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2章ー41話 「再生の秘密」


「さてと――どうしたものかね」


 再生した新しい首を携えたリジェネを見上げながら、アイリスが呟く。その声には少しの驚きはあっても恐怖は無い。とても落ち着いた声音だ。

 山猿も同様。「ほー」と何か感心したような声を上げながらリジェネを眺めている。

 

 そんな二人を緑の瞳がギロッと捉えた。

 一度首を飛ばされてもその怒りは静まるどころか、より熱せられているようにさえ思えるような憤怒の形相だ。

 そして、


「ころすっ…! ころしてやるぞ!! それがあのかたからいただいた…われのやくめだ!!!! かならず、かならずっ!!」


 口汚く怨嗟の言葉をまき散らし、魔力が体中から溢れ出す。

 バキバキ、バキバキ――。

 再びの音。それは『増殖』の前兆だ。


 しかし――、今回は今までとは少し異なっていた。

 中々止まない音。それを訝しげな眼でアイリスが眺めていると、


 ――バギッ!


 何かが砕けるような音が耳に届く。

 そして、


「う、うおおおおおおおおおおおお!!」


 咆哮と共に背中から大量の腕が飛び出す。先程とは比べ物にならない量の腕。

 それが一斉にアイリスたちのいる地点へと襲いかかってきた。

 視界を覆うほどの質量。


「ちょっ!? 『サフリウス』!」


「うお!?」


 正面から受けるのは得策ではないと判断したアイリスと山猿が後ろへ飛び退く。

 その際アイリスは先程の放出で無防備となっていた木剣に再び付加魔法をかける。

 先程まで立っていた地面がひび割れ、穿たれていた。


「こりゃあ、キリがねーな。しかも、腕の生えるスピードも上がってやがる」


「そうね、今は腕周辺と背中からだけど――このままいくと全身から生えてきそうね」


 退避しながら、空中で言葉を交わす。

 まだ余裕はあったが、いまいち目の前の魔物の底がわからないでいた。

 

『あー、もしもし。声は届いているかな?』

 

「うおっ!」 


 そんな二人の頭の中に突然声が反響する。

 聞き慣れたシルクールの軽そうな声だった。

 どうやって頭の中に直接声を響かせているのか? そんな疑問が当然浮かぶが今はそれよりも重要なことがある。


「何かわかったの?」


 アイリスが地面に着地し、前方からくる腕をさばきながら静かに問いかける。


『フフッ、この状況で落ち着いてるのはさすがだね。うん、一つだけ。山猿くんが首を飛ばした瞬間、その時にやつの体内の十四か所に魔力の活性化が見られた。おそらくそれが―――』


「再生の核ね」


『そのとおり。でも、実際に見てみないことには核が何であるのかは分からない。アイリスちゃんが大きい一撃打ち込んだ場所にも反応があったんだけど、心当たりは?』


 シルクールの問いに、アイリスは戦いながら思案する。

 そして、一つだけ頭の中に引っかかるものがあった。

 それは、あの時見た一つの遺物。


「――あいつの体の中に銀色の球体があった」


『ビンゴ、確実にそれだ! といっても十四個もあったのは予想外だ、地道に一個ずつ砕いていくしかない。全部壊せば再生は起こらない…かな?』


 シルクールの思い悩むような、少し納得がいかない様な声。

 しかし、現場の二人はすでに動き出していた。

 

 山猿が全速力で前方へと飛び出し、


「話は?」


「もちろん聞いてたぜ、まずは試してみなけりゃ始まらねえ。たしか…右肩だったか、喜べ金髪、俺様が完全アシストに徹してやるぜ!」


「そりゃどうも」


 山猿の言葉の意図を察したアイリスがその後ろに付く。

 

「しねえええええぇ!!」


 前方から再び、腕の放流。

 それらすべてを二人の剣士は撃ち落とし、進撃する。

 そのまま必然的に距離は縮まっていった。

 山猿が双剣を二つを平行に構える。そして、


「一点集中――」


 そのまま足にグッと力を籠め、前方へと飛び出して全身で突きを放つ。

 またもや雷の魔力を放った一撃。

 突き出した双剣はそのまま、リジェネの右肩を貫き、大穴を穿つ。


 目を凝らす。そして、

 その瞬間、再びアイリスの瞳が確かに捉えた。銀色に光る球体を――。


 パリン、とガラス細工の砕けるような音が『死の森』に響く。

 アイリスが山猿の後ろから同じように飛び出し、再生の核を破壊した音だった。

 硬度はほぼゼロ。全く抵抗はなかった。


 これで、残りはあと十三個。

 多いが気の遠くなるような程ではない。このままいけば決着は時間の問題だった。


 そう、シルクールの仮説があっていれば―――。


「なっ!?」 


 アイリスが振り返り、その光景に思わず声を漏らす。

 山猿が撃ち込んだ傷。それの『再生』が行われていた。

 しかし、それ自体は何ら不思議なことではない。他の再生の核が残っているため、それらが直しているだけだと思えた。

 予想外だったのはただ一点。

 

 ―――アイリスが壊した再生の核すらも、『再生』していたのだ。


 次の瞬間。

 絶句するアイリスに向かい、一本の腕が伸びてくる。

 驚いてはいたが、これまで通りに打ち払おうとするアイリス。

 

 そんな時、その瞳が捉えた。

 腕の先、その掌。そこに何らかの文字が書き込まれている。

 何が書かれているかは読み取れない。しかし、それが何らかの術式であることはわかった。

 全身に悪寒が奔り、脳が警告を鳴らす。


「くっ! 『フォルアクリス』」


 咄嗟に木剣を盾にして、同じく前方に水の盾を出現させる。

 

 そして、次の瞬間。

 掌から、紫に光る禍々しい光が放たれ、アイリスを飲み込んだ。

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