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英雄に育てられた少女は、どうやら世界を救うようです!  作者: 喜山 涼
第3章 「やがて夜空を照らす者達へ」
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3章ー19話 「質疑応答」


 いきなりの宣言。その発言に先程よりも遥かに大きく教室がざわつき出し、各人が自分の席の近くにいる生徒とコソコソと何かを話し始める。

 アイリス達も少なからず、そのいきなりの発言に驚いていた。


「エキシビジョンマッチって、つまりは戦うってことでしょ。こりゃまたいきなりね」


「えっ!? 私、そういったことはできないんですけど!?」


「いいじゃねーか、願ったり叶ったりだ。あの銀髪は俺様な」


「一人で勝手に進めるなアホ。ちょっと聞いても? 質問がいくつかあるんですが」


 三者三様のリアクションを見せるアイリス、ミリアン、山猿。そしてそんな三人を代表するかのようにフェリアが手を上げ、立ち上がる。

 その物怖じしない様子を見て、アイリスは内心で「おー、かっこいい」と感心する。


「何でも聞いていいわよ。ただしイベントの参加拒否は認めないわ」


「ではまず一つ。戦いというのは一対一ですか?」


「ええ、もちろんよ。本校舎から少し離れた場所に実技戦闘訓練用のスタジアムがあるからそこで行うわ、武器の仕様もOKよ」


 質問に答えつつ、聞いていないところにも補足をいれるポール。その返答に頷きながらフェリアは続ける。


「そちらが三人でこちらが五人ですが、こっちも戦うのは三人でいいんですか? それともそっちの誰か二人が二回戦うんですか?」


「そっちから先鋒、中堅、大将と三人選んでこちらの三人と戦ってもらうわ。残った二人は見学ね」


「勝敗の決め方は?」


「どちらかが負けを認めるか、勝負が決まったと判断した私が止めに入るかよ。もちろん生命活動を脅かすようなことは禁止、審判である私が止めに入ったらただちに終了よ」


「なるほど、わかりました」


 三つ質問を終えて、フェリアが納得した様に腰を下ろす。

 そこへ両隣から声が掛けられる。


「フェリアちゃん凄いですね、堂々とし過ぎてます」


「うん、この状況でよく物怖じしないね。ただの凶暴剣士じゃなかったのね、見直したよ」


「それは褒めてるの? まあ一応褒め言葉として受け取っておくけど…」


 首を傾げつつも、少し嬉しそうなフェリア。意外とチョロいのかもしれない。

 そしてそんなフェリアと入れ替わるように、後ろで一人の男が立ちあがった。


「俺様からも一ついいか?」


「ええ、構わないわよ」


 その傲岸不遜な山猿の態度にも、ポールは表情を変えることなく対応する。


「その三人はどういった基準で選ばれてるんだ?」


「一年間の研修期間の成績優秀者の上位三名よ」


「なるほど。だがこれからやるのは戦いだろ。何で単純な強者三人を選ばないんだ?」


「ああ、ごめんなさい説明不足ね。この成績優秀者三人はこと戦闘においてもトップスリーよ。四位を大きく突き放してね」


「――いやいや、どう見ても違うだろ」


 そう言って笑う山猿。

 その発言にポールだけではなく、他の内部進学生そしてアイリス達特待生も何を言っているかわからず首を傾げる。

 それを見て山猿はハァーっと息を吐き、面倒そうに教壇前に立つ三人。その中の茶髪の優男風の少年を指差し、


「俺様の見立てじゃ、お前がアウト」


 そう臆面もなく言ってのけた。

 指を差された少年自身は、突然のことに唖然とし、クラスの大半の女子の視線が山猿を睨みつける。しかし、山猿はそれに一切臆することなく指を動かし、


「そして、お前がインだ」


 窓際の机に一人でピシッと背筋を伸ばして座る少女を指差した。


「ちょ、ちょっと!?」


「ん? どうした金髪?」


「どうしたじゃないでしょ!? いきなり何言ってんの!?」


「いや、お前には言ってあっただろ。教室内に三人つえーやつがいるって、もしかしてこのちびっ子のことだと思ってたのか?」


 そう言って山猿は可笑しそうにミリアンの頭をポンポンと叩く。

 「ちびっ子じゃありません!」とミリアンが反発するが、「わりぃわりぃ」と山猿はその怒りを軽く流す。

 そしてアイリスへと向き直り、


「というわけで、あの時教室にいた中で別格なのは、こっちのローブとおかっぱ、そしてあの地味子だ」


 答え合わせでもするかのようにそう告げた。


 恐らくその見立てはあっているのだろう。山猿の戦闘力レーダーっぷりは先程味わったばかりだ。

 アイリスの視線は自然とその少女へと向いていた。山猿の行動で教室中が荒れているのに少女はピクリとも動かず姿勢を保ったまま教壇へと視線を向けている。

 アイリスがいる場所からでは後姿しか見ることは叶わないが確かに改めて少女を見ると周りの生徒とは毛色が違う。


「全員、静かになさい!」


 そんな時、教壇からポールの一喝が飛んだ。そして、ただそれだけで先程までざわついていた教室は一瞬で静けさを取り戻す。

 その光景に感心したかのように山猿が小さく唸る。


「ずいぶん統率とれてるじゃねーか。やるな、ねえちゃん。で、俺様の質問には答えてくれるのか?」


「先生と呼べ、少年。それとその質問に対する答えだが―――」


「その問いには僕がお答えしましょう」


 ポールの言葉を遮り、ウィリアスが一歩前へと出る。ポールも了承したようで「任せる」と一言伝え、一歩後ろへと下がる。


「キミの問いに、簡潔に説明させてもらうと――彼女は正確には一般生徒じゃないんだ」


「? どういうことだ?」


「うん、知っての通り僕は王族だ。だから実はこの学園にも王家から出された幾つかの条件を飲んで入学しているんだ。彼女はその条件の一つ、率直に言うと僕の護衛だよ。だからキミの言うように強い、けど一般生徒じゃないためこういうことには不参加ということさ。もちろん普段の授業には参加するし、歳も僕と同じだけどね」


 「これで大丈夫かい?」と最後に付けたしニコリと笑うウィリアス。山猿も納得したかのように「ああ」と呟き、席へと腰を下ろうとするが何か思い立ったかのように再び立ち上がると、その熱気に溢れた視線をウィリアスへと向ける。


「このあと、おまえは何番手で出てくるんだ?」


 そのまっすぐな自分に向けた問いと戦意に、ウィリアスは苦笑すると、


「三番手だよ。うん、キミと戦うのはちょっと楽しそうだ」


 そう言って自分の役割は終わったとばかりに一歩下がり、山猿も満足そうに席に腰を下ろす。

 

 それを見届け、再びポールが前に出る。そして、


「よし、ではこれよりスタジアムに移動する」


 そう告げて、足を出口に向けて先導するように歩き出した。

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