チャプター4 五等分の花骸 非日常編(3)
-Miturugi Hero Side-
歩が呼ぶ声が聞こえたので、俺と杏平、灯里の3人で下まで降りる。
1階へと降りようとした際に、屋上から2人が降りてきた。
トキワギ・トオカ「よぉし! あたしも頑張るよぉ!」
カスガ・ハルヒ「それじゃあ、私はこの辺でドロンと……」
どうやら、春日はちゃんと十香の相手をしててくれていたようだ。
十香の顔を見ていれば分かる。春日が具体的に何をしたかまでは分からないが、あの優しそうな顔を見る限り、十香が吹っ切れた、その事だけは分かる。
クノ・タマキ「うぅ……!」
トキワギ・トオカ「どうしたの、タマキッチ!」
クノ・タマキ「汚された……尋問で、汚された……」
トキワギ・トオカ「なにぃ! あの3人、タマキッチにどんな質問を!?」
‐‐‐‐あとで、環とはどうしてそういう結論が出たのかを、しっかり"おはなし"するとして、本題に戻ろう。
1階へと降りた俺達は、大きな布を持った歩と合流した。
ミツルギ・ヒイロ「歩! その布は……?」
ヤマト・アユム「これはね、倉庫で見つけたんだよ。なんか黒い布とか、ゲシュタルトの仮面っぽいのも見つけたんだけど、多分だけど、鈴木さんが使用していたモノだと、思うよ?
鈴木シーサーの付けている般若面とかもあったし、その上で食べかけのこういうのも見つかったし」
布を床に置いた歩は、ポケットから携帯食料を取り出した。
なんでこれで歩がいたことか、俺には分からなかったが、俺よりもずっと頭がいい灯里にはどうやら分かったようだ。
タカナシ・アカリ「なるほど……非常食、ですか」
ミツルギ・ヒイロ「俺にも分かるよう、説明してくれないか? なんでこれで、倉庫でシーサーが居たという結論になるのかを」
俺がそう聞くと、「状況ですよ」と灯里はそう答えた。
タカナシ・アカリ「彼、鈴木シーサーはゲシュタルトの言葉によって、裏切り者……と言うより、皆の前に出づらかった。実際、私達が探しても見つからなかったとなると、彼は隠れていた。
なにか事情が違うにしろ、隠れていたのは事実です。そんな隠れていた彼でも、お腹がすきます。隠れていた彼が食べることが出来るものなんて」
……そうか! 非常食!
食堂に出入りできない彼は、ひっそりとこういったモノで食事をとっていたという事か。
ユキワリ・キョウヘイ「……あれ? でも確か、倉庫って御剣さんと春日さん、それに常盤木さんの3人で探してたんじゃ」
ミツルギ・ヒイロ「そう、だな。ゲシュタルトを追いかけた際に」
でも、その時はそんな布団だとか、非常食だとかは見つからなかった。
どこかに隠していたか、それか後で倉庫に移動させた? 隠していたのかどうかは分からないが、後者だとすればなんで倉庫に移動させたのかが分からないが。
しいて言えば……見つけさせるため、とかか?
それだと、さらに意味が分からないが。
ヤマト・アユム「あと、ね! こんなのを見つけたりしたんだよ」
ユキワリ・キョウヘイ「どれどれ……これは?」
歩が出した白い紙を、杏平が変な目で見ている。
途中で横入りするかのような形で見始めた灯里も、杏平と同じようにどこか妙な目で見ている。
ユキワリ・キョウヘイ「これは……いったい?」
タカナシ・アカリ「でも、変ですよね」
いったい、どういう事?
どういう事、なんだろうと思って、俺も見せて貰った。
それは、地図だった。
このビルドジェイソンの、見取り図。ただし、前見たモノではない、もう1枚の地図。
【東館】、【西館】、【本館】といった文字はなく、それぞれ【旅の間】、【お風呂の間】、【鬼の間】ある別の文字が並んでいる。
【東館】と【西館】の位置関係も違うし、それになにか血のような跡が並んでいる。
それ以上に、気になっている事とすれば、良く分からない会話のような文字が書いてある。
【いきのころう i】
【きっとだ I】
【ここにひそむ i】
【ここにかくす I】
書いてあるのはこの辺りだが……なんだ、この『I』と『i』は。
倉庫の上の方に、【ここにひそむ】と書いてあるから、多分この『i』というのは、シーサーのことか?
だとするならば、『I』って言うのは誰だ?
《ぐふふぅ! さぁ、オマエラ! 捜査の時間は十分に与えてやったぞぉ~。オマエラ、お風呂がある館の1階に集まるんだよぉ! ぐふふぅ、こぉんな、寒い船はもう終わりにしようじゃないかぁ!
これからオマエラがするのは、裁判だ。オマエラが、オマエラによって、オマエラのために行う裁判。
鈴木シーサーを殺して、この船から出ようとしたのは誰なのか? ワックワクで、ドッキドキで、キッレキレなクロ探し裁判の開幕だよぉ~!》
ミツルギ・ヒイロ「ちっ……! もう捜査、終わりかよ」
もっと調べたい場所とか、色々とあったのに。
……いや、待て。
なにか、見落としているぞ。そうだ、なにか忘れてる……。
スズキ・シーサー『では、そのようにしよう』
ゲシュタルト『ぐふふぅ! そうだねぇ、これでワックワクで、ドッキドキな殺人が出来るねぇ!』
スズキ・シーサー『油断も……隙も、ない』
……そうだ、俺はあの日の夜。
ゲシュタルトと、シーサーが会っているのを目撃した。
けれども、シーサーがゲシュタルトの格好をしていたであろう、仮面やマントといったモノも見つかっている。
にもかかわらず、ゲシュタルトとシーサーが会っていた?
じゃあ、あの時、ゲシュタルトの格好をしていたのは、誰なんだ? 犯人、か?
・倉庫の生活跡
…倉庫で毛布や非常食など、鈴木シーサーが生活していた跡が発見される。
・もう1枚の地図
…大和歩が倉庫で見つけた、2枚目の地図。1枚目とは違い、血の跡など良く分からない文字が書かれている。
・地図に書いてある会話文字
…地図で赤い文字で書いてある、『I』と『i』という2人の会話。
内容>【いきのころう i】
>【きっとだ I】
>【ここにひそむ i】
>【ここにかくす I】
・俺が見た密会
…御剣緋色が発見した、謎の密会。ゲシュタルトと、鈴木シーサーが密会していたという内容。
・ゲシュタルトの第4回アナウンス
…ゲシュタルトが流したアナウンス。【こぉんな、寒い船はもう終わりにしようじゃないかぁ!】などと、いつもとは違う内容が流れていた。