チャプター5 ようこそ恋愛至上主義の教室へ (否)日常編×日目
チャプター5、開始させていただきます
今回のタイトルの元ネタ、アニメ化されているみたいなのですが、まだ見てない……
見るべき……なん、だろうね
今はリゼロの番だから、その後にでも
なにかを生み出すという事は、なにかを壊すという事である。
創造は破壊の下で、破壊は創造の上で。
創造と破壊は紙一重の存在であり、なにかを生み出すのと同じく、なにかが破壊される。
だけれども、たいていの創作者にとって、なにかが破壊されるだなんて思っていない。
----ただ純粋に、己の夢を多くの者に伝えたいだけの、"善意の者"でしかない。
とある1人の作家の戯言と、笑ってもらって構わない。
狂信者である作家の暴言と、罵ってもらって構わない。
意味のない作家の空虚な言葉と、聞き逃してもらって構わない。
だけれども、これだけは分かって欲しい。
私は、こんな世界を生み出そうだなんて思ってなかった。
私は、こんな世界になって欲しいだなんて思ってなかった。
私は、こんな世界にして欲しいだなんて思ってなかった。
ただ私は、私の世界を皆に聞いて欲しかっただけ。
‐‐‐‐【超逸材の覆面美少女作家】 乃等野サロン
== ☆ ☆ ☆ ==
----分かりましたか、作家先生様。次の締め切りは、ちゃんと理解できてますか?
スピーカーから聞こえてくる、男の、【編集】と名乗る者の言葉に、作家である乃等野サロンはなにも応えなかった。
正確には、応えているのに無視されていた。
「私は、既に守っている。締め切りは、守っている。
私立幸福ヶ淵学園に通っていた、【超逸材の覆面美少女作家】であるこの私は、本気を出せば半日で小説一作分程度の、文章は書けるだけの、技量を持っています。
あなた達には、既に二十作以上の作品は見せています。なのに、締め切りなどと‐‐‐‐」
乃等野サロンの周囲には、何枚もの紙が落ちていた。
その全てに意味のある文字が、列となって書きこまれており、その数は少なく見積もっても万を超えた。
"缶詰め"と称して、サロンが【編集】に書かされたモノ。
サロンは【超逸材の覆面美少女作家】として私立幸福ヶ淵学園に入学し、卒業した人間。
サロンにとって物語を書くという事は、息を吸う事と同じくらい簡単で。
サロンの作風は、1人の作家としては恐ろしいほど、多種多様。ジャンルも複数に分岐していた。
ある時は、世界を救う大泥棒を描いた、人情派SF作品。
ある時は、誰もが騙されるほどの美術界の謎を鮮やかに解き明かす、王道ミステリー作品。
ある時は、一瞬で読者を虜にするほどの熱と情報が引き込ませる、反逆のファンタジー作品。
ある時は、原作を越えることが出来ないとまで言われた、珠玉のラブロマンス作品。
ある時は、一瞬で時の流行語まで登りあげさせてしまう、とある偉人の歴史紹介伝。
ある時は、特集が組まれるほど怖すぎて失神してしまう、最恐のホラー怪人作品。
ある時は、読むだけでその熱き戦闘の一瞬一瞬が思い浮かぶ、アニメ化必死の青春アクション群像劇。
ある時は、笑わせすぎて芸人が思わず師匠と呼ぶほどの、抱腹絶倒のコメディー作品。
ある時は、その作品のおかげでVRゲームが完成したとまで言われる、男女2人で大人達の嘘を暴くVRゲーム作品。
その他にも、サロンが書いた作品は多数存在しており、その全てが読者の心を的確に掴み取る、ミリオンセラーにして多大なる影響を与えるインフルエンサー的な作品だった。
----あなたは何も分かっていない。
と、そんな作家界隈の神とも評されるほどのサロンに対して、【編集】はそう断言した。
----我々がお願いしたのは、世界を変えるほどの素晴らしい作品だ。
----【超逸材の覆面美少女作家】である乃等野サロン先生ならば、既に分かっているだろう?
----読者が何を望み。
----我々、【編集】が何を待っているのか?
【編集】にそう促され、サロンの目の前に1枚の書類が落ちてきていた。
その書類のことは、サロンは何度も見ていた。
ただし、出来る限り見ないようにしていたのだ。
それはサロンにとって、書きたくなかった作品テーマだったから。
世界を救う大泥棒の活躍を描いた、『小鳥遊灯里の怪盗白書』よりも。
美術界の謎を解き明かす、『美術鑑定士ルパン・ザ・アート』よりも。
反逆のファンタジー作品である、『オクシデント』よりも。
珠玉のラブロマンス作品である、『アカハライド』よりも。
とある偉人の歴史紹介伝である、『城多タダシと尊き王』よりも。
最恐のホラー怪人作品である、『鏡の堕ち人』よりも。
アニメ化必死の青春アクション群像劇である、『ドラゴン・ハウリング』よりも。
抱腹絶倒のコメディー作品である、『水泡』よりも。
男女2人で大人達の嘘を暴くVRゲーム作品である、『スカイ・ハイ・ワールド』よりも。
どんな作品よりも、どんなテーマよりも、それは彼女が書きづらくて仕方がない作品だった。
そこにはこう書かれていた。
『人々が殺しあう、絶望的な作品』、と。
----我々が求めるのは、コロシアイ。
----我々が求めるのは、絶望。
----我々が求めるのは、悪意。
「……そんなのを書いて、何になる」
サロンは、とある事情からコロシアイが嫌いだった。
だから今までも、そういう作品は書かないようにしてきた。
多種多様に、様々なジャンルの作品を書くサロンが、唯一しない、ポリシーだった。
しかし、【編集】はそれを良しとしなかった。
こうして、乃等野サロンは【編集】に誘導されるまま、1つの作品を生み出した。
生み出して、しまった。
そのタイトルこそ、【ギフデッド~才能溢れる者達のコロシアイ学園旅行~】。