明かされる謎、残る謎
ビーズがどんな代物なのか、その全貌が、いよいよ告げられる。
早く知りたい、でも知ってしまうのが勿体ない。俺の脳内でそんな矛盾が交錯する中、未砂記はさっそく語り始めた。
「このビーズはね、テグスに通した日に起こった使用者にとっての悪いことを吸収して、幸福に変換するの。一言で言うと不幸の分だけ幸福が訪れる。でも幸福の概念は人それぞれだから、心が汚い人にこれが渡ると世界が目茶苦茶になっちゃうかもしれない。
だから私は絶対に信用できて、尚且つ不幸に見舞われていたヒタッチ、オタちゃん、そして優成にこれを渡したの。
一日一粒ずつなのは、ビーズ一粒の記録容量が24時間だから。
わざわざテグスに通して手芸作品を作ってもらってるのは、それに通すことで使用者の不幸な記憶を読み取るのと、作品を一つ作り上げるとボーナスとして生きている間に訪れる幸福が、その作品に使った粒の数の2倍訪れる保証がされるの」
あれ? 何だか単純で随分と都合が良くないか? と思いつつ話の続きを聞く。
ってか、幸福を保証? 確かに幸福感はあったが。
「あの〜質問です」
「なぁに?」
「なんでそんなものを未砂記の姉さんが?」
問い掛けると未砂記は、ぽか〜んと困った顔をした。
「………きっと、姉貴は魔法使いだったんだよ! そうそう! うん! きっと!」
知らないのか、誤魔化しているのか。
「せめて姉貴をあっちの世界から呼べればなぁ。でも幸せを享受するのって、人、もしかしたら動物にとっても恒久の課題だよね。それを手に入れられるなんてすごいよ」
確かに、幸せというものには結論などないだろうし、感じかたも人それぞれだ。ただ一つ結論があるとすれば、それは不平や不満、満たされない気持ちがあって初めて成り立つもの。だろうか。
「あとね、このビーズには禁忌があるの。それは作品を作り上げる前に投げ出したり、壊したりすること。もしそんなことしたら大惨事になるらしいから、最後まで頑張ってね。出来上がったら捨てたり故意に壊さなければ大丈夫だから」
「え、それだけ?」
ほかに何かあるの? とでも言いたげに未砂記は目を丸くして答えた。
「うん、そんだけ」
じゃあ、しばらく俺の幸福な日々は続くのか?
でももし禁忌を破ったらどんなことが? 未砂記も何が起こるかは知らなそうだ。
念のため何が起こるか訊ねた。「本当に知らないの?」と、念を押したが未砂記はそれでも頑なに答えなかった。きっと教えられないほどのなにかがある。俺の勘がそう告げている。




