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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
浸地の小学生時代

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新学期という地獄の幕開け

 また、地獄の日々が始まった。机にかけられた墨汁、椅子には滴り落ちたそれと大量の画鋲。


 この醜悪な集団の中で、毎日過ごす7時間。


「未砂記は平気なの?」


 今朝は未砂記の席にも同じ仕打ち。けれど彼女は画鋲をばさっと払い除けると廊下から濡らした雑巾を持ってきてそそくさと墨汁を拭き取った。自分の席よりも先ず、私の席のを。


「平気だよ。だってこれ、ヒタッチがしたわけじゃないでしょ?」


「うん」と私はこくり頷く。


「なら大丈夫! だって私、ヒタッチしか友だちいないし、他の人はいてもいなくても同じだから!」


 なぜ、なぜそんな器用な解釈ができる?


 そう思うと同時に、未砂記を避けてきた自分に心底嫌気が差してきた。


 そうだよ、なんでこんな低俗の目を気にして、ずっと前から変わらず私を好いてくれている未砂記を避けてきたんだろう。私は本当に弱い子だ。


「お前ら二学期になっても相変わらずだな」


 自らの愚かさと未熟さを憂いていると担任が教室に入ってきて、拭いきれず染み着いた墨汁や床に散乱する画鋲に目を遣りながら言った。お金持ちのイイ子ちゃんが通う学校だから、始業時間前には殆どの生徒が着席し、立っていたのは私と未砂記だけだから、教室を見渡す間でもなく入ってきて一目で判ったのだろう。


「いいか、イジメっていうのはな、喧嘩両成敗っていうように苛めるほうも苛められるほうも両方悪いんだ。


 世の中にはな、『空気を読む』っていう平和を維持するための魔法があるんだ。気に入らない奴がいたら見なかったことにすればいい。都合の悪い話は適当に従っておくか、よっぽど嫌なら聞かなかったことにすればいい。そうすればストレスが溜まらない。苛められるほうは、大多数の人間に嫌われないよう日頃から行動や言動に気を付けたり、嫌われても何をされても凹まない精神力を持てばいい。そうやってお互いが衝撃を吸収するクッションみたいに柔らかい気持ちになれば、問題なんて起こらない。


 けど不良品の悪いお前らはそれができない。とりあえず気分を入れ替えるために、今日は特別に普段は立ち入り禁止の屋上で授業だ。鍵は職員室からこっそり持ち出した」


 担任に先導され、クラスの全員は言われるままぞろぞろと薄暗い階段を無言で上がった。


「あぁ、外は冷房なくて暑いけど爽やかだなぁ! お前ら今朝、久しぶりに学校に来るの憂鬱だったろ。先生だってそうなんだよ。お前らの面倒看るなんざまっぴらごめんだ。ということで、そんな気分とサヨナラするために、今日は青空の下で道徳の特別授業を実施する」

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 本作はなぜか毎度難産で、更新が遅くなってしまい大変恐縮です。

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