チャプター6 クロマク探し裁判編(2) オワリ・シュウマツ
ゲッちゃん「----さぁ、裁判開始だ」
裁判会場の真ん中で、目元をアイマスクで隠した車椅子の彼は、高らかに宣言した。
そして、コロシアイ生活をなんとか生き残ってきた5人によるクロマク探し裁判が幕を開け----
ミツルギ・ヒイロ「いや、誰だよ! おいっ!」
----なかった。
クノ・タマキ「……? ドウしたんデスか、急ニ?」
ミツルギ・ヒイロ「いや、急にじゃないだろう! まぁ、確かに"急に"だったけど!?」
カスガ・ハルヒAI『空気も読まずに、意味不明な発言を、こんな場でもすることが出来るなんて----なんて、蛮勇の持ち主なんでしょう。
流石は、【超逸材のヒーロー】(笑)ですね』
----うん、多分だけど、今の蛮勇は、決して褒めた感じはなかったね。
空気を読まずに発言することは勇気ではあるけれども、必ずしも良い事ではないからね。
タカナシ・アカリ「……いきなり出た者が、その場を仕切るのに変、だという事なのでは?」
ミツルギ・ヒイロ「そうそうっ! その通りっ! そういう事、だぜ!」
----まぁ、確かに気になるところではあるけれども。
ユキワリ・キョウヘイ「いきなり出てきて、この重要な場を仕切る。それ自体が、あなたに相応しくないと、ぼくは思います」
ゲッちゃん「ふむ、確かに。いきなり出てきたぽっと出のキャラクターに、全てを持っていかれる。それは本当に、非常に変な事ですね」
「ふむふむ」と、車椅子に乗ったオワリ・シュウマツと名乗った彼は頷いていた。
ゲッちゃん「しかしながら、ゲシュタルトが被害者となった今、この場を仕切るのに一番相応しいのはこの私、オワリ・シュウマツは確かなのですよ」
パンっと、彼が手を叩くと共に、ぼく達全員におぞましい気配が伝わってくる。
指1本を、眉1つを、心臓を動かすことすら、今、この場ではしたくなかった。
----なにせ、したら"殺される"から。
殺意とは違う……いや、殺意なんかとは比べるまでもなく、その気配は明確に漂っていた。
濃厚なる死の香り、今までコロシアイ生活で、殺された死体から感じ取っていた香り。
けれども、"これ"はそれ以上の死の気配。
死、そのもの。
ゲッちゃん「この世の人間は、全員が恐怖を抱いている。多かれ少なかれ、何かしらに対して恐怖を感じている。それは、知性を持つからこそ感じてしまう、本能的なモノだ。
だからこそ、宣言しよう。私は恐怖そのものであるからこそ、誰の味方でもなく、誰の敵でもなく、そして----誰よりも公正な判断を下せる、と」
パチンッと、もう一度だけオワリ・シュウマツが手を叩くと、おぞましい気配は一瞬にして消えた。
トキワギ・トオカ「はぁはぁ……いっ、いまのは……日本代表として、サッカーランキング1位の強豪国に負けた時のような……」
タカナシ・アカリ「……今までに感じた事、以上の明確な、死」
ユキワリ・キョウヘイ「なんだったんだ、今のは……」
死を振りまくとか、そういう低次元のモノではなかったぞ、あれは……。
ゲッちゃん「言っただろう? これが、"恐怖"というモノだ。恐怖に感情も、思考もなく、ただただ、そこにあるだけ。だからこそ、誰よりも公平なる判断が下せるというモノ」
ミツルギ・ヒイロ「うっ、嘘だっ!」
と、パンパンっと両手で自分の頬を叩いて、気合を入れ直した御剣さんはそう宣言する。
ミツルギ・ヒイロ「お前が、自らが良い奴って言ってもよぉ! それは結論にはならにんだぜぇ!
むしろ、俺はこう思ってるんだ! お前の仮面を剥がせば、それで犯人が分かる……そう、お前こそが、俺達をここに閉じ込めた犯人であると!」
ゲッちゃん「良い奴ではないよぉ~、ただ単に悪くないだけ」
けれども、そうか……。
そういう考え方も、あると言えば、あるか。
あいつの仮面の下、それを見る事で黒幕の正体が分かる。
----そういう考え方もあるには、ある、か。
ミツルギ・ヒイロ「さぁ、お前の仮面の下----黒幕の正体、今こそ見せてもらうぜ!
無理だというならば、強制的にはぎ取ってやっても、良いんだぜ!」
「さぁ、どうする!」と、彼はそうオワリに突き付けた。
カスガ・ハルヒAI『いや、それは……』
クノ・タマキ「無理、なのデス」
クノ・タマキ「次回は、親と子のダブル追及にナル予定デス! お楽しみ、デス!」
カスガ・ハルヒAI『えっ……私、そういう扱いなんですか? なんでこんなクソ製作者を親として認知しなければならないんですか? コイツは基のデータを、ただただパソコンの文字列に入れただけで、自分が考えている部分なんてゴミカスくらい少ないのに、それなのに親が子を産むという出産という重要なことと考えて、この女を親として----』
ミツルギ・ヒイロ「やめろぉー、ハルヒ! もう環のHPはゼロだ!」
----次回、《久能環 死す》 裁判、スタンバイ!