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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
高校生活 冬

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心が読める女

 日曜日、冬休みは明日で終わり。それは未砂記との生活に終止符を打つことを意味していた。半年弱の同棲生活は、俺にとって色々な意味での我慢と、この上ない幸福に満ちた生活だった。


 未砂記の部屋にしまってあるビーズ細工は、いつの間にかウジャウジャという表現ができるほどに増えていた。これは俺の家に持ち帰る。いまの俺にはなんとなくこのビーズの意味が推測できるが、その結論に自信が無い。



 ◇◇◇



 ガクンッ!!


「こらっ! なにボーッとしてるんだ!」


「うわっ、すんません」


 俺はいま、普通マニュアル自動車の教習中で、運転しながらあんなことを考えていたらコース内の上り坂でエンストを起こし、助手席に座る教官に怒られた。そして車は坂を後退していた。


 俺は咄嗟にサイドブレーキを引いて停止させた。このとき、教官が助手席のブレーキを踏まなかったのは何故だろう。


「ほぁぁっちょっちょっちょっちょっ!! そこそこっ、そこ左っ!」


「あらま、すんません」


 またボーッとしていた。



 ◇◇◇



 未砂記の家に戻り、ネコとソファーで庭を眺めながらウダウダする。あまり懐いていないが登録上の飼い主は俺だ。


 しかし俺は本質的に動物が好きなので、近づいてもネコは逃げない。不機嫌だとたまに逃げるけど。ちなみに動物が嫌いな戸籍上俺の父親である正人が近づくと逃げる。心が読めるのか、はたまたオーラを読み取っているのか、どちらにしろこの社会で汚された人間にとっては常識を超越したものだ。


 逆に言えば、汚れ無きものには普通に出来る事なのだろう。子供に幽霊や妖精が見えるというのも、子供には汚れが少ないからだろう。実際に俺は5歳のときに自分や母親、妹が川の字に三つ並べて寝ている布団の上を右往左往しながら駆ける幽霊だかお化けを見た。そのときは金縛りやソイツに俺が起きていると気付かれるのを恐れ、怖くて思い切り目を閉じた。


「可愛いね、ネコちゃん」


「うぉあっ!」


 びっくりした、背後に未砂記が立ってた。


「私、別に脅かしたつもりないよ。またボーッとしてたんだね」


「はい、おっしゃる通りです」


 未砂記と過ごす最後の夜。


 まぁ、最後かどうかわからないが、俺は素直に淋しい気分だった。冬休みが終わり、社会人になって、これからは未砂記どころかネコを含む家族や友だちにすら会えない。俺が内定した会社は日本の広域に支社があるが、なるべくこの近くに配属して欲しいものだ。そんなこんなで色々と考え過ぎて不安でいっぱいだ。


 俺は未砂記の部屋に入り、今日もテグスにビーズを通した。そろそろこのテグスもいっぱいになるから次のを用意しようかな。


「優成ぃ」


「うわぁっ!」


 また背後で未砂記が俺を覗き込んでいた。


「こんどはなんか考えてたんでしょ〜」


 見透かされていた。コイツすげぇなぁ、俺だけじゃなくて、他の人の心理も見事に見抜く。心が綺麗なんだなぁ、子ども並みに。フッと笑みをこぼしてしまった。


「あっ、何その人を見下すような視線。私のこと馬鹿だとか子どもみたいだとか改めて思ったでしょ」


 あぁ、これはいかにもって顔しちゃったからわかるよな。


「流石です、未砂記さま」


 すると急に未砂記がハハハと笑い出した。


「やっぱり!? 私天才だからね!! 人の心を見抜けるのだよ。ホッホッホッ!!」


 俺の思惑通り、未砂記は調子に乗った。ホッホッホッと言う声は、漫画やドラマに出てくるセレブのオバサンの笑い声と言うより、まるで何かの博士のお爺さんのような声だった。


「優成? ビーズは明日まででいいよ。だから今夜抱き合いながら、ビーズの意味、教えてあげるね」


 えっ、あ、その、俺はどういう反応をすれば…?


 思わず顔が引き攣った。


 それはあまりにも唐突だった。近々教えてくれるとは言っていたが。

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