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彼らと彼女らの日常  作者: 時白
2/9

兄のプレゼント中編

 

「聞いてくれよお前ら」

 相棒の兄貴はどうやらあいつのようだ。

 友人らしき男二人とカフェでフラペ何とかを飲んでやがる。

 俺は兄貴のすぐ近くの席に座り、必要経費としていただいた三千円でブラックコーヒーを飲んでいる。

「実は、妹の誕生日が近いんだよ」

「よぉ。なんだいつものシスコン病か」

「誕生日か。一人の人間が生を受けたわけだな」

「妹の誕生日なのか?」

 最後の発言は俺だ。

「あ、えっとはい……誰ですか?」

 もちろん初対面だ。相棒の兄貴の顔がひきつっているのでここから危ない人だとこれ以上思われないように爽やかにブランド物のバックを勧めていこうと思う。

「いや。俺にも妹がいるんだけどな。誕生日にプレゼント贈るのか? いや、シスコンとかじゃなく妹に普通は贈るよなプレゼント」

 俺には妹はいない。

「は、はい! 贈りますよね!」

「てか誰っすか? あんた?」

「どっちかの知り合いではなかったのか?」

「突然話しかけたりしてすまない。妹の誕生日と聞いてな。前に妹のプレゼントで失敗した事があってな……」

 遠い目をして言う。俺には妹はいない。

「えっと。何を贈ったんですか?」

「ゴスロリ服だ。完全に趣味に走った」

「ぶっほ!! あんたやべえな! はは! 気に入ったぜおっさん」

「ゴスロリとは何だ?」

 おっさんじゃねえから。よく見たらチャラい金髪の奴と精悍な武士みたいな奴と相棒に似て顔立ちの整った中性的なロン毛イケメンって中々のトリオだなこいつら。

「妹とは歳は一つ違いなんだがな。高校二年生の時だ。可愛くなってきた高校一年生の妹にプレゼントしたんだ。それから口を聞いてくれなくなったよ……後悔してる。あの時に少し背伸びしたい年頃の妹に、ブランド物のバックでもプレゼントしていれば……今でも笑顔でお兄ちゃんと呼んでくれていたのに……」

 俺には妹はいない。

「俺の妹は違いますから」

 俺には妹はいない。

「俺の妹はたとえ俺がプレゼント選びに失敗したとしても笑顔で許してくれる」

 俺には妹はいない。

「俺がメイド服をプレゼントしたら笑顔で着てくれる!」

 俺には妹はいない。

「安心して下さい。貴方のリベンジは俺がしますよ! 決めました! やっぱり趣味に走る! 俺がメイド服を着た妹を見て喜び、プレゼントを貰った妹も喜ぶ! 誰もが幸せな世界!」

 故にだ。シスコンの狂気を甘くみていた。

「おい。おっさんどした? ボケッとして。リベンジしてくれるんだからお勧めのゴスロリをプッシュしとけって。おい! 俺はバニーちゃん服をお勧めしとくぜ!」

「服をプレゼントするのか。では巫女服だな」

 ふう。ブラックコーヒーは苦いな。

 すまん相棒。お前も大変なんだな頑張れ。

「リベンジならゴスロリだろ! メイド服じゃなくてな!」

 俺もこういうノリは嫌いじゃないんだ。本当にすまん。

 相棒。必要経費返せとか言われそうだからしばらく身を隠す。

 さらばだ!


























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