プロローグ 【楽しい楽しい、沈没以前出航以下の修学旅行】5
倉庫にて3人の同級生を体育館へと向かわせたぼくと相川さんは、次に食堂の中へと入る。食堂には大人数が揃って食べられるだけの大きなテーブル、そして席が16席。テーブルの上には花が活けられていない置いてあるだけのガラスの花瓶、そして部屋の奥には大勢の人間の料理を作るための厨房が用意されていた。
そして、食堂の中には既に2人の生徒が居た。
まずこちらに気付いたのはテーブルの上に食べきれない量の大量のケーキを前にがつがつと食事をする、赤いマントを翻した白いTシャツを着た男。黒い短髪と赤い瞳、そして頭には白いねじり鉢巻きを巻いており、赤い瞳の奥には燃えたぎる赤い炎のような意思が見えた。
ジャージ・オトコ「おおっ、新顔だな! とりあえず自己紹介と行こうか! 俺の名前は御剣緋色! 貰った称号は【超逸材のヒーロー】だぜぇ!」
【超逸材のヒーロー;ミツルギ・ヒイロ】
ミツルギ・ヒイロ「イェェェェェェイ! 元気かぁぁぁい!」
ユキワリ・キョウヘイ「……あっ、あぁ。うん。元気です、よ?」
ミツルギ・ヒイロ「おぉぉ、しっ! 元気があればなんでもできる! それがヒーローの俺から言える、この世で一番大事な事だ! 他の連中とも話したが、どうやら俺達は閉じ込められてるんだろう?」
御剣さんは「だろ? だろだろ?」とちょっとうんざりするような口調で言うので、ぼくは「う、うん」と促されるようにして頷いていた。
ミツルギ・ヒイロ「そうそう! なら元気になるために、まずは食事から始めようじゃないか! 美味しく、そして元気になり、英気を養え! まずは行動するための力を付けろ、話はそれからだぁ! 先の事は先で考えろ! うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
そして御剣さんは再びケーキにがっつく。鬼を討たんばかりの勢いで、後先考えない勢いで食べる彼に、話しかけてみるも食べ続けるだけで反応がない。
ユキワリ・キョウヘイ(この状況下で……良く食べられるなぁ、あんなに)
見ているこっちが胸焼けするくらいの量である。
アイカワ・ユウキ「雪割杏平くん、御剣緋色くんとの話が終わったらこっちに来てくれ!」
ユキワリ・キョウヘイ「あっ! はいっ!」
"話が終わった"言うより、"もう話せない"と言った方が正しいかも知れないが、もう話は聞いていないだろうから相川さんの所へと向かった。
相川さんの前に居たのは、深緑色の短髪の男。白い半袖シャツの上に黒のジャンパーを身に纏い、頭には宝石が付いたヘアバンドと両腕に描かれた蜥蜴のタトゥーが特徴である。
タトゥー・オトコ「おっ、君は?」
ユキワリ・キョウヘイ「えっと、ぼくの名前は雪割杏平。【超逸材のスケット】ですけれども、あなたも幸福ヶ淵学園の生徒……ですよね?」
そう言うと、そのタトゥーをした男性はちょっと困った顔でこちらを見ていた。すると、相川さんがタトゥー男の彼に助け船を出す。
アイカワ・ユウキ「あぁ、雪割杏平くん。実は彼は名前と自分は幸福ヶ淵学園の生徒である事は思い出せたようなんだが、弱った事に自分の才能が思い出せないそうなんだよ」
ユキワリ・キョウヘイ「えっ!?」
自分の才能が思い出せない?
確認するように彼の顔を見ると、少し困ったような顔でこちらを見つめた。
タトゥー・オトコ「どうやら、君もオレの事を知らないみたいだね。もしかしたら、オレが知らないだけでわたくしの知り合いかもしれないと思ってね。けれども顔が広そうなカウンセラーさんやスケットさんでも知らないとなると、望み薄かも……」
ユキワリ・キョウヘイ「え、えっと、知らなくてすいま……」
タトゥー・オトコ「……!? 待って!」
知らなかった事に対してなにか申し訳なく思って謝ろうとすると、彼は急に頭を押さえて考え込む。そして目を開いて、手を叩いていた。
タトゥー・オトコ「……そうだ、思い出した! では改めて、自己紹介させて貰おう。オレの名前は大和歩。そしてその才能は【超逸材の冒険家】……だと思う」
【超逸材の自称冒険家;ヤマト・アユム】
ヤマト・アユム「冒険に挑む熱い気持ち、そして色々な場所に向かってなにかを発見することを楽しむこの気持ち……こりゃあ、完全に冒険家として歩んできた感情に違いない! ……まぁ、完全にそうだとは言えないが、きっとそうだ!」
ミツルギ・ヒイロ「おっ、大和! お前、才能が分かったのか! そりゃあ、良かったな! 自分の才能が思い出せたのは良い事だ! やはり、食堂に来て食事した事が良い事に繋がったな! やはり、食事は偉大だな!」
ヤマト・アユム「そうだなぁ! 食事って偉大なんだなぁ! 自分の才能も……まぁ、完全とまでは言わないが、思い出せて良かったぜ!」
……いや、御剣さんはただ食べてただけな気もするが。
まぁ、彼が思い出せたと喜んでいるのなら、その方が良いのかも知れないけれども。
アイカワ・ユウキ「冒険家の才能か。
まぁ、大和歩くんの才能が思い出せたのなら何よりだよ。では、2人とも。他の皆が体育館で待っているから、来てくれないかい? どうも、今のところ有力なのはそれなのだよ」
ヤマト・アユム「おぉっ! 他の人も居るのか! ならオレのこの思い出した才能を皆に披露せねばな! オレの冒険の数々、聞かせてみせるぜぇぇぇぇ!」
ミツルギ・ヒイロ「そのいきだぜ、兄弟ぃぃぃぃ! 俺も俺の英雄譚を皆に披露してやるかな! さぁ、2人でどっちが先に体育館に着けるか競争と行こうじゃないかぁぁぁぁ!」
ヤマト・アユム「うぉぉぉぉ!」
そう言って2人は食堂を飛び出して走り出して行った。
ユキワリ・キョウヘイ「これで、とりあえず倉庫と食堂の2つを調べられましたね」
アイカワ・ユウキ「あぁ、そうですね。まぁ、彼らにもきちんと話が出来て良かったよ。
さぁ、早く体育館へと向かいましょうか。あの2人が高らかに話して、他の皆をうんざりさせないように」
ユキワリ・キョウヘイ「そう、ですね」
あの2人の様子を見る限り、早く行かないととんでもない事になりそうだ。
【???】という「ダンガンロンパ」シリーズの恒例も好きなので、1人そういうキャラも入れてみました。
ただ、【超逸材の???】よりも、【超逸材の自称冒険家】とするとまた違う印象が出るんじゃないかと思って作りました。自分的には良いアイデアだと思っております。