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彼らと彼女らの日常  作者: 時白
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エターナルワーカー

 

「ヘイ! 美鈴ちゃん捗ってる!?」

 後、下の名前で呼ばないでね。倉本って呼んでね。先輩。

「先輩! 帰れる気がしません! 三日ぐらい!」

「こいつぅ!」

 ヤッホゥ! 就職難でやっとこさ入社した会社だけども、一週間ぐらい家に帰れてないよ? 今、元気な奴は病気になあれ!

「美鈴ちゃん! カフェイン!」

「はあい! お砂糖何個にします?」

「もう砂糖なんて論外だぞお! 豆の状態でいいから持ってきて!」

「はあい!」

 あははは! 先輩は豪快な人だなあ!

「お前ら! 次これな!」

「あ、部長! 了解しましたあ!」

「了解しましたあ!」

 次来たあ! まだ終わってないのに! 終わってないのは仕事で私の頭はもう終わってるかも! 空飛びたあい! 空飛田愛! 完全無欠のアイドル飛田愛!

 ニューシングル! 空飛びたい!

「先輩!」

「おお! なんだい!」

「完全無欠のアイドル飛田愛って売れます?」

「地方なら売れるんじゃない?」

「地方馬鹿にすんなっ!」

「ご、ごめん」

「あ、私もごめんなさい」

 ふう。ワークとダンスってる私はダンスワーカーホリックになってたわ。

 少し落ち着け。出来る。私は出来る。やらなきゃ殺られる。仕事に殺られる。

 田舎に住んでる妹達に仕送らなきゃ!

「お前ら! 次これな!」

「了解しましたあ!」

「了解しました……」

 あーでも我慢できない! 部長仕事しろ! 次これなって言うだけで煙草ばっかり吸いやがって。

 ああん! 受動喫煙とかだっけ!? 私をニコ中にする気か!?

 あーもう知らねえ! もう私は魔法少女! 全ての問題は魔法という物理で解決するの! あー駄目だ。警察呼ばれる! なしで今のなしで! てか魔法少女ってなんだよ! ケーキ食べたいな。それで甘い甘いお菓子の家に住んで王子様と甘いキッスをするの!

 はやくリムジンで迎えに来いよ! 王子!

 人の幸せってなんだろう? どこにあるんだろう?

「先輩!」

「なんだい? さっきはいきなり怒鳴るからびっくりしたぞぉ。こいつぅ!」

「人の幸せってなんですかね? どこにあるんですかね?」

「てつがくぅ!」

「そういえば、食塩水を植物に与えると枯れるらしいですね」

「ざつがくぅ!」

「でも、除草剤がわりに使うのは土の塩分濃度が上がってその土地の価値を下げてしまう事があるらしいのでお薦めできないらしいです」

「ざつがくぅ!」

「命の原罪とは何処にあるのでしょうか」

「てつがくぅ!」

「女騎士」

「くぅ! 殺せ!」

「うわあたぶん先輩は女の子と付き合った事ない奴で、たぶんストッキングフェチで、たぶんロリコンですね!」

「おくそくぅ!」

「先輩! うるさい!」

「ご、ごめん」

「あ、私もごめんなさい」

「お前ら! 口じゃなく手を動かせ!」

「すみません」

「すみません」

 テメエこそ煙草をスパスパ吸ってねえで仕事しやがれ!

 母親の母乳吸ってる赤ちゃんか! カスゴリラが! 生え際後退しろ!

 あーいけない! 怒りはストレスを生むから駄目だよー。

 落ち着いて私。落ち着いて私。

 大丈夫。終わらない物なんてこの世には何一つないんだから!

 友情も愛も人生もいつかは終わるから!

 私がいなくてもこの世界の歯車は廻り続けるから!

 世界の歯車の回転はおわんなかったああ!

 くそおお!!

 ……じゃあせめて私という社会の歯車は終わらせよう。うんそうしよう。

「おい! 倉本! 手が止まってんぞ!」

 止めてんのさ。

「ええ。止めてるんです。力を込めるために」

「なんだと?」

「お前の顔面を思いきり殴るためになああああ!」

「ぐばはっ!」

「ぼうりょくぅ!」

「警察呼べ!」

「けんりょくぅ!」







「はあ……」

 クビになりました。ただ刑務所行きはまぬがれました。

 どうやら会社はブラック中のブラックだったのです。

 ヤバイ商売に手を出してたみたいです。

 何も知らなかった部長が、警察を呼んだ事で前々から会社を探ろうとしていた警察は水を得た魚のように調べ始めました。

 会社を警察が調べられなかったのはこれまたすごい組織が絡んでいて調査の禁止措置がとられていたかららしいです。

 まあ、一般人の私には何がなんやら正直分かりません。

 巨悪の前に暴行罪の子悪党は見逃されたって話でしょう。

 それに私はさっさと次の職探しの事を考えなければいけませんから。

「幸せは何処にあるんでしょうね……」

「幸せか?」

「っ!?」

 びっくりしました。コートを着た三枚目なおっさん? に話かけられました。

「すまない。幸せって聞いてな。俺は今、約二千百円の所持金で逃亡してるんだが」

「えっ。逃亡って犯罪者ですか?」

「いや。俺は探偵だよ」

 胡散臭っ!

「あー。幸せって何処にあるかだろ?」

「えっと。はい」

「何処にもねえよ」

 見も蓋もないな! この人!

「だって自分が幸せかどうかを決めんのはそいつ自身だからさ」

「……私は幸せじゃありません」

「そうか。じゃあ幸せだな」

「はい?」

「不幸せだ」

「私は幸福が欲しいんですよ!」

「幸福か……どうすれば幸福になるんだあんたは? その思い描く通りにすれば幸福になれんだろ?」

「そうですねえ。就職難のこの時代にブラックでハードな会社に入らずに普通の会社で普通に働いて、妹に仕送りしたいですね」

「そっか。じゃあ俺の探偵会社の事務でもするか?」

「はあ?」



















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