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英雄に育てられた少女は、どうやら世界を救うようです!  作者: 喜山 涼
第3章 「やがて夜空を照らす者達へ」
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3章ー16話 「特待生、集う」


 時間は少しだけ遡る。


 ここはサリスタン国立中央学院の1-1教室内。教室内部は教壇から扇型に広がり、机と座席が階段状に配置されている階段教室だ。

 クラス内は制服姿の生徒で溢れていた。そして、恐らくみな顔見知りなのだろう、既に教室内ではいくつかのグループのようなものが形成されており、会話が各所で飛び交っている。


 その制服姿の生徒たちとは異なる私服姿の生徒がいる。最上段からひとつ前の座席、そこには二人の少女が座っていた。


 一人は黒い髪を自身の首あたりの長さで切り揃えたおかっぱのような髪型が特徴的な少女。

 一人は水色と白を合わせたような髪がベールから少しはみ出している修道服姿の少女。


「わわわっ、皆さん仲良しですね~。私も話しかけた方がいいのかな…うーんでも、緊張しますし…。ねぇ、フェリアちゃん、フェリアちゃん、どうやって話しかければいいんでしょう?」


「いや、私に聞くなよ。というか年上相手にちゃん付けはやめなさい」


「だから何度も言ってますけど私の方が年上なんです! フェリアちゃん十五歳でしょ」


 そう言ってプンスカと怒る修道服の少女。しかし、どう見てもその年齢は十五歳より年上には見えない。 

 おかっぱ少女も同様にそう思ったのか、まるで小さい子どもをあやすかのように柔和な笑みを浮かべる。


「うん、まぁ背伸びしたいのもわかるよ、私にも妹がいるから。そういう年頃だよね~」


「いえ、違うのですけど…。うーん…はい、今日のところは諦めます。慣れてますんで…」


 ガックリとうなだれる修道服の少女。その様子を尻目にフェリアと呼ばれた少女は机に頬杖をつくと、視線の先の同級生たちを眺め、


「しっかし、やっぱりあっち行きたかったな~。こんなぬるま湯じゃ、三年間が無駄になっちゃう」


「こら、フェリアちゃん。他の皆さんに失礼でしょ、聞こえたらどうするの」


「そういわれてもなー。内部進学組が強いって聞いたのにこの様子じゃねぇ…。今現在、個人的に興味あるのが結局のところ同族のミリアンと後ろの彼だけだし。ねぇ、あんたはどう思う? 魔法使いさん」


 ぐるりと顔を回し、後ろを振り返ってそう声をかける。

 そこにはローブ姿の一人の少年がいた。フードを深くかぶりその顔全体を見ることはできないが、右の瞳には眼帯を付け、左の瞳が銀の煌めきを放っているのが特徴的だ。


 そんな魔法使いの少年はいきなりのフェリアの問いかけにビクッと体をはねさせた。

 その様子にフェリアが首を傾げるが、しかし次の瞬間ササッとフードで覆われた顔を少し横に向けると、


「俺は興味ないな」


「ハッ、クールなことで」


 それで会話は終わりとばかりに口を閉ざす魔法使いの少年に、フェリアは軽く笑い視線を前方へと戻す。 

 少し前から会話を試みているが、この少年はフェリアとミリアンが声をかけても大体一言で会話を打ち切ってしまっていた。だが、話しかけてる二人も出会って数分ということもあり、大して気にした様子もない。


「そういやあと二人、同族が来てないわね。ミリアン知ってる?」


「いいえ、少なくとも私は自分以外の特待生に関しては何も知らされてませんよ。正直言うとすっごい怖い人達なんだろうなと思っていたんですが、フェリアちゃんやルークくんのような優しそうな子たちで驚いてます。きっと他の二人もいい子ですよ」


 安心したような笑顔でそう告げるミリアン。

 ちなみにルークというのはミリアンが聞いた後ろの魔法使いの少年の名前だ。「はじめまして、お名前をお聞きしてもいいですか?」というミリアンの問いに、顔を横に向けながらのを「ルーク」という一言だけの自己紹介だったが、ミリアンはそれだけで何となく少年の内に秘めた優しさがわかったような気がしていた。


「優しいかどうかは知らないけど、まあ私としては強い奴の方がいいな。そして剣士なら、なおい―――」


 その時、なおいい、と言いかけたフェリアの声を遮るようにドアが開く音が教室に響く。おそらく相当強い力で思いっきり開けたのだろう。そして、その音に惹きつけられるかのように教室内の大半の生徒の視線がそこに集中する。


 そこには二人の男女の姿があった。

 一人は黒みがかった黄色の髪の双剣を腰に差した堂々とした様子の少年。

 一人は鮮やかな長い金髪の腰に木剣を差したキョロキョロと辺りを見渡す美しい少女。


「あー、どう見てもあれが残り二人だね。制服着てないうえに、何か田舎者臭が凄い」


 そんな二人を見てフェリアが頬杖をつきながら呟く。しかし、その視線が金髪の少女の腰の木剣へと行き着き「おっ!」と嬉しそうな声を上げる。

 そんなフェリアの少しの変化に気付かず、ミリアンは「へ~」と楽しげにその二人を眺めていた。


「元気そうな子と綺麗な子ですね~」


「うん、まあどっちも癖が強そうだけど面白そうだ。あと、ミリアン。ちょっと席変わってもらってもいい?」


「? 別に私は構いませんけど?」


 突然のフェリアの申し出に首を傾げながらも了承するミリアン。フェリアは「ありがと」と礼を述べると、足を席の上に乗せて席と机の間を通路を通れるようにしたミリアンの前を通り、先程までミリアンが座っていた通路側の席へと腰を下ろす。


 そんな光景を見ながら、後ろに座るルークは気付く。

 フェリアの右手が腰に差した二振りの剣のうちの一つ、恐らく鍛錬用に使うであろう木剣へと添えられていたことを。


 ――これは絶対なんかやるよ、この子…


 楽しそうなフェリアの横顔を後ろから眺めて、ルークはそんなことをどんよりしながら思っていた。

 

 結局、師匠に半強制的にこの学園へ入学させられたルークだったが、本人の予想通り現状他の生徒との交流が満足にできていない。

 先程から何度か話しかけられてはいるが、そもそも同年代の異性などほぼ喋ったことなどなかったため、一言二言の返答が精いっぱいだった。

 これがあと三年。考えただけで眩暈がしてくる。

 自分はやっていけるのだろうか? いや、やっていけない。

 頭の中でそう結論を出すが、やっていかなくてはいけないというのが現実だ。


「師匠~」


 結局、自分にはどうすることもできないため、ルークは一人誰にも聞こえないくらい小さな声で、情けなくそう呟いたのだった。 

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