チャプター4 五等分の花骸 クロ探し裁判編(5)
-Miturugi Hero Side-
カスガ・ハルヒ「……これは、もしや"最低最悪の容疑者"の誕生なんじゃ」
春日がなにやら不思議な言葉を発していたのだが、それをちゃんと聞くことは出来なかった。
何故ならば、目をらんらんと輝かせた恋歌が、次の質問を始めていたからだ。
ハシワタリ・レンカ「えっとね、ゲシュタルトが鈴木シーサーに化けてた、という前提で始まっていたけど☆ 本当に、鈴木シーサーがゲシュタルトの代わりをしてたのかな♡」
恋歌が質問したのは、そう言うことだった。
ミツルギ・ヒイロ「(いや、そんなのは当たり前の事だろうが)」
この船、【別荘船雪国ビルドジェイソン】にてゲシュタルトと会った機会は少ない。
1回目は2日目の夜、そして2回目は3日目の朝。
今回の船でゲシュタルトが俺達の前に現れた機会、それはたったの2回だけ。
今までと比べると、圧倒的に数が少なかった。他の船と比べると圧倒的に少なくて、屋上で死体を見つけた時も結局、放送のアナウンスだけで、ゲシュタルトは来なかったのだから。
2日目の夜の際にシーサーと取引していたために、俺がそれを見て、裏切り者として思ってしまった。
皆にも、俺の浅はかな考えを伝えてしまっていた。
その次の日の朝に、今回の事件の動機である【たった1人が抱えている秘密】なんて言われてしまって、シーサー裏切りの形で進めていた。
俺が、俺なんかのせいで、シーサーを悪者にしてしまった。
その罪悪感は、俺の手からはまだ消えていない。
俺が出演したヒーロー番組で言うとするならば、あれだな。
全てを振り切る速さを手に入れながらも、大切な恋人を守れなかったヒーローの苦悩を描いた【ザ・シェイド】を思い浮かべてしまう。
あの、罪悪感。恋人を救えなかった罪悪感、罪と言う名の闇を振り払おうとする【ザ・シェイド】。
‐‐‐‐あれと、あの撮影の際にずっと重くのしかかっていた、罪悪感情と良く似ている気がする。
俺は、あのヒーロー番組の時と同じように、ヒーローが悪じゃないと思ってしまった。
シーサーが、悪であって欲しくないと思ってしまった。
----だが、今日。
シーサーの遺体のそばに、ゲシュアルトの仮面。その上でマントまであったのだ。
嘘であって欲しかった、本当に嘘であって欲しかった。
だけれども、ここまで来たら認めざるを得ない。
ミツルギ・ヒイロ「(絶対、シーサーが化けてたんだ! 自分の姿が見られたから、ゲシュタルトと言う隠れ蓑を使って、俺達から隠れてたんだっ!)」
あんなに皆で探しまくったのに、影一つ見つからないだなんて、可笑しいに決まってるじゃないか。
他の皆がどうかは分からないのだが、俺は必死になって探していた。
一部の隙すらも許さないほどに、俺はシーサーを探した。
だけれども、見つからなかった!
だったら、もうその可能性しかないだろう。
俺はこう、考えているのだ。
あの2回目、動機を告げに来たゲシュタルトはシーサーの変装で、だからこそ見つからなかったのだと。
タカナシ・アカリ「橋渡さん、確かに話すべきところですね。そこは。
一応、ゲシュタルトの格好はありましたが、それを使っているかは分からないですし」
ミツルギ・ヒイロ「マジ、かっ!?」
うっそ、そんなのは早めに決定事項だと思ってたのにっ!?
もう話さなくても良いや、くらいに思っていたのに?!
ゲシュタルト《ぐふふぅ! 君達、なにか勘違いしてないかぁい?
オマエラはボクが、オマエラのような下等な生き物に代わってもらったと? あり得ないねぇ、どこにそんな証拠があるって言うんだい?》
トキワギ・トオカ「えっと、じゃあゲシュタルトッチは、もし別の人物に自分の立場を変わって貰ったという証拠を見つけたら、シーサーッチと入れ替わっていた、とか認めてくれたり?」
十香!! なんて事を提案してんだ!!
たとえ証拠を見つけたとしても、それが誰と入れ替わったとか、認めるはずがねぇだろうが!!
