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2章ー2話  「突然の出会い」


 一夜明けた朝。朝食に露店で売っていた果実を何個か食べ、アイリスはシャンゼンの街の外れまで来ていた。

 一歩踏み出せばそこはもう街ではない。

 眼前には広大な平原が広がり、街の中とは違いしっかりと舗装されていない一本道がはるかに先まで伸びている。

 この道をずっと進み、いくつかの街や村を経由した先に王都がある。


「よっしゃー。今日も頑張ろう!」


 アイリスは拳を握りしめ、一人気合いを入れて前へ踏み出した。



 シャンゼンの街を出てから一時間。


「こっちでいいんだよね」


 地図を片手にひたすら一本道を歩くアイリス。

 分かれ道はなく一本道。道を間違える個所はなくもちろん道は合っている。

 しかし初めての一人旅、やはり心配である。おまけに歩いてもあまり景色が変わらないため若干不安が積る。


 そんなとき前から一台の馬車が来るのが視認できた。

 道の確認をしようかな、と話しかけようとするアイリスだが、


「急いでたら邪魔しちゃ悪いよね」


 とひとりでに納得し、道の端へ寄って馬車の通行を避けようとする。

 距離が近くなるにつれて馬車の形がはっきりと見えるようになる。かなり大きめの馬車だった。

 しかし、何故かアイリスの前を通過しようとした瞬間、キィーっというブレーキの音と共にアイリスの前に馬車が止まる。


 「ん?」と子首を傾げるアイリス。アイリスと馬車を運転していた男と目が合う。

 灰色の髪を短めに切りそろえており、年齢は30歳前後といった所だろう。

 そこそこ筋肉質で厳つい顔をしている。

 男はキョトンとしたアイリスに、


「おい、嬢ちゃん。一人か? 何やってんだ、こんなところで?」


 いきなり話しかけてきたことが予想外で一瞬焦るアイリスだったがこれは好機だと考え、ちょうどさっきの疑問をぶつけようとする。


「王都まで向かってる途中です。あのー、この道で合ってますかね?」


「王都!? いや、そりゃこの道であってるけどよ。護衛も付けずに一人で、それも歩きでか? やめとけあぶねーぞ」


 男の返答で不安を解消したアイリスは、一安心。しかし男は世間知らずの小娘を見るような眼でそう続けた。


「はい、その心配は昨日もされましたけど大丈夫ですよ」


「大丈夫って…。盗賊に加え、最近はここいらでも魔物が出やがるぞ」


「それも昨日聞きました」


「馬車に乗ってる俺だって護衛雇ってるんだぞ、ホレ」


 そう言って男は馬車の荷台を指す。

 アイリスがヒョイっと覗き込むと、多くの荷物が積んであった。その中に大剣を背中に背負った剣士の姿がある。

 「へぇー」と感心するアイリス。だが男には悪いが止まるつもりはない。

 その様子を感じ取ったのか男も呆れたように頭をクシャクシャとかく。


「…ったく、王都へ帰る途中なら乗せてやったんだがな。残念ながら今は反対方向だ」


 そこまで言うと男は、運転席から身を乗り出して今来たであろう道を指でさす。


「いいか、嬢ちゃん。ここから少し…まあ歩きだと一時間くらいか、それくらい進むと長い森林がある。そこが盗賊たちが結構出やがる。腕に自信があるのかもしれねーが、くれぐれも注意していけよ」


「あ、はい。どうも」


 やけに親切な男の忠告にこくっと頷くアイリス。

 その様子を見ると男は今度は荷台へ手を突っ込み、何かをとるとアイリスへ投げた。

 アイリスがそれをキャッチする。水色の果実のような丸い塊だった。


「え、なにこの変なの?」


「いや、変なのってお前…、王都原産の果実―カリセフィだ。皮ごと食えるぜ」


 そう言うと男は苦笑した。


「まあ、餞別みたいなもんだとっとけ。俺は行商人のアスクってんだ。もし縁があったらまた会おうぜ。んじゃ、マジで気―付けて行けよ」


 そこまで言うとアイリスに名乗る暇を与えず男は、馬車を走らせアイリスが今来た道を進んでいった。

 一人取り残されるアイリス。そして男からもらったカリセフィを腰の空いている布袋に取り敢えずしまう。そして、


「…見かけによらずメチャクチャいい人だ」


 と呟いた。



「長い森林…ここかな」


 アスクと名乗った男の言っていたと通り、一時間ほど歩いたアイリスの目の前に巨大な森林が現れた。

 森林の入口の木も相当な大きさで、ここからではどこまでこの森林が続いているのかわからない。さいわいにも一本道は、続いていたためアイリスはその道に沿って森林へと入っていく。


「うわ、こりゃ凄い」


 初めて見るような巨大な木々にアイリスが感心しながら道を進む。

 一本道の幅はそこまで変わらず馬車が通れるほどはあるが、地面がやはりこれまでとは少し異なり整備が行き届いていない凹凸が含まれるようになっている。


「んーでも、盗賊や魔物の気配は今のところしないかな…。というか独り言多いな、あたし」


 誰もいない森林で独り言をしゃべり、自分でツッコむアイリス。少し気分が沈むが、酒場の店主や行商人の男の忠告を思い出し、気を引き締める。

 

 ――そんな時、アイリスの耳に音が届く。

 

 ササッ、何かが草木を体で揺らす音。それは道からではなく右手の森林の方から聞こえてきた。 

 続いて足音も聞こえてくる。ドタドタと騒がしい音のため急いでいるように感じ取れた。

 そして、その音はだんだんとアイリスのもとへ近づいてくる。


 右手を腰の木剣に添え、戦闘態勢をとるアイリス。

 盗賊かそれとも魔物か、アイリスの頭にあったのはその二つだった。

 バサッ、草木をかき分けそれが姿を現す。


「なっ!?!?!?!?」


 出てきた姿を眼にしたアイリスの頭に衝撃が走り、思考が止まる。


 出てきたのは美しい長い銀髪に碧眼の少女だった。

 しかし、少女の身に着けた高価そうな衣服は袖や裾などが破れており、髪や顔にも汚れが付いていた。

 

 その少女の碧眼がアイリスを捉える。

 少女の瞳に希望が宿るのがはっきりと見て取れた。そして、


「お、お願いします! 盗賊に追われてるんです、助けてください!」


 少女はそう瞳に涙を溜めながら、頭を下げてそう願った。

 その様子にアイリスがハッとして我を取り戻す。

 

 しかし、事態は進む。

 アイリスが返事をする前に再び足あとが近づいてくる。そして、


「おいおい、こりゃいいや。獲物が増えてるじゃねーか」


 三人の男が草木をかき分けて現れ、少女とアイリスに下卑た眼差しを向けた。

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