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彼らと彼女らの日常  作者: 時白
3/9

兄のプレゼント後編

 

 友人の佐木琴が私の家に来るのは何度目だろうか。

 片手に数える程だと思う。

 私は夕食を多めに作り、彼女の来訪を待つ。

 彼女は予想より早く到着したようだ。

 インターホンの音が聞こえる。

「はーい。開けまーす」

 間延びした声を出して玄関に向かう。

 玄関の扉を開けると彼女がいた。

「突然すまないね。ねこちゃん」

 私をねこちゃんと呼ぶのは彼女ただ一人だ。愛称で呼ぶほどには仲がいいと向こうは思ってくれているのだろう。

「はいはい。とりあえず中に入って」

 返事もそこそこに家に入るのを促す。

 彼女は軽い足取りでリビングに向かった。私もそれに続く。

「どうぞ座って」

 私は椅子に座るように言う。彼女は律儀で他人の家では家主が座ってと言うまでは決して座らない。

 試しに今度は、座ってと言わないでおこうか。

 彼女自体がこの家に来ることは少ないけれど。次が楽しみだ。

「さてとねこちゃん。突然三泊も泊めてくれるなんて最高の友達だね君は」

 それは聞いていない。

「聞いてないけど……何があったの?」

「自分の兄にゴシック調の赤いメイド服を持って追いかけられたら人はどうすると思う? ウサ耳付きで」

「身内でも私なら警察呼ぶかな?」

「そうだね。でも僕は兄の事は嫌いじゃないんだよ。むしろ好意を持っている。つまりとりあえず逃げるしかなかった」

 彼女のお兄さんとは同じ高校で見たことも話したこともあるけど、そんな一面があるとは思わなかった。

「まったく、こんな事になるとは思わなかったよ。高望みなんてしちゃいけないね」

「泊まってもいいけどね。お兄さんが着せるの諦めるまで待つって事なの?」

「いや。僕の心の準備が三日だから」

「どういうこと?」

「私がその服を着る心の準備が終わるまで」

「着るの!?」

 思わず叫んでしまう。まったくこの友人は私を飽きさせない。

「僕の兄は絶対に諦めない人なんだよ。一度決めたことは警察を呼ばれようが核ミサイルを自分に向けて発射されようが諦めない人間なんだ」

「怖い」

「そうかな?」

「そうだよ……」

 一緒に過ごして飽きなさそうだけど。

「というわけで三泊で頼むよ。後は一緒に考えてほしいんだ」

「えっ?」

「仕事を失敗した人にする罰をね」

 そうして彼女は嗤った。













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