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英雄に育てられた少女は、どうやら世界を救うようです!  作者: 喜山 涼
第3章 「やがて夜空を照らす者達へ」
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3章ー11話 「英雄たちの舞台裏」


「ここの花壇は少し特殊でね、この石碑に添えるために摘もうとした時だけ綺麗に摘める魔法がかかっているんだ」


「なるほど、確かに何の抵抗もなく綺麗に摘めますね」


 花壇から一つ赤色の花を手に取りアイリスが答える。

 触れただけでまるで手に吸い付くように花は地面から離れた。デイジーが言うように、ほのかに花壇からは魔力のようなものが感じ取れる。

 

「では、行ってみようか」


「はい」


 互いに数本の花を手に持ったまま石碑へと足を向ける。

 今現在は人はいない、ただ巨大な二つの石碑だけが静謐な雰囲気を醸し出してそこに存在していた。


 デイジーが手元の花を二つに分けて両の石碑へと添える。アイリスもそれに習い、右手の石碑に赤い花を左手の石碑に黄色い花を丁寧に添えた。

 石碑の表面には先程デイジーが挙げた二つの名と長い追悼の文言が刻まれている。それを見るだけで王国の歴史を肌で感じている様な気分にさせられる。


「よくここには来るんですか?」


「いや、年に数回程度だ。まあ私は信心深いわけではないが、この方々の戦いのおかげで今の王国や今の私たちの存在があると考えれば、花ぐらい添えたくなるものだ」


「そうですね。なんだか分かる気がします」


 小さいころから色んな物語を読み、その存在や栄光を知ってきたこの国を造った英雄たち。彼らの戦いがあったから今の世界が存在しているのだ。

 そんな物語の登場人物のような英雄が目の前に眠っているということが何だか不思議だった。

 だが、それと同じく最初から気にかかっていた疑問もあった。


「ねえデイジーさん。他の三人の初代五勇星のお墓はこの場所とは別の所にあるんですか?」


 そう彼らは五勇星なのだ。なら他に三人は?

 そんな疑問にデイジーは「ふむ」と顎に手を当て、


「いや、そんなものは存在しない」


「存在しない?」


「正確に言うと、他の三人においては王国がその死を確認していないため造られていないと言った方が正しいな」


「え!? 生きてるってことですか!?」


 思わず飛び出たアイリスの言葉にデイジーが一瞬停止し、フフッと笑う。

 

「中々面白い意見だが、さすがに五百年前の人物が生きているというのは現実味が乏しいな」


「……ですよね」


 何故そんなことを言ってしまったのか、アイリスは自問自答して頬を朱に染める。思えば、王国建国期の人間が生きているはずなどない。当然と言えば当然だ。

 そんなアイリスを微笑ましそうに見て、デイジーは続ける。


「ここに眠る二人は、王国でその生涯を閉じた。だが他の三人は違う。何故なら『武拳星』ミレスタ・リンガーバックは建国から二年後、『純剣星』リレイシュ・アカルディアは十五年後、そして『聖女』リーヴァイン・サリスタンは夫―つまりグリシラ・サリスタンが死んでから二年後にそれぞれ王国を去っている」


「…初耳です」


「まあ絵本とか伝記だと大体は王国建国までの歴史しか語られんからな。知るには個人の歴史を調べなければいけない。その後ミレスタだけは各地で目撃談が挙がったが、他の二人の王国を出てからの足取りは完全に不明。結局、その三人の最後は未だに明らかにはされていないというわけさ」


 それは今まで聞いたことのない英雄の裏の歴史だった。当然と言えば当然だ、物語で描写されるのは華々しい場面だけ、現にアイリスは今までその英雄たちの最後について知らなかったのだから。


「――英雄にも、色々とあるんですね」


「ああ、彼らが何を考えて国を出たのかを今知るすべはないが、キミの言うように色々とあるのだろう。だが今も彼らの意思は形を変え、王国を守護する英雄の役割は今代の五勇星に引き継がれている。何事も継ぐ者が現れるということだ」


 そこまで言ってデイジーは踵を返し、石碑に背を向ける。

 きっと彼女も誰かの遺志を継ぎ、『中央魔道局』の局長という地位にいるのだろう。その背中を見てアイリスはふとそんなことを思った。


「さて、そろそろ暗くなってきた。家に帰るとしよう」


「はい」


 ――自分はこれから先、何を為すのだろうか。

 

 少女は歴史の英雄たちに触れ、そんな思いを胸に抱いたのだった。



 デイジー邸に到着した頃にはすでに日は完全に落ちて、街の街灯が世界を照らしている時間帯だった。

 今日の料理は相談の結果、アイリスが作ることになり、その材料を買うために途中お店に寄ったのも遅くなった要因だ。

 

「おや、手紙が来ているな」


 アイリスが張り切って、頭の中で作るメニューを思い描いていると、前を歩いていたデイジーが自宅の郵便受けを開けてそんな声を漏らす。

 別に手紙が来ることなど珍しくは無い。しかし、その宛名を見てデイジーは「むっ…」と訝しむような声を漏らす。そして、


「アイリス。キミに手紙だ」


「えっ…!? あたしにですか?」

 

 その手紙をアイリスへと手渡した。

 正直アイリスとしても奇妙でならない。なぜならアイリスがデイジー邸に着いたのは昨日、そして何より他の誰にもここに来ることは言っていなかった。


「えっと、差出人は――シャーリー!?」


 そこに書かれた名前を見てアイリスは驚きの声を上げる。そして、よく見たらその手紙には消印が無かった。つまり誰かが直接デイジーの家の郵便受けに入れたということだ。

 アイリスは首を傾げつ、封を切る。中には手紙が一枚に書類が数枚。

 そして、その中から一番前に入れてあった一枚の書類を取出し、


「サリスタン国立中央学院・入学案内?」


 と疑問調でその書類に明記された言葉を声に出した。

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