「ヌネ? サンショウウオ?」
なんか変だなと思っていると、中吉田さんがハッと驚いた顔を見せる。わざわざ手を口の前に出しての、分かりやすいまでのオーバーリアクション。
ナカヨシダ・サユリ「そっか、ここ日本だったかにゃー。長い間、キュバディック王国に居たから言葉が変になってるのかにゃ? 教えてくれてありがとうにゃー、感謝感激ハッピーウレピーヨロシクネー!」
ユキワリ・キョウヘイ(……それも少し変だけれども)
まぁ、気にしすぎても仕方がないかもしれないけれども。
ナカヨシダ・サユリ「それよりも恋歌ちゃん! 『なんでもする』って軽々しく言っちゃあいけないにゃーよ? 世の中にはそれを理由して、あり得ない要求をする人だっているからいけないにゃーよ! だからそんな事は、あまり言っちゃいけないのにゃー! わたくし様との約束だにゃ!」
ハシワタリ・レンカ「でもでも! 私は【超逸材の恋人】として、皆の役に立ちたいんですよ! 勿論、さゆりちゃんもね! 教師に恋とか、同性に恋とか、ぞくぞくするよね~!」
ナカヨシダ・サユリ「とにかく! 自分の事を大事にしなきゃだめにゃんだからね! 先生として、生徒の不純は団子として許さないにゃぁ!」
アイカワ・ユウキ「それを言うなら、断固としてだと思うけどね」
ヤレヤレ、と言いつつ相川さんは中吉田さんの元へと歩み寄る。
アイカワ・ユウキ「けれどもわたしも、中吉田さゆりくんの意見には賛成だよ。橋渡恋歌くんはもう少し自分の事を大事にすべきだと思う。これはカウンセリングの必要があるね」
ナカヨシダ・サユリ「でしょでしょ! 相川さんはわたくし様の事を良くワカメって……分かってくれてるようで嬉しいにゃ。2人で橋渡さんのこの厄介な精神をなんとかしにゃいとね!」
アイカワ・ユウキ「全く持って、同感だよ」
そう言って相川さんと中吉田さんの2人は、橋渡さんを連れて体育館の奥へと連れて行く。
ハシワタリ・レンカ「あぁ~☆ いきなり3人プレイと調教プレイぃ? けれどもそれも楽しそうですねぇ♡」
……橋渡恋歌さん、楽しそうですね。
ミツルギ・ヒイロ「だから、あれがクルスであって! こっちはマルスだからな!」
クラナカ・リボン「イエローの色が分からないんだったらせめて濃さだけでも教えて下さいよ! 黄金、それとも薄黄色? どっちに近いの!? ねぇ、どっち!?」
スズキ・シーサー「……うむっ」
ヤマト・アユム「オレの話も聞いてくれ。全ての人間が泣いて喜ぶ、真実の歴史を内包した遺跡……ナショスツ遺跡での、【超逸材の冒険者】たるこのオレの話を!」
カスガ・ハルヒ「……誰か助けてくれない? この異常空間。どこから手を出せば良いのやら」
人によりけりだとは思いますが、「☆」や「♪」などの記号を用いるのが苦手な方もいらっしゃると思います。作家ならもっと別の形で個性を出せ、と。
この橋渡恋歌は記号を多用するのが多いキャラですが、それが彼女の個性だと思って書いております。
記号を用いる事で作れるキャラ性もあると思います。