チャプター3 お前はまだサツイを知らない (非)日常編一日目(4)
タカナシ・アカリ「――――それでは私は、船を作れるかどうか試します」
3Dプリンターにかじりつくようにして、小鳥遊さんは3Dプリンターに備え付けられているパソコンモニターにカタカタとコードを打ち込んで行く。
その後は何度も常盤木さんが「どんな感じ? ねぇねぇ、どんな感じ?」と後ろから話しかけて来るのだけれども、小鳥遊さんはただ無言で作業を続けていた。
トキワギ・トオカ「……うーん、アカリッチは作業に集中してるみたいだね。
あっ、キョウヘイッチ。あたしはここでアカリッチを見ているから、他の場所に行って良いよ?」
ユキワリ・キョウヘイ「分かった、ありがとう。常盤木さん。ついでなんだけど、それならあそこのも頼む」
と、ぼくは後ろで倒れて、地面に《愛を 大切に……》などという、ダイイング(?)メッセージを書いてその場で倒れている橋渡さんを指差す。
橋渡恋歌、【超逸材の恋人】である彼女は今までの事件からも分かる通りなのだが、かなり性格からしても厄介極まりない存在である。そんな彼女を1人にする事はあまり望ましくはない。
一応、この場には小鳥遊さんも居るが……彼女は見ての通り、作業に集中しているから残念ながら警戒と言う意味ではその役割を果たせそうにはないからである。
ユキワリ・キョウヘイ(それでも気になる部分は、たくさんあるんだよね)
まず、まだ見ても居ない《昆虫の部屋》と《魚の部屋》の確認。
そして、いつものように御剣さんに突っかかって1人先に行ってしまった春日さん。
ユキワリ・キョウヘイ(まずは、《昆虫の部屋》ってのに行って見るかな?)
常盤木さんに行先を告げて、ぼくは《昆虫の部屋》に向かう事となった。
☆
《昆虫の部屋》に向かう事となったが、このネイチャーエルの構造上すぐに向かう事は出来ない。この船は《自然庭園》から3又――――《昆虫の部屋》、《魚の部屋》、《化石の部屋》の3つに分かれており、1つの部屋に向かうと、他の部屋に向かうためには一旦《自然庭園》まで戻らなければならない。
と言う訳で、《自然庭園》まで戻って来ると、そこではショコラティッシュさんと平和島さん、そして久野さんの3人が居た。久野さんは一緒に居ると言うよりかは、ただその場に居たという印象の方が強いけれども。
――――と言うか、平和島さんはなにがあったんだろう?
クノ・タマキ「……オォ、スケットさんが戻って来たデス」
ユキワリ・キョウヘイ「久野さん、平和島さんはなにがあったんですか?」
ぼくがそう聞くと、久能さんは「えっと、デスね」といつものように淡々とした口調で話し始めた。
ぼくの目の前で、平和島さんは膝をかかえて丸まり、ガタガタと震えていた。
ヘイワジマ・ノゾミ「むしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわい……」
クノ・タマキ「ミテの通り、デス。気象予報士さんは、ムシが怖い……いや、アマリにも怖がってるデス」
ユキワリ・キョウヘイ「……なるほど。だったら、《虫の部屋》に行かなければ良いのではないかな?」
「ソレが、ソウもいかないのデス」と、久能さんはこの問題点を教えてくれた。
クノ・タマキ「実は、このネイチャーエルには自然テラスがあるデス。ソレで、パティシエさんはそこでティータイムを提案したデス。
そして、《虫の部屋》に今、虫は居ない見たいデス。その奥の《毒虫の部屋》に標本漬けの虫は居るミタイなんデスが」
ショコラティッシュ「ショコラね、望海さんにどうしても美味しいスイーツ、食べさせたい、です。
美味しいスイーツは、素材とか、料理人とかもある、よ? でもね、食べる場所も重要、だよ?」
……まぁ、確かに。
景色のいい場所で食べると、美味しさが何倍にも感じると言うのは、どこかで聞いた事がるような気もする。
ヘイワジマ・ノゾミ「むしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわいむしこわい……」
ショコラティッシュ「でも、望海さんがこれじゃ。辞める、です。
……折角、とっておきの《匠スペシャル》。用意してたんだけど」
がっくりとうな垂れるショコラティッシュさん。
その言葉を聞いて、平和島さんはとつぜんその場から立ち上がる。
ヘイワジマ・ノゾミ「たっ、匠スペシャル? それは、とーっても気になりますネー!
それだったら、ががががあががががががががが、がんばるっ!
がんばって、そのスペシャルスイーツ、食べるネーーーーーーーーーーッ!」
ショコラティッシュ「ま、待って! 待って、望海!」
半ばやけくそと言った感じで、走り去っていく平和島さん。その後を必死の形相で行く、ショコラティッシュさん。
クノ・タマキ「……。《魚の部屋》、行くデス」
ユキワリ・キョウヘイ「ぼくも、そうさせてもらうよ」
あの2人の勢いにはついていけそうになかった。




