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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
高校生活 夏

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アルバイトに費やす青春のある日

 日曜日、きょうは近所のファミレスでバイトだ。


 父は働かず母はパートタイム労働の貧乏な我が家。家にも居づらいし、外出して賃金を得るのは実に有意義な休日の過ごしかただ。


 俺はバイト長をしていて、バイト希望者の採用面接をしたりシフト表を作成している。時給は他のバイト生と変わらない。無償労働とはなんて難儀なのだろう。


「あ、店長、おはようございます」


「あいおはよ〜ございまぁす。今日はバイト希望の女の子が来てるから面接してあげてね」


 休憩室に入ると、PCで作業中の店長が俺に背を向けたまま言った。


「はぁ〜い」


 女子か。ちゃんと仕事する人で、すぐに辞めなきゃいいけど。


 というのも、ここでバイトする女子は喋ってばかりでろくに仕事もせず、注意するとすぐに辞めていく人が多いのだ。その繰り返しを憂慮しつつ、その女子が待つロッカールームに入る。


「お待たせしまし……」


「宮下ぁ!! 待ってたよ!!」


「不採用」


 なんということだ。よりによって面接を受けに来たのは無駄に騒がしい仙石原だった。


「はぁ!? まだなんにもしてないじゃん!!」


 両手をバタバタ猛抗議。やはり騒がしい。


「いやだってお前いつもうるさいし、喋ってばかりで仕事サボりそうじゃん」


「公私のケジメはちゃんとつけるんですぅ〜」


「じゃあここで働きたい理由は?」


「んとねぇ、車の免許取るお金が欲しいから!」


「しばくぞコラ」


「えぇ!? なんでぇ!? 立派な動機じゃん!! ってか女の子に暴力はダメだよ!?」


 免許取得のために稼ぐのは結構だが、そう言って入ってきたヤツらがサボってクビになってきたから、反射的に暴力的な言葉が出た。


「うるさい、レジまで聞こえるだろ。とりあえずいまの志望動機では不採用だ」


「じゃあ今から考える」


「いや、もういいから帰れ」


 俺を無視した仙石原は少し間を置いた後、流暢に喋り始めた。


「うんとねぇ、じゃあ、ファミリーレストランという空間は老若男女問わずあらゆる世代のお客様に親しまれている場所であり、人々の笑顔が絶えない場所だと思います。私は持ち前の明るい性格でお客様を明るく元気にもてなし、料理のみに満足していただくのではでなく、心も満足していただける仕事をしたいと思い志望致しました!! これでどうだ!!」


「これでどうだ!! は余計ね。はいはい、まぁ良いでしょう」


 というより、正直バイトの面接でここまで立派な台詞が出るとは思わなかった。しかも即興でこの文言、なかなか頭の回転が良い。


「わーい! やったー! 愛してるよ!!」


「また軽率にそういうこと言う」


「えぇ酷ぉ〜い。乙女心が傷ついたぁ〜」


「はいはい。じゃあ制服余ってるから早速仕事してもらうよ。でもその前に接客の基本から練習ね」


 その後、接客の練習やレジの使い方を教えて早速働いてもらうことに。物覚えが良く驚いた。習得能力は俺より何割か優れている。


「そういえば宮下ぁ」


「ん?」


「ちゃんと毎日ビーズやってる?」


「あぁ、やってる。ってかあれはなんなんだよほんとに。そろそろ教えてくれ」


「ふふぅん。そのうち教えたげる」


 いたずらな笑みで、仙石原は今回もじらした。


「そのうちって……」


 1日一粒、作業時間1分。しかしそれも毎日となると面倒で、無意味な行為ならやめたい。


 憂いていると、客席の呼び出しボタンが押され、ピンポーンとチャイムが鳴った。


「じゃあ、最初の一回、行ってくる?」


「うん! 頑張る!」


 さて、ちゃんとできるだろうか。俺はレジから仙石原が客の注文を受けているのを遠目で見守る。


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