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2章ー18話 「スパルタ教官」


 時は少しだけ遡る。


「ねぇ、シャーリーって剣は使えるの? ずっと腰に差してるけど」


 二人で並んで道を歩いている最中にアイリスがシャーリーの腰の剣を眺めて、そう疑問を口にする。

 どの問いにシャーリーは気まずそうな顔で、


「いえ、魔法もたいして出来るわけではないんですけど…本当に剣はからっきしでして。差している剣自体は家に伝わる由緒正しい立派な剣だけに申し訳がなくて…」


「ふーん、なるほどね」


 シャーリーが多少の魔法の心得があることはアクリエルを出発する前に聞いていた。どうやら家で習っていたようだ。

 アイリスが相槌を打ちながら、再びシャーリーの腰の剣に目を向けながら顎に手を当てる。


「純剣…いや、たぶん聖剣かな? 魔剣ではないと思うんだけど」


「えっと、これは聖剣です。私の家には代々伝わる聖剣が何振りかあって私の兄弟全員が家に伝わる聖剣を所持しています」


「へぇー、凄い家だね!」


 シャーリーの家が王家だと知っているので、実際はそれほどの驚きがあったわけではなかったのだが、知っていることはばれる訳にはいかないので少し大げさに驚いて見せるアイリス。

 少しわざとらしかったかな、と感じたがシャーリーは「いえいえ」と恥ずかしそうに謙遜している。

 そっと胸をなでおろし、


「じゃあ、魔法は基本属性は何個適性があるの?」


 もう一つの戦闘における大事な問いをする。

 すると、少しだけシャーリーは頬を緩めて心なしか得意げに、


「三つです。風と雷と光ですよ」


 そう言って見せた。

 基本属性は火水風土雷光闇の七つ。

 昔、修行中にセシュリアから聞いた話だと大体二属性の適性があれば平均以上らしいので三つは十分だろう。


「三つか凄いね、その中で一番得意なのは?」


「えーっと、あえて言うなら光ですかね。適性はあるんですけど行使するとなると全然上手くいかなくて…」


 がっくしとうなだれるシャーリー。

 冷静に考えれば、魔法を教えてくれと頼んでくるのだ。実際に魔法の行使までできていたらそんな頼みごとをするはずがない。


「アイリスさんは適性と得意な属性はなんですか?」


 配慮の足りなさを頭の中で悔いるアイリスに今度はシャーリーの方から疑問の声。


「ん? あたしは一応全属性使えるよ。得意なのは水と風かな」


「え!? 全属性!?」


 シャーリーが前半に驚き声を上げる。

 そして、再びがっくりうなだれてしまった。


「え、どうしたの?」


「やっぱり私、才能無いんですかね……実は私の兄や姉はみんな器用に自分の属性の魔法を先生の授業中に出来るようになったんです。でも私だけ最後まで全然だめで…。やっぱり元の才――いたいっ!?」


 シャーリーが言葉を言い終える前にペシッとアイリスがその頭を叩く。

 そして、そのままアイリスは涼しい顔で、


「ちょっとネガティブになりすぎだよ」


 そう言ってのけた。

 眼を白黒させるシャーリーだったが、構わずアイリスは続ける。


「それは、うーんと、あれだ。シャーリーに教えてた先生がヘボで教え方が上手くなかっただけだよ。大丈夫、あたしはしっかり使えるようにしてあげるから。そもそもあたしに出来て、シャーリーにできないわけがないんだから」


 横暴な理由に強引な理屈。

 しかし、アイリスの言葉には力強さがあった。

 シャーリーは静かに頷く。それを確認し、


「じゃあ、これから王都に着くまで弱音禁止ね。もし、王都までに魔法が向上しなかったらその時は一日でも一週間でも弱音に付き合ってあげる。まあそんなことはありえないけどね」


 そう締めくくって、ニカっと笑った。

 シャーリーにはその表情が凄まじく眩しかった。

 そして、自分もこんな風になりたい、自然とそんな思いが胸に宿る。


「はい!」


 そんな元気な返事が荒野に響いた。


*****―――


 時は戻り現在。

 眼前には四足歩行の魔物が三匹。

 緑の体表に赤い目。大きさはそれほどではないが鋭い牙が口元から見え隠れしていた。


「ま、魔物ですね」


「そうみたいだね。あたしもここまで近くで見るのは初めて」


 先程決意を改めたとはいえ、未だにアイリスから実際に魔法について教わったわけではない。

 そのため、この場はアイリスの戦い方をしっかりと間近で見て学ぼうと思っていた。

 そんなシャーリーの耳に、


「うん、これはスパーリング相手に持って来いだ」


「……え?」


 そんな不吉な声が聞こえてきた。

 

 ―――いやいや、アイリスさんも魔物を近くで見るのは初めてって言ってたし、自分の相手にってことだよね、きっとそう。そうに違いない!


 頭の中で思考をまとめるシャーリーだったが隣にいたはずのアイリスはいつの間にかヒョイヒョイっと軽い身のこなしで近くの岩を登っていく。

 そして、一定の高さまで上るとシャーリーに向けて人差し指をクルリと回して、


「『フォルリファル』」


 そう唱えた。

 アイリスの指から離れた魔力は、そのままシャーリーに向かうと攻撃するわけではなく、体を守るように周囲に巻き付いた。


「一応、それが風の魔法でつくった防御ね。結界術程じゃないけどそこそこ持つと思うよ」


「…えっと、アイリスさん?」


 普段なら「凄いですね! どうやったんですか!」と興奮するところだが、今は目の前に明らかに攻撃性をむき出しの魔物。

 しかし、そんな焦るシャーリーの様子は見こしていたのかアイリスは困ったように頭をかきながら、


「いやー実はあたし人に教えるのは初めてだから、自分の修行のやり方参考にしようと思ってさ」


 そう言うと「よっこいせ」と岩の上に腰を下ろし、


「あたしの親父曰く、『強くなるには実戦が一番効果的!』。というわけで頑張って戦ってみて。もちろん本当に危なかったら助けに入るから」


 いつものようにハハッと笑った。

 

 それを見上げていたシャーリーも同じく笑う。

 は、ははは…という渇いた笑いだったが。


 いつの間にか魔物たちは、こちらに近づいてきている。

 それを眼にした、シャーリーは心の中で覚悟を決め、


「スパルタすぎますよ、アイリスさん!!!! 『ラクリーナ』!!」


 手を前の魔物たちに向け、がむしゃらに光属性魔法を唱えた。

 シャーリーの手から魔力が放出される。


 シャーリー・サリスタンの初めての実戦が始まった。

昨日投稿できなくてすみません!

ついに書き溜めのストックが完全に底をつきました…

現在せっせと続きを書いてますのでご容赦ください。

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