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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
高校生活 夏

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あなたのためなら

 動物病院で診察を受けた結果、ネコはしばらく入院することになった。身体が傷だらけで、細菌侵入により命を落とす恐れがあるからだ。


 他方、俺は帰る家がない。


「どうしよ、俺、ホームレスだ……」


「私の家に寝泊まりする? どうせ誰も帰ってこないし」


「誰もって……?」


「うちね、父親は仕事で単身赴任してて母親はもう何年も帰ってないの。私、一人っ子だから他に残る家族はいないの。ネコちゃんも、退院したら預かってあげる」


「すまない、お言葉に甘えてそうさせてもらうか。申し訳ない」


「いいよ! 大歓迎だよ!」


 未砂記は俺とネコの厄介を快く引き受けてくれた。なんてありがたいのだろう。近いうちに恩返ししなきゃな。


「ありがとう。でもまず、ある程度の荷物を取りに戻らなきゃ」


 家に戻ると、正人が俺に再び喧嘩を仕掛けてきた。


「ほぅ、戻ってきたじゃねぇか。いい度胸だ」


 俺は無視して末砂記と一緒に俺の部屋がある2階へ。この部屋はまだシロアリの被害を受けていないようだ。


「ねぇ、そういえば優成って、おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に住んでるんだよね?」


「うん。いつもこの時間は出掛けてるんだけど、もう帰って来てても……」


「じゃあおじいちゃんおばあちゃんも私の所に来る?」


「いや、大丈夫だよ。横須賀よこすかにじいさんの兄弟いるから。もしかしたらもうそこに行ってるかもしれない」


「あぁ、その二人なら家に帰るなり腰抜かしそうになったからトドメさしてやったぜ?」


「テメェ部屋に入ってくんじゃねぇよ!! ってか二人はどうなってんだよ!!」


「ああ、今ごろどっかで気絶してるか死んでるかもな。ヒャッヒャッヒャッ、あ~おもしれ……」


「えっ、ちょっと、優成、ヤバいよ、なんなのコイツ……」


 未砂記は顔面蒼白になって震えていた。


「大丈夫。未砂記には手ぇ出させないから。それにコイツが言ってるのは嘘だ」


「ほう。よくわかったな。うちに帰った途端血相変えて車で逃げたよ」


「やっぱりな。お前はこの時間いちばん楽しみなテレビがあるから、何があっても一切動かない。人殺しなんかしてる場合じゃないんだよ」


「でもお前らにはここで消えてもらうよ? 完全犯罪の計画はちゃんとあるんだ」


 そのときだった。あまりに突然で予想外の出来事だった。


「キャッ!? いやっ!!」


 あろうことか正人は未砂記を人質にとったのだ。法の壁を上手く利用して悪事を働いてきたコイツがこんな法外な事をするなんて思いもしなかった。


「おいテメェ未砂記に手ぇ出んじゃねぇ!! 殺すなら俺だけにしろ!!」


「ダメだよ!! 私が死ぬ!! だって優成にはいっぱい迷惑かけて、それでも恋人になってくれる、命より大切な人なんだから!! だから今度は私が恩返ししなきゃ!!」


 その言葉を聞いたとき、俺の目から涙がこぼれた。


「えっ、俺、迷惑なんて、そんな……」


 そして未砂記がその言葉を放った直後だった。


「痛っ!! 早く、早く逃げて!!」


 俺は一瞬、目を疑った。何かが刺さった未砂記の腹部から真っ赤な血が滲み出てきていた。


「ハァ、ハァ、優成、逃げなきゃ、私がやられた、意味、ない、よ」


「みっ、みさ、なんで……?」


 なんで、なんで未砂記がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。


「でも、もし死んじゃったら、早く、私のこと、忘れて、ね?」


 状況とは裏腹に、天使のような笑みで俺を見つめる未砂記。しかし息が荒く声がかすれている。今まで冷たく接してきた俺なんかの為に命を落とす気なのか? 冗談じゃない、俺の勝手な事情のために未砂記が死ぬなんて、絶対させねえ。

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