チャプター5 ようこそ恋愛至上主義の教室へ (非)日常編一日目(1)
ハシワタリ・レンカ「‐‐‐‐とぉ、言う訳でぇ、ここが今回、私達が恋愛する舞台♡ その名も、超恋愛船舶型常愛シアワセブチですよぉ♪」
目を覚ますと、ぼく----雪割杏平の目に浮かび上がったのは、"ピンク"だった。
桃色の下地に、ピンク色の薔薇の華や愛などが美しい色合いで描かれている。
壁も、天井も、床も、その全てがケバケバしいほどのピンク色になっている。
そんな視界をピンク一色に染め上げてしている中で、たった1人だけ。
その光景に、ピンク色に全く負けずに、1人の女子高生が立っていた。
ハシワタリ・レンカ「うふふぅ♡ 桃色の世界って、ほぉんとぉうに、さぁ・いっ・こぉ・うっ☆」
----【超逸材の恋人】、橋渡恋歌。
ぼく達と同じく、私立幸福ヶ淵学園に超逸材の才能を認められて入って来た、15人の生徒のうちの1人である。
ユキワリ・キョウヘイ「(けれども、ぼく達はだいぶ、人数を減らしてしまった)」
残っているのはぼく、そして橋渡恋歌を除くと----たった5人。
【超逸材の神】、久能環。
【超逸材のサッカー選手】、常盤木十香。
【超逸材のネイリスト】、改め【超逸材の怪盗】。小鳥遊灯里。
【超逸材のヒーロー】、御剣緋色。
【超逸材の自称冒険家】、大和歩。
そして2人を合わせて、たった7人。
最初に集まった数と比べると、半分以下になってしまっていた。
そして、橋渡恋歌を除いたぼくを含めた6人全員が、手錠をかけられて、座らされている。僕以外は、目を覚ましてないみたい、なんだけど。
いや、それよりも問題なのが1つあるが、それは後にしよう。
ユキワリ・キョウヘイ「橋渡さん……これは、いったい?」
ぼくがそう聞くと、彼女はニヤリと笑みを浮かべる。
ハシワタリ・レンカ「私はね……悲しいんです♪」
まったく、悲しみを感じさせない口調にて、橋渡恋歌はそう言っていた。
ハシワタリ・レンカ「分かっているんですか、私達は既に8人もの人間を殺したんですよ? 8人もの、貴すぎる恋人達を失くしてしまったんですよ☆
私はねぇ、そんな事をやりたかったわけではない♪ そう、全ては愛! それに繋がると思って、今までゲシュタルトの誘いを唯々諾々と受け入れてた訳なの☆ あっ、唯々諾々って、"良いっ! 抱く抱くっ!"って、夜の性行為みたいで、私のお気に入りのワードなんだけど♡」
うっとり、と「"抱いてぇ♡"と言われて、"良いっ! 抱く抱くっ!"とはいい言葉よねぇ♪」と、謎の言葉を発する橋渡さん。
その言葉を聞いているぼくからして見れば、ただ怖さしかなかった。恐怖しかなかった。狂気しか感じなかった。
ユキワリ・キョウヘイ「……なにが、目的なんですか?」
ハシワタリ・レンカ「うふふっ☆ 私の目的は、いつだって簡単で、活動的よ?
それは……これを見れば、あなたも分かるでしょ?」
橋渡さんが指さす先、そこにはぼく達にとっては馴染み深い‐‐‐‐ゲシュタルトが、ぼくと同じように捕まっていた。
ゲシュタルトは起きる様子はなく、他の皆と同じようにただ静かに眠っている。
ユキワリ・キョウヘイ「ゲシュタルトも捕まえて……橋渡さんは、今からなにをしようと企んでいるんですか?」
彼女は今、【コロシアイの怖さ】を言っていた。
8人の殺しを嘆き(?)、そしてコロシアイを強要しているゲシュタルトまで捕まえている。
今、ぼく達の運命は、この【超逸材の恋人】である橋渡恋歌によって支配されていると言っても、過言ではない。
ハシワタリ・レンカ「そぉ、邪険に扱わないで欲しいわぁ♡ キョウちゃん☆
折角、あなただけ、薬が早めに効れるように調整してたんだから☆」
ユキワリ・キョウヘイ「薬……?」
彼女は、小さな小瓶を取り出していた。
その小瓶に似たような物を、ぼくは見たことがあった。
‐‐‐‐確か、人を数秒で眠りにつかせる。そういった類の、眠り薬の薬瓶だったはずだ。
ハシワタリ・レンカ「私は、そこの死神様なんかとは違うわ☆ 私が目指すのは‐‐‐‐恋愛よぉ♡」
彼女は瞳の奥に、ハートマークを浮かばせていた。
ユキワリ・キョウヘイ「れん、あい……?」
ハシワタリ・レンカ「そぉう、コロシアイなんかよりももっと大事なことがあると思わないのぉ?
そう、世界に最も必要なのは、"愛"♡ 身勝手で、醜いコロシアイよりも、愛し、愛され、愛しつくす♡ 恋焦がれ、愛溢れる、そういう事をしましょぉよぉ♡
あなた達に、これから求めるモノ‐‐‐‐それはそう、"恋愛"です!」
ユキワリ・キョウヘイ「(恋愛……?)」
コロシアイならば、ぼく達に、お互いにお互いを殺させようとする。
けれども、橋渡恋歌が目指すのは、恋愛。
いったい、なにをさせる気なんだ?
しかし、それを聞き出すことは出来なかった。
「じゃあ、また後でぇ☆」と橋渡恋歌さんが言うと共に、急に視界がぼやけて‐‐‐‐
目が覚めると、ぼくの目の前に居たのは、
同じように困惑している、小鳥遊灯里の姿であった。
ハシワタリ・レンカ「唯々諾々って、ほぉんとぉうに、良い言葉だと思わなぁい?」