チャプター7 クロマク裁判編(7)生き残るために
----絶望せよ。
白神山たけるは、ただそう告げる。
彼女の言葉に同調するように、UFOの中からも同じような声が聞こえてくる。
----絶望せよ。
----絶望せよ。絶望せよ。絶望せよ。
----絶望せよ。絶望せよ。絶望せよ。絶望せよ。絶望せよ。
かの化け物達は、ただそう告げてくる。
クノ・タマキ「バンドワゴン……」
トキワギ・トオカ「えっ、タマキッチ、それって何? 何? 東北とかのサッカーチームの名前?」
カスガ・ハルヒAI『どちらかと言えば、多数決の弊害のようなものです』
言葉の意味が分からず、常盤木さんが困っていると、春日ハルヒがそう告げる。
パソコンの中で、ため息交じりに彼女は告げる。
カスガ・ハルヒAI『人気があるから、良いに決まっている。皆が支持しているから、自分も支持すべきだ。偉い人が言ってるなら、正しいに違いない。
そういう多数派の意見に同調して、誘導されてしまう。そういう、ふざけた心理の事ですよ』
タカナシ・アカリ「あの宇宙人達のように、ですか」
恐らく、最初は宇宙人全員が、乃等野サロンの書いた小説の絶望思考に染まっていたわけではないのだろう。
しかし、その思考に、思想に、同調するような者が、どんどん増えていった。
その結果が、いま目の前で犯人であると自供している白神山たける、それに巨大UFOから聞こえる集団、という事なのだろう。
ある種の、イカレた宗教団体。
自分達の目的のために、人殺しもいとわない、哀れなる連中だ。
タカナシ・アカリ「1人を、たとえ白神山たけるというクロ1人を裁いたところで、あのUFOから逃げられるはずもない。きっと私達は捕まって、記憶を消されるなどして、ゲームにまたしても巻き込まれるでしょう。
こんな大掛かりな施設を作るだけの、準備万端な奴らです----それくらいは、出来るでしょうよ」
ミツルギ・ヒイロ「なるほど……つまりは、1人を倒すのではなく、やるならあの中のUFOも、か。
それなら話は簡単だ! 洗脳能力を持つ怪人を倒せば、それで丸っと解決だぞ!」
カスガ・ハルヒAI『どこの番組の話ですか……』
奴らは宇宙人で、なおかつその実態はイカレた宗教団体だ。
以前にも似たような宗教団体を【超逸材のスケット】として、名探偵の兄として潰した際は、ぼく達は彼らの教祖を捕まえた。
あの時の宗教団体は、その教祖のカリスマ性で持っていた組織だったので、教祖を捕まえる事で、事件は収束した。
一方で、今のUFO連中の場合、恐らく白神山たけるは、ただの末端に過ぎないだろう。
彼らの言葉を繋ぐ、ただの代弁者。
彼女をこの裁判で裁いたとしても、この事件は終わらない。
ユキワリ・キョウヘイ「(終わらせる方法があるとしたら、たった1つだけ)」
白神山たけるを、裁くのではない。
巨大UFOを含めた、彼女達全員を一斉に、裁くのだ。
----これはもう、クロマク裁判ではない。
"クロ1人しか裁けないこの裁判のルール"を破り、ぼく達が生き残るために。
ユキワリ・キョウヘイ「お前達全員を、ぼくの手で倒す!」
クロである白神山たけるを殺します
その場合、クロ以外----すなわち、巨大UFO内にいる連中が、娯楽のために捕まえます
なので、両方とも、一緒に倒す必要があります
簡単に言うと、そういうお話です




