ふたりきりの年越し
今年は白組の優勝か。
間もなく終わりを告げる2007年。紅白歌合戦が終わった後の、かなり大きな音だが、静けさを漂わすあの除夜の鐘の音に胸を打たれる。加えて今年は雪景色だ。
俺の家では燃え盛る炎の中に人が飛び込む番組か、歌番組で新年を迎えていた。今年は未砂記の家で新年を迎える。今回は音楽番組で新年を迎えることにした。この音楽番組は、正に新年のカウントダウンに相応しい番組名だ。
未砂記の家のテレビは地デジなので、いまテレビに映っている時間空間と実際の時間に約2秒のタイムラグがある。アナログ放送視聴者より2秒遅い年明けを実感するのだろう。
年明けまで1分を切った。ソファーでくつろぐ俺の隣には、未砂記が内股でちょこんと黙って座っている。
おっ……。
『今年』が残り10秒を切ったとき、未砂記が俺の右腕を捉え、自身の胸に寄せた。俺は敢えて反応を表に出さず、黙っていた。
ごぉ、よん、さん、にぃ、いち……。
「わーい、あけおめ! 今年は優成と密着して年越した! 今年もよろしくね!」
「あけおめことよろ〜」
こういうときにハイテンションになれない俺。内心はかなり盛り上がっている。うほうほ!
未砂記と迎えた新年。年越しそのものは呆気ない2008年だったが、俺にとって、きっと未砂記にとっても一生忘れない瞬間になるだろう。この瞬間、さっきまで『今年』だった2007年は『去年』になった。
やっべぇ、眠くなってきた。いつもはこの番組が終わるまで起きてるのに……。
このまま未砂記に寄り掛かっちゃおうかな。
いやだめだ、このまま寝たら初日の出が見れなくなる。
「優成ぃ、眠いんでしょ」
「あぁ」
日頃から眠そうな顔してる俺が本気で眠いのをよく見破ったな。
「やっぱり、でも寝かせないから」
未砂記の語気が、少し強い。
「いや、まぁ寝たくはないんだけど」
はふっ!
「っ!」
何を思ったか、未砂記は急にキスをしてきた。その場のノリで未砂記の左肩甲骨を押さえて抱き寄せ、舌を絡めてみる。それが息継ぎをしながら何分間か続いた。
「目ぇ覚めた?」
言って、未砂記は俺の表情をうかがった。
あぁ、それが狙いか。
「覚めたかも、その先はダメ?」
すっかり目が覚め、息子は異常に元気だ。
「その先やったら疲れて寝ちゃうでしょ?」
「はい」
「あっ、ちょっと部屋行ってくるね」
未砂記は何かを思い出したようだった。
しばらくテレビを眺めながらぼ~っとしていると、いつの間にか未砂記が自分の部屋から戻っていた。
「優成、年賀状あげる」
未砂記がそっと差し出したのは、大掃除のときに俺が引き出しから見つけた、ハート形のシールで封をされた手紙だった。