ゲシュタルト《ぐふふぅ! 良いよ、良いよぉ! 本来だったらそんな提案受けないんだけどさぁ、良いよぉ! 良いよぉ!
もし仮に、ゲシュタルトの変装の証拠を見つけたら、シーサーと入れ替わった、なーんて認めてあげようじゃないか。実際、シーサーがオマエラに見つからない場所なんて、そこしかねぇだろうしなぁ!》
ミツルギ・ヒイロ「マジかっ! マジかよ!」
……いや、それだけ自信があるという事か。
確かにゲシュタルトの格好は仮面に黒いマント、などという、例え入れ替わったとしても分からないからな。
入れ替わったとしても、本当か証明できない。
だからこその決断、か。
ミツルギ・ヒイロ「そうか、それだけ難しい話なんだな。分かったぜ、そこを頑張って突き詰めていくとしようじゃないか。
さぁ、春日。まずは何から話すとするか?」
カスガ・ハルヒ「……なんで、それを聞くのが私、何でしょうか。このヒーロー馬鹿野郎は。
確かに、あんな正体隠しの常とう手段的な格好を崩すのは難しそうですが‐‐‐‐どうも、スケットにはなにか考えがあるみたいですね」
春日に言われてみると、確かに杏平はニヤリと笑っていた。
明らかにあれは、嬉しそうな顔だ。
ユキワリ・キョウヘイ「なぁ、久能さん」
クノ・タマキ「……なんですか、スケットさん。ワタシは、神ではありません。ただ神から落とされた、ごく普通の超人です……」
ヤマト・アユム「神から落ちても、自己主張が激しいなぁ……と、思うよ」
杏平は環に声をかけた。
いや、実際には手に証拠を1つ持った状態で、環に話しかけてる?
あれは‐‐‐‐確か、環から貰った、ゲームか?
ユキワリ・キョウヘイ「久能さんから貰った完成版『神の記憶ノベライズ』。これには初日、ゲシュタルトに会った際の久能さんの記憶をゲーム化したもの、で。この完成品とあって、画像データも収録されているんだよな?」
タカナシ・アカリ「そうか、画像データ……!」
えっ? どういうこと? なんでゲームが、ゲシュタルトの偽装かどうかに関わってくるんだ?
俺が分からない内に、杏平は勝手にゲームのプレイを始めていた。
ユキワリ・キョウヘイ「確か、久能さんは初日でゲシュタルトにあの白い地図を貰った、なんて言ってたよな?
その時に、1つ。気になった所があって、あっ、ここだ! ここ!」
と、京平が止めて見せた場所。
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>そんな事を思っていると、彼のと同じ色の地図を渡される
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テキスト文章にはそんな文章が書かれていて、
画面には、白い地図を手渡すゲシュタルトの姿があった。
いつもとは違う、明らかに別種の白さで。
ゲシュタルト《ぎゃあああああああああああ! シーサーのやろぉぉぉぉぉぉぉ!
なんで白なんか来てんだよぉぉぉぉぉぉぉ!》
クノ・タマキ「えっ、なんで白!? 作ってた時は気付かなかったのに!」
カスガ・ハルヒ「いや、作ってた本人は気付きなさいよ……」
ゲシュタルトが発狂し、環が見比べて驚いており、春日は心底呆れていた。
しかし、これで良い流れが来ている! ゲシュタルトは先程掘った墓穴によって、裏取引の存在が明らかとなった。
シーサーは、何故かは分からないが、ゲシュタルトの格好をしていた。
ゲシュタルトと、取引をしていた。
それが明らかとなっていた。
ミツルギ・ヒイロ「(よしっ! これから、シーサーとゲシュタルトとの取引を重点的に攻めていくぞっ!)」
しかし、俺の夢は叶わなかった。
‐‐‐‐彼女が、場の流れを変え始めたから。
カスガ・ハルヒ「この、犯罪者風情がぁ!」
アイツの指先は、俺を指していた。
カスガ・ハルヒ「あなたを詐欺罪と殺人罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?あなたが皆をこんな証言で騙し、裁判をかき乱したからです!覚悟の準備をしておいて下さい。今から訴えます。裁判にも巻き込みます。裁判所にも問答無用で追及します。死ぬ覚悟の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!冥府の扉をくぐるので楽しみにしておいて下さい!いいですね!」




