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英雄に育てられた少女は、どうやら世界を救うようです!  作者: 喜山 涼
第3章 「やがて夜空を照らす者達へ」
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3章ー10話 「観光と王都についてのあれこれ」


「よし、準備完了。では行こうか、アイリス」


「行くところは決まってるんですか?」


「一応は決まっているが、どこか行きたい所があるんならそれに合わせるぞ?」


「いえ、あたしは全く王都についてはわからないんでお任せします」


 翌朝、アイリスとデイジーは自宅の前で出かけ支度を終えた状態で話していた。

 アイリスはいつも通りのグリシラからもらった冒険服、デイジーは魔法使いらしい淡い赤色のローブ姿だ。

 

「よし、じゃあこの王都について色々と話しながら歩こうか」


「はい!」


 デイジーの提案にアイリスが頷く。少しその顔には高揚が見られる。初めての王都観光なので少し心が躍っているのだろう。

 そんな様子をデイジーは自然と笑みを浮かべながら眺め、そして二人は軽快な足取りで歩き出した。


 昨日、アイリスとシャーリーが王都に着いたのは正午あたり。

 そのため歩きながら見る王都の人の流れは昨日とは少し異なって見える。

 そして、言っていた通りデイジーは歩きながら、王都についての知識のないアイリスに懇切丁寧に説明してくれた。


 まずこのサリスタン王国の中心――王都は王族の住む王城を中心とし、そこから東西南北の四区に割けられている。その四区を区切る四つの道が中央一番通りから中央四番通りと呼称されている。

 東西南北の全ての地区にはそれぞれ特色があり、店や料理なども少し違うらしい。

 そして、今アイリス達がいるのは東地区。『中央魔道局』の本局も同じく東地区だ。東地区には王都の主要な機関が複数置かれているらしく、他にも『近衛騎士団』の本部も東地区にあるようだ。


「そう言えば、聞いたところによるとアイリスはどちらかと言えば魔法より剣に重きを置いてるらしいな。やっぱり『近衛騎士団』は気になるかい?」


「…まぁ、多少はありますね。やっぱり王都だと強い剣士の方が多いんですか?」


 王都の魔法使い全てを統括するデイジーに『近衛騎士団』が気になるというのは少し気が引けたが、デイジーは気にした素振りを全く見せずに会話を続ける。


「ああ、恥ずかしい話だがこと戦闘に置いてはうちは『近衛騎士団』より少し劣るだろうな」


 曰く、サリスタン王国の魔法使いと剣士の戦力はだいたい同程度らしい。しかし、その戦力が王都にいるか否かは雲泥の差のようだ。

 

「王国の魔法使いの主戦力は、『魔法星』の直弟子だ。だがその直弟子で『中央魔道局』所属は私だけ、後は王城に駐屯している魔法使いに私の妹弟子が一人いるくらいだな。対して『近衛騎士団』にはこの国のトップクラスにあたる剣士のほとんどが所属している。もちろんキミの父親や第二王子のような例外もいるが」


 今まで聞いたことのない王国の戦力のあり方にアイリスは素直に感心する。しかし、一つ気にかかることもあった。

 それはシャーリーの話にも出ていた王家の第二王子。シャーリーの話によると五百年ぶりに初代王にしか扱えなかった聖剣をその腰に差した男らしい。

 そんなことを考えているアイリスを見て、何かを察したかのようにデイジーは、


「ああ、第二王子か。――確かにあれは特別だ。魔力量もさることながら剣の腕も『近衛騎士団』で十分通用するレベルと聞く。たしか歳はアイリスより二つ上だったかな」


「へぇー、あんまり歳が変わらないのに凄いですね。有名なんですか」


「ああ、”剣神の再来”ウィリアス・サリスタンなんて言われている。他にも『近衛騎士団』にいる”神域の左片手”リアナ・リシリアや”流水剣舞”フローア・オースリンもアイリスより少し年上くらいだな」


 そう言って、アイリスと年の近いらしい実力者の名を上げる。どれもこれも聞いたことのない名前ばかりだ。

 しかし、アイリスはデイジーの意図とは違うある一点に興味を示した。


「その異名みたいのかっこいいですね」


「…かっこいいかい? キミは変わったところに興味を示すんだな」


 少し困惑したようなデイジーの顔。

 しかし、アイリスは「そんなことないですよ」と大真面目な顔をする。


「あー、まあ異名というより通り名のようなものだな。実績を積み、有名になれば誰かが必ずそういう二つ名を付けるものだ」


「デイジーさんもあるんですか?」


「ああ、一応あるが―――おっ、着いた様だ」


 そう言ってデイジーは視線を建物へと向ける。

 話が途中で切り上げられアイリスとしては少し気になるが、しかしそれは目の前の建物の衝撃に上書きされる。

 大きさは昨日見た中央魔道局と同じくらいだろう。しかし、入口あたりに展覧されている商品を見るとその建物は恐らく、


「ここは王都で五本の指に入るほど大きな書店だ。昨日のキミのリアクションを見るとこういう場所も好きなのではと思ったのだが」


「大好きです! 入って大丈夫ですか?」


「フフッ、もちろんだ」


 その返答を聞き、アイリスはデイジーと共に緊張した面持ちでその初めて大型の書店へと足を踏み入れた。


 

 その後、アイリスはデイジーの案内の元、王都東地区の色々な場所を巡った。

 昼食はデイジーが部下から教わったらしい少し洒落たカフェのような店で取り、初めて王都の料理を堪能した。

 

 そして、空に少しだけ夕焼けの兆しが見え始めた頃に二人は観光名所と思しき大きな公園に来ていた。

 平日の夕方とあって、人はまばらだがキチンとした正門や売店があり、観光地としての形が見て取れる。


「ここは、昼間は平日でもそこそこ人がいるんだがさすがにこの時間になると少なくなるな」


「そうなんですか。でもよかったです、人が多いと疲れますしね」


「む? キミも人が多い場所は苦手か?」


「はい、昨日は人に酔いました」


「同じだな、私もキミと同じくらいの歳で初めて王都に来たときは人ごみに気分を悪くさせられたものだ」


 そう言って、デイジーは嫌なものを思い出したように口をへの字に曲げる。お互いに笑いあう。

 昨日、今日でアイリスは何となくデイジーと自分が似ていることに気付いた。料理や本と言った好みが似ていたり、意外と几帳面だったり神経質だったりと性格的な面も似ている。

 それが何だか本物の姉妹の様だったりで、心情的には嬉し恥ずかしといった感じだ。決して悪い気分ではなかった。

 そんなことを考えながらデイジーの横を歩いていると、「着いたぞ」という声が掛かる。


 そこは大きな広場の様になっていた。辺りには花が咲き誇る花壇が多く存在し、その花壇を囲むように小さな水路が何本か引かれていた。

 そして、広場の中央。そこにはまるで何かを弔っているかのような二つの石碑。それを見てアイリスが首意を傾げていると、


「ここはサリスタン国立公園。王国が運営する最大規模の公園であり、そしてこの場所は二人の英雄の墓でもある」


 横からデイジーの説明が入る。

 そして国立公園にある英雄の墓。それはつまり、


「ここに眠っているのは初代王国五勇星。『聖剣星』グリシラ・サリスタンと『魔法星』ムファム・クロックの二人だ」

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