チャプター7 クロマク裁判編(☆)おしおき編☆
【Tales of Zealot 狂信者の最期】
----ぼとり。
1人の宇宙人が、倒れた。
音もなく、予兆もなく、ただ糸が切れた人形のように。
いきなり倒れた彼を心配し、隣に座っていた宇宙人は声をかけようとする。
しかし、声をかけようとして、その宇宙人も自分の身体が床に向かって倒れていることに気付いた。
自分の意思なんかではなく、身体が勝手に、だ。
そんなおかしな現象を体感しているのは、1人や2人ではなかった。
何十人、何百人、何千何万……UFOの中で"白神山たける"の控えとして待ち構えていた者達全てが倒れてしまったのである。
そして、倒れたのは、UFO内にいる者だけではなかった。
まずは、地球の活動舞台。
巨大UFOの中ではなく、地球の別の場所で活動を始めていた者達も、彼らと同じように倒れていく。
次に、遥か彼方の本星の宇宙人達。
乃等野サロンの文学に心奪われ、このコロシアイを娯楽として楽しんでいた者達も、倒れていく。
そして勿論、白神山たけるも。
タケル「(これ、は……)」
毒、なんかではない。
どちらかと言えば、呪いのようなモノだ。
自分達は乃等野サロンの信者であり、それが故にこの文章が心の奥底にへばり付いて離れないのだ。
文字の大きさ、ハネ具合、並びに、独特の風味。
その全てが、白神山たけるを、そして同じように敬愛している宇宙人達に伝わってくるのだ。
タケル「(なんでだ……なんで、なんだ……)」
自分達は、死を迎えようとしている。
逃れる事の出来ない、種族的な、星そのものの死。
そんな危機的状況だというのに……
タケル「(何故、嬉しいのだ?)」
あの話は、乃等野サロンが作って届けられたあの話は、絶望の話だったはずだ。
絶望しかない、人の死が続くだけの暗黒物語だったはずだ。
だからこそ、彼らは、彼女らは、そう理解したのだ。
"娯楽とは、人の死である"と。
生きようと必死にあがく者達が、殺したくない人達が、死によって感情を揺さぶられる。
それこそが究極の娯楽である、と、送られてきた文学の数々を見て、そう理解したのである。
タケル「(だが、しかし----)」
彼らが作った、乃等野サロンの文章を見て、1つ、思ったのである。
タケル「(もしかして本当の娯楽ってのは----)」
----こういう、悪を倒す希望、なのかもしれない。