深夜、さやかとの再会
「オタちゃ~ん、サイダー買って♪」
「なんで?」
「未砂記たちがラブラブだからぁ、私たちもラブラブしようよお」
「サイダーとそれと、どんな関係があるの?」
「サイダーを私の谷間に注いで、それをオタちゃんが飲むの♪」
「まったく、淫らな人だ」
「チェッ、あの男(優成)ならすぐ食らい付いてくるのに」
私とオタちゃんは、未砂記と宮下の愛の時間を少しでも長くするために、コンビニでオタちゃんに好物のサイダーをたかったりしながらゆっくり買い物をしていた。
「あの、そろそろ帰ってもいいんじゃないかな」
家を出て一時間弱。コンビニにいるにもそろそろ限界。
「そうだね、じゃあゆっくり帰ろう」
◇◇◇
「あれ、もしかして、小田くん?」
結局サイダーを買わされて、大甕さんとコンビニを出ようとしたとき、一人の女性が僕を呼び止めた。
「えっ、あの……」
彼女は僕を知っているようだが、僕には覚えがない。
「オタちゃんの友だち?」
「いや、その……」
「私のこと、忘れちゃったかな?」
忘れた!? やっぱり僕と面識ある。それとも人違い?
「いや、え〜と……」
気持ちが焦ってきた。本当に思い出せない。あぁ、どうしよどうしよどうしよう。忘れたなんて失礼だ。大変だ。
「オタちゃん冷や汗かいてるよ!?」
「同じ学校なのに……」
同じ学校!? うわっ、もっと大変なことになってきたぁーっ!! 大変だ大変だ大変だぁー!!
普段他の人に関心ないから全然わかんない。どうしよどうしよたいへんへんたいたいへんたい!? たいへんたいってなんだ!? 大いなる変態か!? 違う、断じて僕は変態じゃない!
「小学校も同じだよ。中学は一時的に引越してたから違うけど」
あっ!? まさか!? でもあのときと全然違う……。人違いだったら失礼すぎて、もうどうすれば良いか……。
「あの、もしかして……」
「思い出してくれた?」
「石神井さん?」
「そうだよ。やっと思い出してくれたね」
「いや、あまりにも変わっちゃって。小学校のときは三つ編みで眼鏡かけてたし」
彼女の名は石神井さやか。小学校のときはまさに地味そのものだったのに、髪は大甕さんのように長く艶やかでストレート。だだ、色素は大甕さんより少し薄く、二人並ぶと茶色っぽく見える。顔立ちは柔和でおしとやか。決して地味ではなく清楚で大人っぽい、お嬢さまそのもの。
「えっと、こんな時間にどうしたの? 僕たちは家でお泊り会やってるんだ」
「えっ、ふたりきりで!?」
「いやいやいやいやいや、ちっ、違いますっ!!」
「えぇ、オタちゃん酷い。私と暑くて熱い夜を過ごしてくれるんじゃなかったの?」
「なっ!? 何言ってるん……」
「そうなんだ。小田くんも変わったんだね」
また大変なことになってきたぁーっ!!
「いやそんな約束してないって!! なんで大甕さんは話を変な方向に持って行くんですか!?」
「面白いから」
「やっぱり変わってないね。あの、突然で申し訳ないけど、もし良かったら、私も参加したい、かも」
「えっ、石神井さん、でいいんだよね? 家に帰らなくていいの?」
大甕さんが訊ねた。
「はい。今夜、家には誰もいませんので」
石神井さんは遠慮がちに二人の様子を伺っている。
「じゃあ来なよ! 人数多いほうが楽しいよね、オタちゃん!」
「えぇ、まぁ……」
ということで、急遽お泊り会のメンバーが一人増えた。
◇◇◇
「あっ、おかえり」
「ただいま〜」
「ただいま〜、突然だけど、メンバー増えたよ!」
「あ、あの……」
「あれ、石神井さん?」
「あっ、宮下くん、ですよね?」
「あぁ、去年、隣のクラスだったよね」
石神井さんは清楚で気品があって、話したことはなかったけど、俺の好みだった。
「はい。今夜は突然お邪魔してしまってすみません」
「いやいや、オタちゃんの家だから気遣いはいらないよ」
「な、なんだよそれ!? 追い出すよ?」
「はいはい、喧嘩しないの。ところで、なんとここには大和撫子が二人もいます! 男性のお二人、特に宮下は欲望を制御できるかな?」
「な、なんだよ!? 俺には未砂記が……」
「でも、本能は嘘つけないよね?」
浸地の小悪魔的な笑みが、優成の中枢を刺激する。
「そ、そうなんですか!? 男の人って……」
「そ・う・な・の!」
「そ、そんな事ねぇよ。誤解だ……」
口ではそう言いつつ、図星だ。なんてこった。他の女に欲情してしまうとは。浸地の白いネグリジェは俺のツボにどっぷりズッキュンだっての。そして石神井さんは見ているだけで美味しそう。
男とは下劣な生き物だ。しかしここは我慢するしかない。
「オタちゃんは平気だよな?」
「う、うん……」
◇◇◇
いや、実は平気でなかったりする。なんだろう? なんか胸騒ぎがする。しかもそれが快感というか、楽しい? なんだ? この感覚は……?




