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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
浸地の小学生時代

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自殺は思いのほか影響を与えない

 屋上に連れられた私たち生徒はその場に座らされ、先生は1メートルほど距離を取って、立ったまま口を開いた。


「普段の道徳はテレビ人形劇を見ておしまいだが、それじゃ効果のないお前らに先生直々に授業だ。いいか、よ~く聞け。そしてこの日のことを目に焼き付けろ。


 お前らがイジメ問題を起こしてからな、俺の給料が減ったんだよ。夏のボーナス半分カットされたんだよ。それにな、学生時代から十年も付き合ってた彼女に学校での出来事を相談してたら、最近マイナス発言が多いからもう一緒にいたくないってフラれたんだよ。そりゃそうだよな。人間だって動物だ。健全な生活の足を引っ張る存在なら例え恋人だろうが家族だろうが切り捨てる。それが生存本能だ。所詮は別人格、百パーセント解かり合えっこなんかない。それはいじめられる側の人間ならよく知ってるよなぁ!?」


 先生の言うことはいまの私にとって、まるで処方薬のような効能を発揮して、厳しい、というよりは激しく狂気に満ちているともとれる口調なのに、布団で快眠を得ているようなこの上ない安心感を与えてくれた。


 その、次の瞬間、だったと思う___。


「きゃああああああ!!」


 俯いているうちに先生の姿はなくなり、一人の女生徒が悲鳴を上げた。


 それに続いて他の生徒たちほぼ全員がフェンスに駆け寄り、地を覗き込む。


 何が起きたのかなんとなく察しはついた。けれどそれを確めないと納得できない本能が、私にマジョリティーの背を追わせたけれど。


「ヒタッチ、見ないほうがいい」


 先に見てきた未砂記が空を背に私を止めた。一部の生徒は嘔吐し咳き込み、一方では口を押さえて涙ぐんでいる者も。


 けれどそのとき私が何より驚いたのは、冷静沈着な未砂記について。普段はあっけらかんとしていて、学問の成績だってほぼ最下位の彼女が、この状況を的確に呑み込んで、おそらく想像もつかないくらい変わり果てた先生を見に行こうとした私を止めるほどの余裕があるということ。並大抵の人間ならばこの状況下では他人をおもんぱかる余裕などないはずだ。


 ほどなくして飛び降りに気付いた職員たちが現場に集まり、救急隊が到着。先生と呼ばれたそのからだは病院に搬送され死亡が確認された。


 きっと先生は恋人という寄る辺を失い窮地に追い込まれ、楽になりたくて自殺を計画。問題の原因である生徒にそのさまを見せつけ、彼なりにイジメの愚かさを教育するつもりだったのだと思う。


 その後、全校集会や緊急保護者会議、カウンセリングが実施されるもイジメや嫌がらせは絶えず、先生が自殺に及ぶほど追い込んだ責任のなすり付け合いも盛んになった。


 この人たちはもう、終わりだ___。


 この先よほど自己に不利益が及ばない限り、いや、及んだとしても、淀みをクリアにできる者は良くて数人だろう。


 私と未砂記は自らの未来を少しでも良くするために両親を説得して小学校卒業を機にこの学園を去る決意をしたけれど、ここに残る者はまた、歪んだ愉悦やそれを生む闘争心の渦中で日々を送り続けるだろう。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 更新が遅くなり大変恐縮です。


 ヘビーなお話のため毎回難産ですが、明るいお話も取り入れてゆけたらと思います。

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